0022話
部屋の中が騒がしくなってから凡そ5分ほど経過しただろうか?突然アンから初めて会った時のような気配が吹き荒れる。
一瞬にしてエリは平静を取り戻したのか口を閉じ姿勢を正す。オロスの方も突然立ち上がりその場で休めの姿勢をとる。
「…ふぅ。まったく…。さて、お主達落ち着いたかの?」
「「は、はい…。すみませんでした…!!」」
アンの問い掛けに二人して謝罪し、頭を下げる。
「あぁ、良い。流石に儂もエリのような童に詰め寄られる、と言うのは初めての事でな。少々狼狽えてしもうた…。」
「未熟じゃのう…。」とやや苦笑気味にアンが口にすると、部屋に満ちていた気配が薄れる。その様子にほっとしたのかオロスとエリも肩を落とす。
…いや、しかしあの威圧と言うかなんと言うか…正直いきなり来ると無い筈の心臓の辺りがキュッと絞まる感じがするな…。
「…えと…。あのごめんなさい。本当に思いもしてなかったから動揺しちゃって、それで…。」
「あぁ、もう良い。お主くらいの年じゃと不安定な事もあろう。その辺は儂も理解しとる。うむ、童と言うのは周りに迷惑を掛け成長するものじゃしの。オロスや、その辺しっかりお主がフォローするのじゃぞ?」
「あぁ、わかってる。それが大人の務めだしな。」
「何を偉そうに、お主なぞ儂から見ればまだまだひよっこじゃ。…ただまぁ、男はそうでなくてはな。うむうむ。」
「いや、それはだな――」
当のエリを置いてオロスとアンの話しは盛り上がっていく。…何かエリ、下を向いてプルプルしてないか?おーい…大丈夫かー…。まぁ聞こえないんだろうが…。
「……れが……もよ…。」
「ん?どうしたエリよ?」
「おう、どうした?」
エリの呟きに二人が聞き返すもブツブツと呟くばかりで応えようとしないエリ。
「…だ…が…こ……よ…。」
「うん?なんじゃ?良く聞こえんぞ?」
「おい、何だよ?良く聞こえないぞ?」
二人が良く聞こうとエリに耳を傾けた瞬間。エリが顔を上げる。その目は涙を湛え今にも零れ落ちそうになっている。
「誰が子供よー!!これでも25よ!!」
キーンと子供特有の甲高い声が響き渡る。オロスが耳を抑えその場で蹲る。アンは…何とも無いのか驚いたような顔はしているが不思議そうな顔でエリを見ているだけである。…いや…超音波か何かかと思ったぞ…。なんであれでアンは平気なのか…。いや、龍だから平気なのか?
「…むぅ、そんなに大声を出さなくとも聞こえとるよ。しかし、お主くらいの年の頃は背伸びをしたがるものじゃが、流石に25と言うのは背伸びしすぎじゃな。焦らんでもその内大きゅうなるから無理に背伸びをするでないぞ?ん?分かったか?」
「だから!子供扱いするんじゃないわよ!」
「むぅ、困った娘じゃのう…。アメでも食べるか?」
差し出されたアメを口に含まされるエリ。暫くモゴモゴしたあとヘニャリ、と表情を緩める。…あぁあの表情は年相応で可愛らしいな。
「うむうむ、やはり童はそう言った表情が一番じゃな。」
うんうん、と頷くアン。
「…ほれ、オロスやいつまでそうしておる。」
そう言うと蹲るオロスを爪先でチョンチョンと軽く蹴る。するとオロスが耳を抑えつつ立ち上がる。
「…分かったから蹴るな。あぁ、まだ耳が痛いぞ…。」
「まったく、だらしないのぅ…。ほれ、シャキッとせんか。」
パカンとオロスの頭を叩くアン。
「痛っ!」
…良い音したなぁ…。
「ではの、儂は下に行くからお主達今後どうするか決めておくんじゃぞ。まったく…。」
そう言って今度こそ部屋を出ていくアン。その後ろ姿を見ているしか出来ないオロス。
そして、エリがアメを嘗め終わったのか視線が元に戻ると部屋の中にアンが居ないことに気が付き顔を絶望に染める。
「……私の…ご飯は…?」
「…諦めてこれでも食え。」
そう言ってオロスが差し出すのは、勿論中まで黒こげになったアレである。エリの表情が徐々に青ざめておく。
「虫食だけはいやぁー!!」
今日最大の悲鳴が響き渡った瞬間だった。…はてさて、どうなることやら…。
いつも拙作をお読み頂き有難う御座います。




