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閑話003


―――――――――――――――


――ティロン♪


スマホアプリの着信音が、空調の利いた車内に響く。


耳に飛び込んできた音を聞き、俺は閉じていた目を開く。


(やっと来たか…。流石に待ち草臥れたな…。)


うーん、と一つ伸びをして、スタンドに立てて置いたスマホを手に取りメッセージを開く。


『遅れてすまん!今、駅のロータリーに要るけど何処だ?』


今日は昔馴染みの友人と、休日を合わせて男二人の旅行をする予定で待ち合わせをしていたのだが…まさか待ち合わせに1時間近く遅れてくるとはな…。


スマホアプリを閉じ、あいつの電話をコールする。


1コール、2コール…スマホ片手に待ち構えて居たのだろう、すぐに通話状態になる。


「おはよう、いい夢見れたか?」


『おう、おはよう!夢見は最高だったぜ?』


…どうやら相変わらず嫌味は通じないようだ…。


「はぁ…。まぁ良いか。今そっち行くから電話そのままで待ってろ。」


『…?頼んだ!』


それだけ伝えるとスマホをスタンドに立て、スピーカー通話に切り替える。


アクセルを踏み、コンビニの駐車場から愛車を駅へと走らせる。


そこから30分…も掛かる訳は無く、1分と掛からずに目的の駅に到着する。


「おーい、着いたけど何処だー?」


『あ?…ええと…。クイーンの前だな。』


「了解、近くまで行くからそっちで見つけてくれ。」


『うーい。』


駅からすぐの所にある、青い看板が目印なハンバーガーチェーン店の前まで車を進める。


車を歩道近くまで寄せ、後続車が無いことを確認して車を降りる。


そして、歩道側まで行き、視線を巡らせあいつを探すとすぐに見つかる。


向こうもこちらを見つけたのか、手を振りこちらへと向かってくるあいつ。


爽やかさを感じさせる短髪に、メガネをかけ。白地に何やらドクロのようなイラストの入った半袖のTシャツに、色味の濃いジーパン、黒い革靴を履き、両脇には二つのトランクケース。


(…ふたつ…?)


今回の旅行は1泊2日の予定だ、そんなに荷物が必要とは思えない…が…。まぁ聞いてみれば分かるか。


「よ、久し振り。いやー、待たせちまったみたいで悪かったな。」


「おう久し振りだな、待ち草臥れたぞ。」


「いや…前日の仕事がなかなか片付かなくてな…準備に手間取ったんだわ…。ほんとすまん!」


「まぁ、仕事なら仕方ねぇけどさ…。それなら昨日の時点で連絡してくれ。」


「すまんな。」


成る程、遅刻した理由は何となく分かった。まぁ、プライベートの旅行だ、わざわざ1時間の遅刻でそこまでグダグダ言う必要もないだろう、とお互いの近況などを報国し合う。


「それにしても、小学校の教師だっけか?そんなに忙しいのかよ。」


「んー…。慣れてない、ってのもあると思うけどな。まぁ、まだ三年目だ、勉強することも多いから仕方ねぇ。そっちこそどうなんだよ?確かホテル勤務だろ?」


「…ん?俺か?俺はな…まぁ、そこそこだな。部署も先輩と俺だけの小さい部署だし。やること覚えることは多いし、責任も大きいけど遣り甲斐はあるよ。」


「二人だけの部署って…どんな部署だよ…。」


「それがな―――」


連絡はちょくちょく取っていたが、実際に会うのは大学卒業前だから凡そ3年振りだ。お互いに職場の愚痴などを冗談混じりに話し合い、徐々に学生時代と同じような感覚で話せるようになってくる。


だが、予定より時間が遅れている事を思いだし話を切り上げる。


「いや、このまま話してても良いんだが、続きは車の中でな。荷物は?そのトランク2つか?」


「お、おう…。それなんだが…。」


「あ?どうしたよ?」


荷物の事に話題を移した途端、挙動不審になる友人。チラチラと後ろにあるハンバーガーチェーン店に視線を送り出す。


(何だよ?何かあるのか?)


ふと、嫌な予感が頭をよぎる。


(これはあれだ。突然朝釣りに行きたい、と夜中の3時に電話が掛かってきたり。10駅近く離れたショッピングモールに突然行きたい、と言い出して10km以上の距離を自転車で往復した挙げ句何も買わずにそのまま帰って来たあの時と同じ……)


慌てて思考を打ち切り、友人に詰め寄る。


「おい、お前何を隠してる…!今なら小言程度で許してやるからさっさと吐け!」


「いや…ええっと…。」


俺の質問に目線を反らしどもる友人。相変わらず嘘が付けない。


ビンゴ、だ!こいつ絶対に碌でも無いこと考えていやがる!


「おい、こら!今度は一体なに考えてやがる!?」


「いや、ええっとだな…。」


三年振りの再会だと言うのに、まったく変わっていないこいつを見るのは嬉しくもあるが、それより今は何をしようとしているのかさっさと吐かせなくては。


嫌な予感だけが大きく膨らんでいく。募り続ける焦燥感を他所に、友人を詰問し続けるが今日は中々にしぶとく、白状しようとしない。


「お前いい加減に―――!」


「お待たせー!ねぇ、こんなに大きいバーガー運転中に食べられるの…?って、どうしたの?」


思わず怒鳴り付けようとした瞬間、こちらへと話し掛けてくる女性の声。


(おい…。冗談だろ…。)


話しかけてきたのはバーガー・クイーンのロゴが入った袋を持ち、夏らしい服装に身を包んだ同い年くらいの女性。肩の辺りで切り揃えられた髪に、ちょっとパッつん気味の前髪。


会った事は無いが、何処かで見たことのあるその女性。


その顔を見た瞬間、全てを悟った。


(何処の世界に、男同士の旅行で彼女を連れてくる馬鹿が居るんだよ!!)


声に出すことも出来ず、心の中でそう絶叫し、思わずその場で蹲りそうな気持ちをすんでの所で何とか堪える。


―――この旅行、先行きから暗雲が立ち込めている。

いつもお読み頂き有難う御座います。


今後の投稿に関して活動報告にて詳しく書くので、気になる方が居ましたらそちらまで…

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