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0007話

本日は少し早めの投稿。

ぽりぽりぽり……


少女の生み出した炎が消え去り、真っ暗な広間に何かをかじる音が響き渡る。


ぽりぽりぽり……


「……んん……あによ……ぽりぽり、ぽりぽり……うるはいわね……」


「……んぉ?おひたは?」


眠そうな目を擦りながら、やや舌足らずな口調で少女が声を上げる。それに対する彼も、何かを口に含んでいるのか、やや判別しづらい声で答える。


「……むぅ、くらいはね…。灯れ。」


少女の生み出した火球により、たちまち広間が照らされていく。と同時に少女が目を見張る。


「…ちょっ!なんで私抱っこされてるのよ!離しなさい!」


「ちょっ!分かったから!暴れっあば!」


彼の腕の中に居ると知った途端に暴れだす少女。彼は慌てて宥めようとするが、不幸にもその振り回す腕が顎へヒットし、舌を噛んでしまったのか、痛みにもがく。その間に、少女は彼の下から脱しやや離れた場所に立つ。……ここで何処かへ行ってしまわないのは、自分でも何故そんな事になっていたのかを思い出したからなのか、それとも苦痛に呻く彼を心配してか…


「はぁはぁ…。全く油断も隙もあったもんじゃないわね!」


「ほぉぉぉ、いっへぇ…。!はひはひ、ほはへははふはふふひほひひはひはひひはひゃほふはほほひはっへへへほ!(大体、お前があんな風に取り乱したりしなきゃ、こんなことしてねぇよ!)」


少し息を荒げそう言い放つ少女に、彼が抗議の声を上げるが、最早何と言ってるのかさっぱり分からない。


「うっ、それは…悪かったわよ…。自分でもあんなに取り乱すなんて、思ってなかったもの…。全部こんな状況に追い込んだ奴のせいよ!」


それに対し、少し申し訳なさそうな表情をする少女。しかし次の瞬間には、この状況を産み出した者に対する怒りを表徐に浮かべ、責任を転嫁する。……と言うかあれを聞き取れたのか…。


「ったく、痛ってぇなぁ…。まぁ、あんな風になったのは多少俺にも責任があると思うから良いけどよ…。」


そう言って顎を擦りながら立ち上がる彼。どうやら痛みは多少引いたらしい。しかし、その発言に少女が激昂する。


「はぁ!?誰があんたのせいだって言ったのよ!あれは私が勝手に取り乱しただけ!それの何処にあんたの責任があるって言うのよ!」


「いや、お前みたいな小さな女の子に対して配慮がたりなかったからな。子供に対して責任を持って行動するのが大人の基本だ。それが出来なかった以上、俺にも責任がある。」


しかし、彼はそれには取り合わず。あくまで自分に責任があると、宥めるかのように声を掛ける。がどうやら逆効果だったようで、少女の怒りは更にヒートアップする。


「それの何処があんたの責任だってのよ!大体誰が子供よ!確かに、あんたよりは小さいけどこれでも25よ!」


「あぁ、そうだな。立派なレディだよなぁ。すまんすまん。」


「何よ!それ!!全然信じて無いでしょ!」


自らの歳を25だと言い張る彼女に、全く取り合わない彼。それが火に油を注ぐ結果となり、少女の怒りは治まる処か更に過熱していく。……と言うか25て…。もう少しまともな事は言えんのか…。


改めて、火球に照らされた少女を良く見てみる。見事な迄の黄金に輝く髪は肩の辺りまで伸びていて、さらさらと揺れている。やや細身の肢体は真っ黒なレース付きのワンピースに包まれている。そこから伸びる手足はほっそりとしており、病的な迄に白い。顔はやはり幼さが残る顔立ちで、何処かまだぷっくりとしており、頬の辺りは柔らかそうだ。身長は凡そ130㎝程だろうか?彼の腰の辺りまでしかない。


全体的に見て、どう考えても10歳そこらにしか見えない。


私が少女を観察している間に、両者の言い合いは結局少女が声を枯らす程に叫んだ辺りで終わったようだ。……まぁ怒るのって体力使うしな。


その疲れた様子を見てとったのか、彼は先程まで口に含んでいたものを取りだし、再度口の中へ放る。


「……はぁ…。何食べてんのよ…。」


それを、見て諦めたのか、少女がジロリと睨みながら声を掛ける。


「ん?ほれか?何か小腹空いたから食べてたんだか……。食べるか?」


「なっ――」


そう言って彼が取り出した物は……。


「何よそれー!!?」


先程少女の手によりほぼ炭と化した、蟻の足であった。

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