0023話
結局、あの後アンが部屋に戻ってきて、パンと野菜と少量だが肉の入ったスープを持ってきてくれたお陰でエリの空腹は何とかなった。
…ただあのパンを食べてるときの顔からして、大分固かったんだろうなぁ…。途中でオロスがスープに浸せば?と言うまで凄いしかめっ面だったし。
「…むぐむぐ…。ぷはぁー!ご馳走さま!」
「おう、お粗末様。」
「…別にあんたが作った訳じゃないでしょ…。」
調子の良いオロスをエリがジト目で睨む。
「…何だよ。単なるコミュニケーションだろ…。」
「…煩いわね、分かってるわよ。」
オロスが言い返すと、冗談だったのかすぐに視線をもとに戻す。この二人も、大分気安いやりとりが増えた気がする。…うーん…、最初の出会いはあんな感じだったけど二人とも相性は悪くないのかな?
等と考えているとオロスが姿勢を正しまっすぐにエリを見て話し出す。
「まぁ、冗談はこの辺にしてだな。折角時間と場所も貰えたんだ今後について少し話そうか。」
「ええ、そうね。流石にいつまでも居候させて貰うのは気が引けるしね。」
「そうだな。…それで、だ。どうしたいのか、希望はあるか?」
「私は…、そうね。貰ってばかりで悪いけど、先ずはアンちゃんに色々と教えてもらいたい…かな。魔物とか、魔素とか訳の分からない事が多すぎるわ…。」
そう言って少し項垂れるエリだが、すぐに気を取り直しオロスの方を向き話を続ける。
「そう言うあんたはどうしたいのよ?」
「俺か?…俺はな…。出来ればお前をどこか安全な所に連れて行くまで一緒に行動したいんだが…。勿論エリが嫌じゃ無ければだけどな。」
「…別に嫌じゃ無いけど、なんであんたが保護者みたいな立場で話してるのよ。」
「いや、だっておま…。」
「分かった!また子供だから、とか言うつもりでしょ。もう良いわよ何回言っても信じて貰えないみたいだし…。」
オロスの返答にやや食い気味に反応するエリだったが、その表情はどこか哀愁が漂う。
「…ええ、そうよね。こんなおこちゃま体型で何が25よね。私が逆の立場でも信じる訳無いもの。ええ、子供が背伸びしてて可愛いな、くらいの感想しか持てないものね?…だいたい何よこの体は。勿論元々そんなに発育は良くなかったけどさ…。でも流石にこれは無いわよ。貧乳ってレベルじゃないわよ。まな板よ、まな板…。しかも―――」
そして、またブツブツと呟き出すエリに、しまったとばかりに頭を抱えるオロス。…あぁまたぼやきが始まってしまったか…。と言うかオロスもいい加減そこには触れない様にする。とか出来ないのかね…。
「…お、おーい。大丈夫かー?」
少し声量を落とし問いかけるオロスだがエリには届かない。
「――――――――――――……。」
最早何を言っているのかさえ判然としないが、エリの瞳から光が徐々に消えていき、背後にはドス黒いオーラの様なものがゆらゆらと揺れている様に見える。…こ、怖い。癇癪を起こしたように怒鳴っている時は可愛らしいで済んだが、こう言うのは女の子特有の怖さがあるな…。
―――――――――――――――
数十分ほどしてようやく我を取り戻したのかエリの瞳に光が戻り、背後に見えていたオーラも霧散する。
「…ごめんなさい。取り乱したわ。」
「…いや、良い。」
エリの謝罪に答えるオロスの声はやや疲れきった様に聞こえる。その表情は優れない。…まぁ、完全に無視された挙げ句、あの雰囲気の中で数十分も放置、と言うのは流石に堪えるか…。
「話を戻すけど、あなた…ううん。オロスが一緒に行動してくれる、って言うなら是非お願いしたいわ。流石にこの状況で一人で動くのは不安しかないもの。」
「そうか、それなら良かった。暫くよろしく頼む。」
そう言ってオロスが手を差し出すとエリもその意図を理解したのかお互いに手を取り握手を交わす。…どうなるか、と思ったけど綺麗に纏まって何よりだ。
「さて、じゃあ取り敢えずアンちゃんに色々と聞いてみる。って言うので良い?」
「それが良いだろうな。流石に良く分からないまま行動するのは危険過ぎる。」
「そうね。じゃあ早速アンちゃんに…。」
「話しは纏まったかの?」
「「うを(わ)っ!?」」
そう言って言葉を返したのは突然と部屋に表れたアン。…いや、今本当に突然現れなかったか…?
…ドアが開いたようにも感じられなかった。まるでその場に最初から居たかの様に忽然と現れたように感じられたが…。
「あ、アンちゃんいつの間に!?」
驚きを一先ず置いてエリが問い掛ける。
「そんな事はどうでも良いじゃろ。で?話しは纏まったのか?」
しかし、そんな事は知らんとばかりに先程と同じ問い掛けをするアン。
それ以上は聞いても無駄だと悟ったのか、突然の出来事にフリーズしてしまったエリに代わりオロスが後を引き継ぎ話を続ける。
「あぁ、決まったよ。それでだな―――」
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