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0003話

「オークじゃないのよー!!」


少女の声が広間に木霊する。蟻達も空気を読んでか微動だにしない。……まぁ少女の言い分も分からないでもない。オーク、と言う種族は私の知識によれば、他種族の女性を拐い、犯し、孕ませ、同族を増やしていく、まさに女の敵と言っても過言では無い種族として有名なのだから。と、言うよりも、こんなことを覚えているくらいなら、自分の事を少しくらい覚えていても良いと思うのだが…


「オー…ク……?誰がオークだ!」


「あんたよ!あ・ん・た!」


その叫びに対し彼が抗議の声を上げる、が審議する間も無く否定されていた。……ん?どうにも会話が噛み合っていない、と言うよりも彼は自らがオークだ、と言う事を知らなかったのだろうか。


蟻達の事などお構い無しに、二人の議論は加熱していく。


「大体、オークってあれだろ、ボコォ…、とか、くっ殺せ!とかのあのオークだろ!?俺のどこがオークだって…」


「全部よ!顔から、体型、見た目の全てが!あんたがオークじゃなけりゃ何がオークだって言うのよ!!」


再び抗議の声を上げるも、かぶせ気味に少女によって否定される。…勇ましく助けに来た筈の彼が、とても可愛そうな顔になっているのでそろそろ止めてあげてほしい。


「あれでしょ!助けに来た、と見せかけて、いよいよとなったらこっちに襲い掛かって来るつもりなんでしよ!」


しかし私の願いも虚しく彼女の口撃は止まることはなく、更なる追い撃ちをかけてゆく。……あぁ、もう彼の表情が物凄い情けないことになっているので本当に止めてあげて…


「大体なによ!王子様かと思った?残念、オークでした!ってふざけてんの!?喜劇じゃないのよ!私の純情返しなさいよ!!」


「う…」


最早、彼に蟻達の群へと突撃した時のような勇ましさは欠片も見当たらない。そこにあるのは、ただただ小さな女の子に詰られ、情けない顔を晒す可哀想な男が佇むのみだ。


少女の感情の揺れに伴ってか、その周囲の火の玉も不規則に揺らぐ。初めはそれこそ太陽の様に燃え上がっていたが、今では蝋燭に灯る火のように頼りない。


それを好機と捉えたのか、蟻達が動き出す。炎を警戒してか薄く広がっていた包囲が徐々に狭まっていく。


「あー!じゃあもう良いよ!群れの中に突っ込んでくから、後ろから煮るなり焼くなり好きにしろ!」


「は!?」


もう時間が無いと悟った彼は、迫りつつある群れの先頭へと突貫していく。次々と群がる蟻達を殴り、潰し、蹴り飛ばし、時には近くにいる個体を掴み上げ他の集団へと投げ込んでいく。ただ、決して無傷とはいかず、払い損ねた蟻に噛まれ、対処の間に合わない酸に肌を焼かれ、徐々にではあるが傷が目立つようになってくる。……むう、「戦いは数だよ」などと聞いた覚えがあるように、流石にこの人数差では厳しいか。


ただ、彼は止まらない、まるで止まった瞬間が己の最後だ、とでも言うかのように、手を、足を、そしてその牙まで使い、近づく蟻達を葬り続ける。……その後ろ姿は何故こんなにも胸を熱くするのだろうか。


「…ざけ……でよ…!」


蟻達と彼がたてる激しい戦闘音に混じり、少女の声が聞こえてくる。その時、突然少女の周囲に漂う炎が勢いを増し燃え盛る。


「ふざけないでよ!!」


突如として輝きを増した炎を見て、蟻達の動きが止まる。先程までの喧騒が嘘のように、広間にはただ炎の燃え盛る音だけが響き渡る。


先程まで掌大であった筈の炎は、直径凡そ50㎝ほどまでその大きさを増していた。


「あんたには言いたい事がまだあるんだから、ちゃんと生きてなさいよ…!砲火フォイア!!」


少女が言葉を発すると同時に火の玉は三方に向かって放たれる。それはちょうど蟻達が密集している地点と重なっていた。そう、正面の彼を無視して少女へと向かおうとしていた2点と、そして……彼へと集る蟻達に向かって。……あぁ、女の子のヒステリーって、いくつであっても怖いものだね……


彼も自らへと向かってくる火球に気づいたのか、慌てて跳躍。その場を急ぎ離れる。直後、着弾、爆発そしてそれに伴う轟音。視界は吹き上がる炎と煙で使い物にならない。……想像以上の威力だな。彼は無事だろうか…



さっそくのコメント、ブックマーク有難うございます!!正直こんなに早くお声を頂けると思っておらず、信じられないような気持ちで一杯ですが、今後も楽しんで頂けるよう頑張っていきたいと思います!

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