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きよしくんとたんぽぽ

作者: なかだなお

きよしくんはとっても内気な男の子。

そのうえ泣き虫で怖がり屋さん。

いつもお母さんの後ろに隠れては保育園をいやがっています。


保育園のお友達とも上手に遊べません。

いつもみんなの輪から外れています。


「きよしくん、こっちおいでよー!」


同じ団地に住むひろきくんがきよしくんを呼びました。

ひろきくんはきよしくんと同じヒヨコ組。

自由時間、ひろきくんはヒヨコ組のみんなと楽しそうに遊んでいます。


きよしくんは、おっかなびっくりでただ見ていることしかできません。


お遊戯の時間、みんなで手を繋いで大きな輪を作ることになりました。

きよしくんは最後にやっと、しなこ先生に手をとってもらい両手を繋ぐことができました。

きよしくんのとなりにいたお友達が、きよしくんに話しかけました。

きよしくんは、モジモジするだけです。

なんとか声を出しました。

でも、ヒヨコ組のみんなの元気な声の中、きよしくんの声は全く届きません。

「きよしくんなんて言ってるのかわからなーい!」

きよしくんはそう言われてしまい悲しくなってきました。

そして、涙がポロポロこぼれ落ちてきてしまいました。

泣くのも静かです。

すすり泣きがどんどん激しくなっていきました。


「きよしくんが泣いてるよー」


お友達の誰かが言いました。

みんながきよしくんを見ました。

きよしくんはみんなと上手に遊べないことが悲しくてたまりません。


ヒヨコ組のしなこ先生がきよしくんをお散歩に誘いました。

まわりには小さな小さな小川とたくさんの田んぼがあり、そばには草や花もたくさん生えていました。

小川をのぞくと、おたまじゃくしの群れが見えました。

「大きくなるとカエルさんになるんだよ。」

きよしくんが涙を拭いながら小さな声でしなこ先生に言いました。

「きよしくん、よく知ってるねー!」

しなこ先生がそういうと、きよしくは少し笑顔をみせました。


そこに、きよしくんが白いモコモコとした花を見つけました。

それは、わたげになったたんぽぽでした。

「きよしくん、これはたんぽぽさんだよ。」

しなこ先生が言いました。

黄色の花のたんぽぽしか知らないきよしくんには不思議でたまりません。

きよしくんは首をかしげながら、そのたんぽぽのわたげを見ました。

「この白いのがね、風で飛んで、また今度新しいたんぽぽを咲かせてくれるんだよ。」

しなこ先生のその言葉にきよしくんはまた首をかしげました。

しなこ先生がたんぽぽのわたげに息を吹きかけました。

すると、わたげが宙へ飛び出し風に乗って飛んでいきました。


「きよしくんもやってみる?」

しなこ先生に誘われ、きよしくんもたんぽぽのわたげに息を吹きかけました。

でも、きよしくんの吹きかける力では、わたげはびくともしません。

きよしくんは先生の顔を見ました。

「もっと強く ふーってやってごらん。」

きよしくんはもう一度息を吹きかけました。

でもやっぱりわたげはびくともしません。

きよしくんの表情がふたたびくもり始めてきました。

「先生もお手伝いするからもう一回やってみよっか。」

しなこ先生にそう言われ、きよしくんはうなずきました。

「せーの、」

しなこ先生のかけ声で、きよしくんはまたたんぽぽのわたげに息を吹きかけました。

きよしくんとしなこ先生が息をふきかけると

少しわたげが飛びたちました。

きよしくんは、笑顔を見せました。

「ぼくひとりでもう一回やってみる。」

きよしくんはそういうと

ほっぺをまっかにしながら思い切り強く息を吹きかけました。


すると

わたげがいっせいに宙へ飛び出し

空に向いそよ風に乗って飛んでいきました。

きよしくんは、笑顔をみせました。

「きよしくんの飛ばしたたんぽぽがまたどこかで綺麗に咲くね。」

しなこ先生がにっこりすると

きよしくんは嬉しくて、またわたげに息を吹きかけました。

白いわたげが青い空のむこへ見えなくなるまで、きよしくんは見つめていました。


「みんなが待ってるよ。もどろっか。」

しなこ先生がそういうと

「うん。」

きよしくんは笑顔で返事をしました。


園に戻ると

「きよしくんが帰ってきたよ!」

きよしくんをだれよりも待っていたひろきくんが二人に気がつきました。

「きよしくん、こっちおいでよー。」

ひろきくんのその呼びかけに

きよしくんは、笑顔いっぱいでかけよって行きました。


「どこ行ってたの?」

「いいなー」

お友達がきよしくんに言いました。

「ぼくのたんぽぽが咲くんだよ。」

そう言うと、きよしくんはニコニコ笑顔をみせました。










弱虫で内気でなにをするにもビクビクしていたきよしくんが、

たんぽぽのわたげを自分一人の力で飛ばすことで自信をつけていくという様子を描写しました。

この先、きよしくんが保育園を好きになって

お友達とも上手に遊べるようになっていくであろうと想像してもらえると幸いです。

そして

きよしくんの飛ばしたたんぽぽの命が新しくどこかでまた花を咲かせ誰かを笑顔にしくれていることでしょう。

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