0018話
―――はて?タマシイ?イッタイコノコハナニヲイッテ…。
「これ待たんか、一から順に説明してやるから勝手に混乱するでない。」
一瞬の圧力、そしてすぐに開放される。…はい!もう大丈夫です!お話しお聞かせ願いますでしょうか!
…と言うか、今この娘に握られたの?俺?体は無いはずなのに何であんな圧力を感じるわけ…?
「ほれ、またそうやって脱線して思考を続けようとする。ちゃんと説明すると言うておろうに…。あんまり酷いとさっきより強めにプチッ、とゆくぞ?」
…はい!今度こそ大丈夫であります!えぇ、一言一句漏らさず拝聴致します!
「むぅ…。少々口調が固いのが気になるが、まぁ時間もあまり無い、今回は見逃してやるとしよう。」
一拍の間を置きアンが語り出す。
「さて、先ずはお主が“魂”だけの存在だ。と言うところからじゃろうか、自分の事じゃしの。一番気になるのはそこであろう?」
…ありがたい。確かに俺は体も無いし、自らの意思で自由に動くことも出来ない。だからと言って“魂”って言うのはやや突飛じゃないかと思うんだが?
「ふむ、お主は突飛じゃと思うかも知れんがこれは事実じゃ。証明する事も無理ではないが、先ずはそれを受け入れてこの後の説明を聞いてくれると有り難いんじゃがのぅ…。できるか?」
…いやまぁ、そうしないと話が進まない、って言うならそうするけどな。そうだ、俺もアンって呼ばせてもらって良いのか?
「うむ、好きにすると良い。」
…ありがとう。じゃあアン、また質問なんだけど何でアンは俺が魂だ、って分かるんだ?
「ふむ。そうじゃの…。お主は儂が“龍”じゃ、と言うことは知っておるの?」
…ああ、オロスとエリと一緒に聞いてたからな。と言うことは“龍”って言うのは“魂”が見えるのか?
「まぁありていに言えばそうじゃの。“龍”の目と言うのは全てを見通すことが出来る、と言われておる。オロスやエリに見えていないお主が見えるのもこの目のお陰、と言うわけじゃの。」
腕を組み合わせ自信ありげに頷くアン。
…なるほど、それでその目で見た限り俺は他の“魂”と同じ様に見えてる、ってことで良いのか?
「まぁ、そう言うことじゃの。儂の視界とお主の視界を繋げて、同じものを見せてやれば話しは早いんじゃが…。それをするとお主自身に負担が掛かりすぎる。故に先ずは儂の話を事実として説明を聞いて貰った、と言うわけじゃ。」
…なるほど、ちなみに負担、と言うのはどのくらいなんだ?それによっては出来れば自分の現状を確認してみたいんだが…?
「やめておけ。儂ら“龍”の見る世界と今お主がお主が見ている世界とでは次元が違いすぎる。良くて自我の消失。最悪今そこにあるお主の魂と共に完全に消滅するぞ?」
…なにそれ恐い。じゃなくて、なんでそんな事に?ただ視界が変わるだけじゃないのか?
「むぅ…。少々説明が難しいのう。」
アンはそう言って少し考え込むと良い例えが思い付いたのか、再度話始める。
「それを説明するのには先ず“魂”と言うものの性質について理解して貰わねばならん、良いか?」
…うん。
「では最初に“魂”と言うものは外側からの圧力には強いが、内側からの負荷にはとても脆いものなのじゃ。先程お主は儂が握った圧力を感じた筈じゃな?あの程度の衝撃であるならば“魂”本体はさしてダメージを受けん。しかし、内側からの負荷の場合はそうもいかん。例えば…」
そう言って後ろにある棚をガサゴソと漁り始め、やがて目当ての物を見つけたのか、それをこちらに見えるように掲げる。
それは先程見えていた瓶にコルクで栓がしてある液体。アンが振る度にぽちゃぽちゃと中の液体が音をたてる。
「これはな人間が現界を越えるために作り出されたある薬なんじゃが、詳細は省くぞ。これには一般的な薬草の他にとある生物由来の成分が濃縮して配合されておる。」
そして、アンは一旦口を閉じるとやや顔をしかめながら続きを話す。
「この薬を服用した者は確かに人間の限界を遥かに越えることができた。しかし、肉体の急激な変容に魂は着いてこれなんだ…。薬の効果が出てすぐに皆唯の人形と成り果てた。薬の効果が切れた後になってもそこに残るのは最早ただの脱け殻のみじゃった。」
それだけ言い切ると沈鬱な表情を浮かべ黙ってしまう。
―――――こういう時、何て言葉を掛ければ良いのだろうか…?
いつもお読み頂き有難う御座います。
今回は長くなってしまったので中途半端ではありますが2分割です。
続きはまた後日。