閑話006
本日2話目の更新なので、話が飛んでいないか、ご注意を
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冷たい感触と喧しい程に鳴り響く車の防犯用ブザーの音で目が覚める。
「痛っ…!」
体中が上げる悲鳴に思わず声が漏れる。
「一体何が…。」
既に萎んでいるエアバックから体を離し、ぼんやりとした頭で何があったのかを思い出そうとする。
「そう…確かトンネルに入った所で…!おい!大丈夫か!?」
何故こんな事になっているのかを思い出そうとしたところで、後ろにいた同乗者たちの事も思い出し、咄嗟に振り返り声を上げる。
振り替えると二人はお互いに抱き合う様にして席にもたれ掛かっていた。
反応が無いので焦り、慌てて車外に飛び出す。
後ろのドアも何とか無事だっのか普通に開けることができた。急いで肩を叩き意識の確認をする。
「おい、しっかりしろ!大丈夫か!」
「うっ…っう…!」
こちらの問い掛けに反応が帰るのを確認し若干の安堵。しかし油断は出来ない。続けて声を掛けていく。
「しっかりしろ!俺の声が聞こえてるか!?」
「う…るせぇぞ…。そんなにで…かい声を出さなくても…聞こえてる…!」
俺の声に反応してか、痛みに顔をしかめつつも目を開き普通に応対をしている彼を見て心の中で安堵の息を吐く。
しかし、安心してばかりもいられない。早く次の行動を起こさなくては。
「おい、意識が戻ったんなら藤嶋さんの容態を確認しろ!急げよ!」
「っは!分かった!…おい、エリ!しっかりしろ!」
慌てて彼女へと声を掛ける友人を見て、何とか心を落ち着かせていく。
(よし、これで彼女の事はあいつに任せて大丈夫な筈…。しかし何が起きた…?確かトンネルに入った所で…。)
思考を続けながらも、まずは辺りの確認をしようと後部座席から頭を出し周囲を見回す―――
「何だよ…これ…。」
目に入ったのは前方で横転したトレーラーと、自分達が乗っていた車の後方で煙を上げる10台以上の乗用車だった。
何処かで燃料に火が着いたのかチラチラと炎の灯りも見え隠れしており、トンネル上部には黒煙が溜まりつつあった。
辺りからは車のブザーと時折痛みに呻く悲鳴が聞こえてくる。
そんな光景に全身の痛みが一気に引いていく。
(もたもたしてる場合じゃない!)
「おい、急げ!何かやべーぞ!!」
慌てて視線を車内に戻し様子を確認する。
が、まだ彼女の意識が戻らないのか彼が懸命に肩や顔を叩き呼び掛けを続けていた。
「おい、エリ!起きろって!…って何だよ!」
「急げ!何かこのままここに居るのはヤバイ気がする!」
「っ!ああもう!」
彼は彼女への声掛けを中止すると、その身を抱え車外に出てくる。
そして、車外の光景を見た瞬間思わずその動きを止める。
「おい…何だよ…これ…。」
「分からん。今すぐどうこうってことは無いと思いたいがこのままトンネル内に居るのは危ない気がする。動けるか?」
「…くそっ…。取り合えず外に出よう。俺はエリを背負って行く、お前は先導を頼む。」
「任せろ!」
僅かなやり取り。だが、何も言ってこないのならば大丈夫だと判断し、少しでも歩きやすいルートを探し団子状になった車の間を抜けていく。
途中、車内で気を失っていたり、痛みに呻く声が聞こえたりしたが努めて無視した。自分達がどうなるかも分からない現状だ、流石に他人にまで気を使ってられない。
そうして車の列を半分ほど越えた辺りで歩みを進めるなか、徐々に起こった出来事を思い出していく。
―――彼女との話がある程度落ち着いた頃、トンネル内に入って半分ほど進んだ時それは起こった。
突然前を走るトレーラーが壁に激突し、その勢いのまま道路を塞ぐ形で横転。そのすぐ後ろを走っていた俺達は避けられる筈もなく、衝突。
突然の衝撃に意識が真っ白に染まり、そこで気を失ったのだろう。記憶はそこで途切れている。
そして、この固まりになっている車はその事故の影響なのだろう。
…正直よく大した怪我も無く、生きていられたな…。
そんな事を考えて、ちゃんと着いてこれているか時折後ろを確認しながら前へと歩を進めていく。
―――このまま何とかなると思っていた。その時まで―――
ドサッ!
