0048話
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暗い意識の海を漂う。ここには何もない、誰も居ない。ただ真っ黒い空間が続くだけ。
そんな中にあっても不思議と不安や不快感は無い。ただ、何かに包まれてる様な暖かさが心を満たしていく。
どれほどこの場所で時を過ごしたのだろうか?ふと、何かに呼ばれるような感覚を覚える。同時に何故かは分からないが行かなければ、と強く思う。
声の下へ、ただそれだけを思い必死にもがく。ただ、一向に景色は変わらない。それでも、ともがき続ける。
そうして、何時しか目の前に一筋の光が見えてくる。そこへ向かって手を伸ばす。届け―――届け―――
不意に何かにグイッと引っ張られた気がした。それは、どこか自分を包んでいた暖かさにも似た―――
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ふと、目が覚める。目に入ってくるのは、意識が落ちる前に見た隔離部屋と呼ばれた広間に似ている。
と言うのも、何か違う気がするのだ。…うーん?何か…ボロボロ?
辺りを照らしていた照明が幾つか壊れ、下に転がり。壁も何ヵ所か崩れている。
足下にある模様だけは変わらず光を放っているので、恐らくあの場所に間違い無いと思うが…何があったんだ?
「やっと目覚めたか?この寝坊助め」
不意に後ろ側から声が掛かる、振り返るとそこにはアンの姿が。だが、アンに変わった様子は見られない。
(なぁ、何かボロっちくなってる気がするんだが…気のせいか?)
「…お主が気にする事ではない。そんな事より体の調子はどうじゃ?」
…今露骨に話を反らされた気がする…まぁ、良いか。
(うーん…どう、って言われてもなぁ。特に変わった感じは…)
しない、と続けようとした所で自身の体を見回し違和感に気付く。何やら視界の端にチラチラと黒い何かが見えるのだ。それに手足も黒い…?
言い知れぬ不安が募る。
(…な、なぁ姿見か何かって無いか?)
「そんな高価な物、こんな所に有るわけが無かろう。」
(そ、そうか…)
自分の姿をしっかり確認したい、と思い訊ねてみるも即座に否定され気落ちしそうになったところにアンが続ける。
「しかし、じゃ。代わりなら用意できるぞ?」
(ぜ、是非お願いしたい!)
「うむ、少し待っておれ。」
そう言って姿を表したのはアンを覆い尽くす程の大量の水。それが楕円状に広がりまるで鏡のようにこちらの姿を写し出す。
「本来の用途とは違うが…まぁ十分じゃろ。」
アンの声も頭に入っていかない、水鏡に写った姿があまりに衝撃的でそれどころではなかった。
「で?どうじゃ感想は」
(何だよコレー!!)
思わず心の中で絶叫する。
その写った姿が―――
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