0014話
会話が多目です。
「――――、と言う事があって今ここにいる。」
「…ふむ、なるほどのぅ…。しかし、試練ときたか…。またお主らも厄介な者に見いられたのう…。」
彼等の事情を一通り聞き終えそう呟く少女。
「厄介な者?それはあれか?邪神だとかそう言う類か?」
「いや、そう言った類ではない。奴に悪意と言った物は無い筈じゃ。基本的に自らの楽しみの為にしか行動せんが、根幹にあるのはあくまで善意じゃ。」
「そうなのか…。」
もしや、自分達はとんでもないものに見入られたのでは?と言う彼の疑問は少女によって一蹴される。
「まぁ、善意しか無い。とは言っても試練そのものは本物じゃ、命に関わるモノだけ、とは限らんがその性質自体は変わらん筈じゃからのう。」
「試練の性質…?それは一体?」
そんな彼に投げ掛けられた“試練の性質”と言う言葉。少し迷った後少女は話を続ける。
「…まぁ、これくらいなら教えても問題は無いかの…。試練と言うのは、基本的に自らの限界を越えたその先に手を伸ばす為の代償行為じゃ。必然的に試練と言うモノは、自らの全力を振り絞ってなお厳しいモノとなるのが普通じゃ。故に厄介と言ったんじゃよ。」
「でも、それは結果的に絶対不可能、って事じゃないんだよな?」
「当然じゃな。試練とは良い意味でも悪い意味でも平等、じゃからな。まぁ話せるのはここまで、じゃ。これ以上は実際に体験してみるしかないの。」
そこまで言い切るとそこで一旦言葉を切る少女。…しかし“良い意味でも悪い意味でも平等”ね…。
それに対し彼の疑問はまだ尽きぬようだ。
「それは何故なんだ?いや、素直に教えてくれた事については有り難いんだが、そこまで教えてくれるのに、それ以上が何故ダメなのか、と言う純粋な疑問なんだが…。」
「まぁ、お主達の立場で言えば当然の疑問じゃろうが、あまりやり過ぎると色々と問題があるのじゃよ。今はそれだけ理解しておれば良い。」
そう言って最早これ以上はその事について語らない。とばかりにお茶に手を伸ばし飲み始める少女。その様子に無駄だと悟ったのか彼も感謝をしめし、お茶を飲む。
暫くの後、思い出したかのように彼が口を開く。
「そう言えばあんたの名前を聞いてなかったな。俺達はさっきも言ったように、訳あって自分の名前を思い出せないから聞くだけになるんだけどよ。」
「ん?名前か?」
頭に疑問符を浮かべ、少し間が空いてから再び口を開く。
「お主は変な事を気にするのぅ…。名前など自らを縛る事はあっても得など何も無いじゃろうに…。」
「そう…なのか?」
「いや、まぁ良い。で?名前じゃったか…。儂に特定の名前等と言うものは存在せん、が…確か昔人間たちには――」
そうして少女の口から告げられたのは、こちらの予想を越える物だった。
「そうじゃ、確か『死を呼ぶ霧の闇龍』なぞと呼ばれた記憶があるのぅ。まぁ好きに呼べ。」
「――――――は?竜?」
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