後方で何かが倒れる音がして慌てて振り返る。すると、先程まで彼女を背負いこちらへ歩いてきていた彼の姿が見当たらない。
(冗談だろ…!)
慌てて先程まで歩いて来た道を逆走し音の方向へと向かう。
そこには彼女を背負ったまま倒れ込む彼の姿。
「おい!しっかりしろ!」
慌てて駆け寄り肩を揺する。が、息を荒げ、弱々しい反応しか帰ってはこない。
「おい!」
声を掛けつつ、彼女を抱え横に移動させ彼を抱き起こす。
「しっかりしろ!」
「…あぁ…悪…い…。何か…急に…力が…入らなく…」
「っち!待ってろ!」
しかし、彼の弱々しい反応に自力での自力での移動は無理だと判断し急いで彼女を背負う。
(くそっ…!意識の無い人間てこんなに重いのかよ…。)
見た目以上に重さを感じるが、そんな泣き言を言っている場合ではない。そのまま彼の横にしゃがみこみ、その腕を抱え無理矢理立たせる。
脇から手を差し込み、腰を抱える事で何とか彼を立ち上がらせることはできた。が、片手では上手く彼女を背負っていられず、やむなくやや前傾姿勢を取り、何とか落とさないようにするのが精一杯だ。
「…っよし!行くぞ…!」
今にも震えだしそうな膝を何とか堪え前へと進む。
「…お…い…!俺…の事は…」
「うるさいっ!黙ってろ!!」
隣の彼が何かを言った気がするが、そんな事を気にしている場合ではない。被せるように怒鳴り付け、歯を食いしばって前へと進む。
「…わか…った…。たの…む。」
「任せろ。」
―――進む、ただ無心で前に進む。
先程まで引いていた痛みが全身を苛む。
―――進む、まだ行けると自分を偽り前に進む。
全身から汗が吹き出し、思わず手が滑りそうになる。
―――進
「…俺…さ…。」
「…何だよ…。」
と、そこで隣から声が掛かる。正直、全身がバラバラに成りそうな痛みを感じるが、それが少しでも和らぐなら、と歩みを止めぬままその言葉を聞く。
「…実…は…エリと…結婚しよう…と思って…るんだ。」
「…おう、そりゃめでてーな…!…で?それがどうしたよ…!」
「…それ…でさ。お前…には…直に…会って…報…告しよう…かと思ってよ…」
「…それで、今回の旅行に連れてきたってのか?…律儀な話だ…そんなん適当にメールでも良かっただろうよ…」
聞いてみれば単純な話だ。この10年来の友人は、態々結婚報告の為にこの旅行に彼女を連れ来たらしい。
…馬鹿な奴だよ。それでこんな目に会ってたら世話ねぇぞ…。
「…それでも、お前には…ちゃんと…言っておきたかった…から。」
「…そうか…。」
それっきりお互いに無言のまま歩みを進める。
―――そして、その瞬間は不意に訪れる。
―――突然の轟音。そして衝撃。
―――意識が白く染まっていく。
(あぁ、俺死ぬのかな…。)
―――轟音は連続して響いてくる。そして、その度に衝撃が体を襲う。
(こいつらの晴れ姿…見たかったな…。)
脳裏に過るのは多くの友人知人に囲まれ、冷やかされるタキシードに身を包んだ彼と、その隣で楽しそうに微笑む彼女の姿。
―――そんな中でも絶対に離しはしまいと、両手にあらんかぎりの力を込める。
(…もし、来世があるのなら…。)
そんな光景を、俺は少し離れた場所でニヤニヤと見守っている。
―――襲い来る衝撃の連続に、最早全身の痛みも感じない。
(…今度はこいつらが…。)
そして、そんな俺に気が付いたのか、同じような笑みを浮かべこちらへと視線を向け歩いてくる彼と彼女。
―――何か固い物にぶつかる感触、痛みは無い。あるのは両手に残った二人の人間の感触だけ。
(…幸せになるところを見届けたいな…。)
近寄ってきた彼が、口許に笑みを浮かべこちらへと手を伸ばす。合わせて俺も苦笑を浮かべ手を伸ばして―――
―――そして、全ては真っ白に染まっていく…。
いつもお読み頂き有難う御座います。
昨日は結局このお話が長引いた為に寝落ちしてしましたが、何とか合わせて更新した、と言うことでお許し頂ければ…と。
次回から、オロス達のお話に戻って行きます。




