0035話
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「…ふぁぁぁぁ…、はふっ…。」
その後も話を続けていると、エリが噛み殺すように欠伸を一つ。
「ふむ、少し話しすぎたか。今日はここまでじゃな。」
「あ、あの…ごめんなさい…。」
話を切り上げようとするアンに慌てて謝罪するエリ。
「よいよい。前にも言うたが何もない所じゃ、好きなだけ居るとええ。今色々と教えとるのも、お主らに請われる故じゃ。」
「えっと…ありがとう…ございます。」
「…堅いのぅ…。同じ屋根の下で暮らしておるのじゃ、もう少し砕けた口調でも良いのじゃぞ?」
「…はい…。じゃなくて…うん、ありがとう。」
「うむ、それくらいで良い。…ところでオロスが先程から静かじゃが…。」
エリとの会話を切り上げ、先程からやけに静かなオロスへと視線を向ける。
「……………。」
すると、そこにはソファーに座ったまま船を漕ぐオロスの姿。
「まさか…話の途中で寝とるとはの…。まぁ良いわ、儂も行くからエリも今日はゆっくり休め。」
アンはそれだけ言うと立ち上がり、部屋を出ていく。
エリはそれを見届けると、対面のソファに移動しそのまま横になる。
するとどういった仕組みか部屋の灯りが落ちる。
……おやすみ…。
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部屋の灯りが落ちてからどれほどの時間が経過しただろうか。
部屋は静寂に包まれ、聞こえてくるのは寝入った二人の静かな寝息だけ。
相も変わらず、何ができるわけでもない俺は暇を持て余していた。
部屋の中をひたすら見続け、何処に何があるのかを覚えてしまうくらいには暇な時間を過ごしている。
…眠れない、って言うのは思いの外つまらない物だな…。
そんな事を考えていると、突然アンと話したときのような感覚に襲われる。
『何じゃ?暇をしておるのか?』
頭の中に声が響くような感覚。…アンか、いや眠れないって言うのは思いの外暇でなぁ…。
『ふむ…。成るほどのぉ…まぁその状態では眠ることは出来んじゃろうなぁ…。本来なら、お主のように魂だけの状態では意識が完全には覚醒しとらんのが普通じゃ。故に、お主のようにその状態で自意識すら保っているのは通常ではあり得んのじゃが…これも――』
納得したようなアンの声。そして、最後、何か言ってた気がしたが…。
…しかし、やはり眠るのは無理なのか…。
『ん?いや、実際に眠るのは無理じゃがそれに似た事なら出来るぞ?』
…出来るのか!ぜ、ぜひお願いしたい!…。
余りにも暇だったので、思わず食いぎみに返してしまう。
『…う、うむ。では少し待っておれ。』
会話が切れると、次の瞬間には視界が霞がかった様な状態になる。
…あ…。
視界が効かなくなり、一瞬の浮遊感。そして思考が真っ黒に染まっていく。
『それは一種の催眠状態じゃ。本来の睡眠とはまた違うものじゃが、まぁ、精々楽しむと良い。』
まだ残っていた意識の片隅でアンの声が聞こえた気がした。がもうその言葉の意味を考える事も出来ず、ただ落ちていく様な感覚に身を委ねる。
『では、良い夢を、の。』
いつもお読み頂き有難う御座います。
本日もまた投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
暫く投稿時間が不安定になるか、とは思いますが毎日欠かさず投稿できるようにしていきたいと思っていますので、引き続きお楽しみ頂ければ、と思います。




