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0041話 sideアン


―――――――――――――――


視界が切り替わる。ここは洞窟の入り口近く、霧に包まれた森との境界。


(ふむ、昨日の騎士達は森の獣共が片付けたか。)


周囲に見えるのは哀れな残骸。死肉を貪られ、骨まで噛み砕かれており、最早見る陰もない。残っているのは食べられぬ、と捨て置かれた鎧の破片だけ。


しかし、周囲にはまだ複数の獣達の気配が色濃く残っている。恐らく残る血臭に誘われた空腹の獲物を狙おう、と言う算段なのであろうが…


(いささかここに居座られては問題があるのぅ…。)


今も家に居る二人の今後を思えば、この洞窟唯一の出口であるここに複数の狩人が居るのは厳しいものがあるだろう。


少しだけ抑えていた“龍気”を解放する。


体を覆っていた殻を少しだけ薄くする。それだけで少し体が軽くなった気がするから不思議だ。


…やはり本来の姿からかけ離れたこの姿を取り続けているのは、何の問題も無い様に思えても多少の負担にはなっていると言う事か。


そんな風に思い、自嘲気味に笑みを浮かべていると周辺に居た獣達が一斉にこの場を離れていくのが分かる。


ある程度散った段階で、再び己の体に幾重にも殻を被せていく。


(まぁ、こんなもので良かろう。…あまり干渉をし過ぎて変なモノに目を付けられてもあれじゃしの。)


思考を続ける中で先日の細目の男の事を思い出す。


奴は“龍種”の力が必要だと言っていた。もしそこへ、件の“龍種”が目をかけている者達が居ると知れば奴は嬉々として干渉してくるだろう。


それが成功しようが失敗しようが関係ない。可能性がある、と言う一点で奴等は恐らく行動を起こすだろう。


それは今回の一件を通して何となくではあるが察することができる。伊達に永く生きてはいない。


(だとしたら…やはり直接的な干渉は避け、助言等に留めるのが良いかの。しかし、自分の事ながらやけに肩入れしておるな…。)


最初はただ単に面白そうだ、と言う一点で話を聞くだけのつもりだった。しかし、こうしてあの二人に危害が及ばぬよう、お節介を焼いている自分に思わず苦笑が漏れる。


(まぁ、()は『袖振り合うも他生の縁』等と言うておったか。最早返せぬ恩じゃが…奴に救われたこの身じゃ。同じような境遇の者に返すことで多少の供養にはなろう。)


そう自分に言い聞かせると何となく間違っていない、と言う気になるから不思議だ。


思考を続けながらも破片の回収と匂いの拡散をすませる。これで獣共がここに集まることも無いだろう。


さて、お節介序でにもう一つ。


殻を閉じたまま、今度は両手の先だけを本来(・・)の姿へと戻していく。そして、それを周囲の霧と同化させ、広く薄く周囲へと拡げていく。


先程逃げていった獣達をも追い越し、急速に自身の感覚が広がっていくのが分かる。


そして、感覚は森の外周部、霧の無い地帯との境目で止まる。


(…ふむ、生きておる人間(・・)はおらんか。先のあやつが使っておった魔術具の気配も無い。)


それだけ確認し終えると、同化を解く。


と、途端に若干の疲れを感じる。


(やはり、殻を閉じたまま拡げるのは少し疲れるのう…。)


無理をした自覚は無いが、疲労を感じると言う事は多少無茶ではあったのかも知れない。


…気を付けなければ、あの廃都より解放された事でこの身は最早有限なのだから…。でなければあの約束(・・)は果たせない。


(さて、折角外に出たのじゃ。あやつらに土産でも買っていくとするかの。)


それぐらいは許容範囲だろう、と自分に言い聞かせる。


何を買っていけばあの同居人達は喜ぶだろうか、驚いてくれるだろうか?それを考えるだけで、心が踊りそうになるのを必死で抑える。


しかし、自然と顔がにやけてしまう。


(ふふ、では行くかの。)


大地を一蹴り。此処ではない何処かへと自らの身を投じる。


―――もう少しだけ、今この時を楽しもう…。

いつもお読み頂き有難う御座います。

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