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0032話

「…さて、この洞窟と周辺に関してはこんなところじゃな。」


そして何事も無かったかのように話を切り上げるアン。


視線で二人に他の質問は無いか、と訴えるアンに対して相変わらず地図とにらめっこをしている二人は気がついていない。


「…ほれ、いつまで地図と睨みあっておる。他に質問は無いかの?」


「…ん?あぁすまん、なら…そうだな…。この三国については何か分かるか?」


アンに促されオロスが顔を上げて、周辺にあると言う国々を指差し訊ねる。


「…ふむ。ならば先ずはエグレス王国とドネロ公国についてかの。エグレス王国は名前の通り王が治める人族の国じゃ、国土は見てもわかる通り東部七国の中で最も大きいのぅ。」


「なるほど…。」


「そして、ドネロ公国じゃが…。これは元々エグレス王国の公爵が治めていた領土なんじゃが、その公爵が優秀だったらしく何らかの功績を上げ、王から独立を認められた国じゃの。ここも同じく人族が主な国で、当然と言うべきか先に上げたエグレス王国とは同盟を結んでおる。」


地図上の二国を指して説明を続けるアンに、二人も頷きを返しながら真剣な様子で聞き入っている。


「そして、バルスト獣王国じゃが、この国は名前の通り獣人達の王が治める国となっておる。国土はエグレス王国とほぼ同等、東部七国の中でも最大となっておる。気風としては穏やかなんじゃが、少々血の気の多いものも居ての。それを覗けば基本気の良い穏やかな奴等ばかりじゃよ。」


「ふむ…。」


「しかしじゃ…。隣国に獣人の国があるからか知らんが、エグレス王国とドネロ公国の同盟は共に人族至上主義を掲げておっての。獣人やそれに連なる亜人種族の者達を激しく蔑視しておる。故にこの二国との戦争が絶えなくての…故にか国境近くの村は荒れた所も多いと聞くのぅ…。」


それだけ言うとまた若干顔をしかめる様子を見せるアン。


「まぁ、儂に分かるのは精々このくらいが限度じゃ、こんな穴蔵に籠っておるし、そもそも人間社会にそこまで興味があるわけでも無いしの。…参考になったか?」


「あぁ、何も分からないまま動くよりも随分マシだ。ありがとう。」


やや心配そうに訊ねるアンに、オロスがにかっ、と笑って返す。


「そうか、ならば良いがの。でじゃ、何か他に…。」


ぐぎゅるるる…。


「ん?」


アンがオロスの返事に安堵したかのように話を続けようとした矢先、獣の唸り声のような音が部屋のなかに響く。


…これは…。


先程から黙り込んでいたエリに視線を向けると、顔を林檎のように赤く染め、お腹を抑える少女が見えた。


「ふぅ…。その前に飯にするかの…。」


「ご、ごめんなさい…。」


「あぁ、よいよい。しかしお主は燃費が悪いのぅ…。」


必死に謝る少女へ、気にするなとばかりにヒラヒラと手を振り部屋を出ていくアン。


…一端休憩…だな。

いつもお読み頂き有難う御座います。

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