0053話
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「おお、凄いなこれ。特に調節なんかして無い筈なのにピッタリだ」
「はぁ…凄く綺麗ねこの石座に嵌まってる石…」
「うむうむ、気に入ってくれた様で何よりじゃ」
アンが餞別、と言って贈り物を出してから数度のやり取りの後、結局オロス達が折れる結果となり現在は実際に装着してみてその具合を確かめている。
オロスはガントレットを嵌めた指の開閉を繰り返したり、腕の曲げ伸ばし等をして動きに阻害感が無いかの確認を、エリは指輪を人差し指に嵌め、その石座に鎮座する石の輝きにうっとりとしている。
そして、ある程度の確認が終わった段階で二人してアンに頭を下げて礼を述べる。
「今日まで色々と世話になったが本当にありがとう、いつか必ずこの恩は返す」
「そうね、今はちょっと難しいけど…必ず、私達で力になれる事なら何でも言って」
「ほうほう…では、その時を楽しみにしておくかのぅ。では行くぞ」
「「?」」
アンの言葉の後半の意味が分からず思わず首を傾げる二人。だが、その意味を問い質す間もなく部屋が黒い靄に包まれる。
「ちょっ!おわっ―――」
「きゃっ!な、なに―――」
訳の分からない状況に抗議の声を上げようとするも、靄に飲まれて消えていく。そして、オロスの影に居た俺も牽かれるように靄に靄に飲まれていくが、何となく既視感を覚える。
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視界が開ける、黒い靄は影も形も見当たらない。代わりに目の前に広がるのは一面の森林と、それを包むように存在する真っ白な霧。…外に出た…のか?
森には風が吹いていないのか木々が鬱蒼としているが葉が擦れるような音は聞こえてこない。代わりに虫の羽音や奇怪な鳥(?)の鳴き声が木霊している。目の前を覆う霧と相まってちょっと……いや、かなり不気味な感じだ。
オロスとエリは何が起きたのか分からず、目を白黒させている。
「ほれ、何を惚けておる」
「「……」」
「ふむ……」
アンが声をかけるも、フリーズしたまま起動する気配が見受けられない。それを見てとったアンが、手に持っていたパンパンに膨らんだリュックをオロスに無理矢理背負わせていく。
されるがままとなっているオロスに順調にリュックを装着させ終え、肩紐の調節が終わる頃になって漸く二人が再起動を果たす。
「……っは!? あれ、ここは? 」
「……外……なの? 」
「うむ、昨日ここまでは送ってやる、と言ったからの」
「……いや、それにして……いや、何でもない」
何が起こったのかをアンに訊ねようとでも思ったのかオロスが口を開くが、途中で口を噤む。恐らく、聞いても無駄だと悟ったのかも知れない。
そんな様子を見て、何を思ったのかアンが二人の前に出て明後日の方向に向け手を突き出す。次の瞬間、アンの手から黒いナニかが発射される。
黒いナニかは物凄い速さで直進していく。ソレが通った後には何も残っていない。霧も、木々も。まるで最初から存在しなかったかのように。
「ほれ、これはサービスじゃ、この道を真っ直ぐ進めばバルスト獣王国の国境砦に着くじゃろう。後は教えた通りにすれば多少の問題はあろうが、受け入れて貰える筈じゃ」
「「……は、はい」」
あまりに突然の出来事で呆然とする二人を他所に、アンは洞窟の入口と思われる暗闇に歩み出す。
「ではの、生きていればまたどこかで会うこともあるじゃろうて。達者での」
「お、おう! この恩は忘れないからな! 」
「あ、アンちゃん! またね!!」
言いたい事だけを言って、二人の別れの言葉にも振り返らずに去ってしまうアン。洞窟の暗闇に紛れると、その姿は最早見えない。
あまりにもあっさりとした別れに、二人はどこか物足りなさを感じつつも顔を見合わせ、頷くとアンの作ってくれた道へ歩を進める。
―――さて……俺はどうするかね―――
いつもお読み頂き有難う御座います。
オロス達の冒険はこれからだ!
―――完―――
いや、冗談ですけどね…。
取り敢えずここまでが第1部となります。次回からはオロス達(と主人公)の旅の様子…の前に閑話を2話ほど挟む予定です。
まぁ、あくまで予定、なので変更する可能性もありますが…




