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0008話

「何よそれー!!?」


何やら(炭化して)黒くて細長い物を取り出し、見た目さ10才其処らの少女に差し向ける(推定2mの)巨漢。…お巡りさん、こいつです。



まぁこんな洞窟の中でお巡りも糞も無いが…。


「いや、何か小腹が空いてな。手近に有るものなんて、お前が芯まで焼きつくした蟻くらいしか無いだろ?」


「…えぇ、色々と不本意だけど、まぁそうかもね…。」


彼が再度炭化した蟻の足を口に含み、ぽりぽりと小気味良い音をたてながら経緯の説明を始める。それに少女も、自らの疑問は置いて話を聞くことにしたようだ。


「でだ、取り敢えず食べてみる事にしたんだが、いきなり胴体は恐いだろ?」


「…えぇ、そうね。何か体に悪いものがあったら怖いものね?」


確かに、戦闘中酸を吐いていた事から、そう言った器官が体内にある事は確実であり、それが無害だと言う保証は何処にも無い。その言に少女も同意をしめす。


「それで、足ならそう言った危険も少ないかと思ってな。まぁ食べてみたら意外と悪くなくてな。」


「…なるほどねぇ…。って!違うでしょ!何がそれで、なのよ!普通、何があるか分からないから食べない、って発想に行き着くんじゃ無いの!?」


「いや、背に腹は変えられんしなぁ…。」


「現状そこまで困ってないでしょ!?小腹が空いた程度で何そこまでチャレンジしてるのよ!」


だが、その結論は少女にとって理解出来ない物だったようで…。子犬のようにキャイキャイと喚きたてる。それはまるで先程までのやり取りの巻き戻しのようであった。…新手の夫婦漫才か何かか?こう言うのを「天丼」と言うのだったか…。


しかし、少女の喚きは彼の一言によって沈黙へと変わる。


「お前、飢え、舐めてんのか?」


「…へ?」


「腹が減った、と思った時にはもう遅いんだ。ある程度余裕のある時に食料の選別くらい出来てないと、本気(マジ)でヤバイときに良く分からん物でも口にするか、そんな状態で食料を調達しなきゃならんのだぞ?この良く分からん状況で、それが出来るほどサバイバル慣れしてる、とでも言うつもりじゃないよな?」


「………。」


捲し立てるように結論まで言いきった彼は少女の沈黙を納得、と取ったのか食事を再開しつつ、蟻達の死骸を漁り始める。……と言うかそれって、自分の体張って毒味をしてた、ってことじゃ無いのだろうか…。それを黙って、敢えて嫌われそうな説教始めるとか…。こう言う時は…確か「ツンデレ乙」とか言うのだったか…。本気で要らんことしか覚えてないな私。


黙々と炭化した蟻達から足をもぎ取っていく彼。それを見て、少女も何かをするべきと考えたのか妙にソワソワとしだす、が結局彼が彼がそれに気が付くことはなく。ある程度の数を揃えると、それをまとめ。上着で包み。ズボンに着いていた飾り紐で結び、器用に体に結わえ着けていく。


「さて、取り敢えず当座の食料はこれで何とかなるとしてだ。ほら、いつまでボケッとしてる。いくぞ。」


「…い、行くって。何処へよ。」


「何処って、水場を探すんだよ。洞窟の中だからまだ良いけど、長時間行動する事になれば水分補給は絶対必要だからな。そうでもしなけりゃ脱水症状で倒れるのをただ待つだけだ。本当なら、ここで助けが来るのを待ちたいが、こんな場所じゃ望み薄だしな。」


「な、なるほどね。」


彼の回答に納得したかのように首を縦に振る少女。…と言うか彼の中で、少女の同行が決まっているのは発言を聞いていたら分かるのだが、この少女もそれを何処か当然のように受け入れている節があるが問題は無いのだろうか?まぁ先程までのやり取りを見て、相性は悪くない様に見受けられたが…。


ただ少女にはまだ疑問が残っていたようで、更なる質問を彼にぶつける。


「ねぇ、ところで移動するのは構わないけど当てはあるんでしょうね?」


広間を見渡し、そう尋ねる少女。広間にある道は三本、一本は彼の来た道、と言う事で除外出来るが果たして彼の回答は…。


「そんなもん、無い。適当だ。」


…何か根拠のあるものでは無かったようだ…。


「不安しか無いじゃないのよー!」


「五月蝿い、黙って着いて来い。」


「イヤー!私ここに居るー!」


少女の返答も聞かず、無理やり抱き抱えズンズンと来た道から丁度右手に当たる道へと歩いていく彼。それに対して抵抗を試みる少女であったが、体格差がありすぎて、何の抵抗にもなっておらず。



少女の叫びが洞窟の中に木霊するだけであった。

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