目覚ましとぼく
静寂を切り裂く、冷たく鋭い金属音がこだました。
耳の近くで鳴るそれは雑音という単語で済ませられるほど穏便ではなかった。動かない体とは裏腹に脳がこれ以上その音を聞くことを拒んでいる。
まるで雲の上に居るかのような浮遊感の中、その金属音はより一層その浮遊感にはミスマッチでそれが余計に不快だった。
断続的に鳴る金属音。何度目かの音が鳴ったその時、鼻から入ってくる冷たい空気とが体を震わせた。
金属音は未だ止まない。ようやく動くようになった手を動かし、音の主を探る。
手に冷たく硬いものがぶつかって音はようやく止んだ。
これでやっと平穏を取り戻せた。再び意識の沼へ沈もうとした瞬間、階下から大声。
「たかし!何やってるの!学校遅刻するわよ!」
先ほど止めた目覚まし時計は既に朝食をとらねばならない時間を過ぎている。僕は眠い目をこすりながらベッドからおりた。
ああ、まだ火曜日だ。週末までまだ、遠い。
制限時間15分で書くと毎回暗くなるので明るい話にしてみました。真面目に書いたつもりですが朝が苦手な人のごく普通のありふれた日常風景です。短いです。