0015話
「竜ではない、龍じゃ。あのような、図体がでかいだけのトカゲと一緒にするで無い。」
「?いや、何が違うんだ?」
「はぁ…。そこからか、仕方ない勘違いされたままなのもあれじゃし教えてやろう。」
少女はそう言ってため息を吐きながら頭を振ると改めて口を開く。
「お主の言っている“竜”と言うのはドラゴンとも呼ばれる巨大な翼をもったトカゲじゃ。空を駆け、火を吹き、財宝を好む。まぁ年経た老竜ならばそれなりに知恵も持っておるじゃろうが、基本的に自らの欲望のままに暴れ、喰らう。そこらの低位の魔物となんら変わらん。」
そこで一旦言葉を切ると、テーブルの上にあるお茶を一口啜る。
「ズズッ…。で、じゃ。儂の言うておる“龍”と言うのは地震や津波、台風等の災害と言われるものが自然信仰の対象として崇められたことによってカタチを得たものじゃ。そして儂ら“龍”と呼ばれるものは災害そのものとしての力を有しておる。分かったか?」
「お、おう…?」
「ダメか…。」
説明に対してどこか曖昧な返答を返す彼に、呆れたようなため息を吐く少女。…と言うか、災害そのものってそうとうヤバいのでは無いだろうか…。
「まぁ、最悪儂ら“龍”とドラゴンと呼ばれる“竜”と言うのは別物だとだけ分ければ良い…。」
「おう!それは何と無く分かったぜ!」
そう、諦めたかのような少女に自信満々にサムズアップで答える彼。
「もう良い。して、お主の疑問には答えられたかの…?」
「ええっと…。『死を呼ぶ霧の闇龍』だったか…。流石に長いな…。」
「“闇龍”なんだからアンちゃんで良いんじゃない。」
迷う彼に答えを返したのはようやく復帰した隣の少女。
「いや、“闇龍”だからアンちゃんてそんな安直な…。」
「何よ、なんか文句でも?」
「いや、それで良いよもう…。」
…そこで押し切られるのか…。もう少し食い下がっても…。
「まぁなんでも良いがの。短い付き合いではあろうが、“アン”と呼ぶが良い。」
「「宜しくな(ね)アン(ちゃん)。」」
「うむ。しかし、名前で呼ばれる、と言うのは悪く無いものじゃの。なればお主達にも名を付けてやろう。どんな名が良いかのう…。」
「「…え?」」
どうやら名前を付けてくれたお礼に、彼等にも名前を付けようと考えたようだ。頭を捻りウンウンと悩みだす少女。
「よし、ではお主達には“オロス”と“エリ”と言う名をやろう。うむ我ながら良い名じゃな。大切にすると良い。さて茶が冷めてしまったか、淹れ直してこようかの。」
そして自慢気にウンウンと頷いた後、それぞれのカップを盆に載せそのまま部屋を出ていってしまった。
後には“オロス”“エリ”と名付けられた二人が困惑の表情でソファーに佇むのみ。
「ねぇ…なんか名前貰ったんだけど…どうすんの?“オロス”?」
「どうするって…どうするよ?“エリ”?」
そのやり取りは少女が淹れ直したお茶を持ってくるまで続いた。
いつもお読み頂き有難う御座います。
さてようやく彼等の名前を出せました。
オーク…“オロス”
少女…“エリ”
です。
今後も彼等の活躍にご期待下さい。