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0026話 side とある兵士

周囲が黙々と食事を終え次の動きを準備していくなか、俺は早々に準備だけを終えて、霧に覆われた頭上を見上げ立ち尽くしていた。


周りからの視線がやや痛いが気にしない。第一自分の準備は終わっているのに何の文句があると言うのか。


そんな益体もない思索にふけっていると副隊長から声が掛かる。


「現時刻を持って休息を終了す。総員各隊毎に整列!小隊長は点呼終了次第報告せよ!」


副隊長の号令に従い全員がきびきびと動き出す。勿論俺も例外ではない。自分が所属する小隊(隊員数は10人)の一番後ろに着くと小隊長が点呼を取り、問題が無いことを確認し副隊長へと報告に走る。


そうこうしてる内に全隊の確認が終了したようで改めて副隊長から号令が掛かる。


「よし!ではこれより作戦を遂行する。先ずは第一小隊を中心とし、洞窟前に展開せよ!各小隊長で配置を忘れるような愚か者はいないよな?もし居たら今なら説教だけで済ませてやる。早めに名乗り出ろよ?」


副隊長がにやっ、と口の端を上げながら冗談を口にした辺りで隊全体からどっと笑い声が上がる、が正直そんな冗談はどうでも良いから早く終わらせて帰りたい。



そうして、各隊は小隊長の誘導に従い洞窟入り口を包囲するように第一小隊を中心として広がる。


「よし!では第一から順次洞窟内部へ突入せよ!途中、内部で戦闘が発生する場合は無理に交戦せず、一旦下がりこの場で包囲戦を行うよう心がけよ!」


全体に声が届いている事を確認した後突入の号令が掛かろうとしたその時、内部から何かが出てくる。


(何だあれは…?黒い靄?)


現れたのは人の形を取ったような黒い靄のようなモノ。それは人であれば目にあたる部分だけが別物ののように赤く光輝いている。


「突入中止!全隊内部から出現したモノに注意せよ!」


副隊長から慌てて作戦中断の号令が掛かる。同時に全隊が盾を前方に構え警戒体制を取る。まだ剣は抜かない。


ソレはこちら全体を見渡すように赤い目を動かすと動きを止める。


(気のせいか?こちらを視線が向いた時に一瞬肌が粟立つような感覚を覚えたが…。)


本当に一瞬の事でそれが事実だったのか、勘違いなのかが判別できない。ただ頭の中ではひたすら危険を知らせる警鐘がなり続ける。


(まずい…か?最悪周りの奴等を囮にしてでも逃げる事を優先すべきだな。)


心の中でそう決めると少し気分が楽になる。ただ、逃げ出すタイミングだけは逃さぬようにと腰を沈め警戒を続ける。


そんな事を考えているとソレからこちらに向けてなのか声が聞こえてくる。


『ふむ、見たところドネロ公国の兵か…。一応問うておこうか。このような場所に一体何用じゃ?』


その声は頭の中に直接響くようにして聞こえてくる。


(魔術か?だとしたらあれは洞窟を(ねぐら)にする魔術師か何かの使い魔?だとしてもこれだけの人数に同時に魔術を掛けることができる存在…油断はしない方が良いか?)


心の中の警戒レベルを更に一段上げる。


「それはこちらの台詞だ。このような霧の深い森の奥で一体何をしている!?しかもその様な面妖な出で立ちで!」


『質問に質問で返すのは感心せんなぁ…。まぁ良い。儂はここを塒に生活しとる。この姿は…まぁ使い魔みたいなもんじゃ気にするな。』


そう言ってカラカラと笑うソレ。


辺りが静かな分その笑い声だけが不気味に木霊する―――

いつもお読み頂き有難う御座います。


前後編に分かれると思ったら3部になったでござる…。


という訳で次回も兵士視点です。

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