0038話
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(そして、その結果がこれだと…?)
『まぁ、少々やり過ぎた感は否めないのぅ…。』
(少々…なのか?)
眠っていた間の経緯を簡単に説明してもらい、現状の認識が出来た所で、改めて荒い息を吐き倒れ伏すオロスの姿を見る。
…確かに見える範囲で傷等は見当たらないし、ただ単に体力が尽きて倒れ伏している、と言った様相ではあるが…。
『誰かを鍛えるなどしたことが無いのでな。取り敢えず死なぬ程度に体力の限界まで体を苛め抜いてみたんじゃが…ダメか?』
(うーん…。俺もそう言うのは分からないけど…取り敢えずこいつ何とかしてやれない?)
『それもそうじゃな。』
アンはそれだけ伝えると、右手を上げる。と、足下で倒れ付していたオロスが白い霧に包まれる。
(…これは?)
『うむ、こ奴等魔物が魔素によって肉体を形作っている。と言うのはお主も聞いておったな?』
(ああ…で?それがこれと関係あると?)
『せっかちな奴じゃのぅ…。まぁ見ておれ。』
それだけ言うと黙るアン。
…見ていろと言ってもな…真っ白な霧に包まれてるから全く見えないんだが…。
等と思っていると、オロスを包んでいた霧が晴れる。するとそこには、先程までとは違い健やかな寝息をたてるオロスの姿。
(…これは?)
『うむ、今の霧は儂が作り出した高濃度の魔素じゃ。魔物は魔素を取り込み自らのエネルギーとする。故に、高濃度の魔素を取り込む事で急速な回復が可能と言うことじゃな。』
(なるほど?)
『更に、濃度の高い魔素を取り込む事で、こやつの体も以前より強靭な物になる、良いこと尽くしじゃ。まぁ、これは本当に多少でしか無いゆえな、あくまでこやつの体力回復がメインじゃが。それに、これには他にも―――』
そう自慢気に語るアンを他所に、俺の興味は横になり寝息をたてるオロスへと集中していた。
…しかし、本当にさっきまでが嘘のようにぐっすりだな…。それにしても魔素を取り込むだけで疲れがとれるとは…便利な体だなぁ…。
それがいけなかったのか、突然ガツンと殴られたような衝撃を感じる。
(…痛っ!)
『おい…聞いておるのか?』
(す、すまない。少し他に気になることがあって…)
『まぁ良い…。それに、どうやらエリも起きたようじゃしの、早く戻らねばあやつも不安を覚えるじゃろう。』
言うが早いかそれだけ告げると、アンは右手を黒い霧に変化させオロスを担ぎ上げるとそのまま家の中へと入っていく。
それに釣られて俺も家の中へと視点が移る。
「エリよ、入るぞ。」
『…ん?アンちゃん?どうしたの?』
アンは、そのままエリ達が使っている部屋に声を掛けると、エリの返答を待って部屋の中に入っていく。
部屋に入ると、昨日と同じく部屋の明かりが灯る。…本当にどんな原理なんだろうか…コレ…。
「おはようアンちゃん。所で、オロスの姿が見えないんだけど、何か…って…アンちゃんソレどうしたの…?」
アンの姿を認めると、挨拶と共に見当たらない同居人の事を訊ねようとしたエリだったが、アンの右手とそこに抱えられている存在を見て視線をそこから動かせないようだ。
「うむ、どうやら外に顔を洗いに行ってそのまま寝てしまったようでな。放置するのも忍びないので連れてきたのじゃ。」
「そ、そうなの…。」
そうして、態とぼかした説明をしたアンはオロスを空いているソファーへと静かに下ろす。…何故全部説明しなかったのだろうか…?まぁ、態々説明する必要も無いことか。
そんな事を考えているとオロスをソファーに降ろしたアンと視線が交わる。
『ふふっ。女子に努力を悟られるのは男としては恥なのじゃろう?其故間の説明を省いたまでじゃよ。嘘はついておらんしの?』
そんな声が頭に響くと共に、ウィンクをひとつこちらに向けてくるアン。
―――いや、これは良い女ですわぁ…
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