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ツミキ

作者: K.Fドイル

 幼い頃、よくツミキで遊んだ。いろんな形のツミキを積んでは崩し積んでは崩した。夢中だった。ようやく積み上げてできたそれは自分でも何の形を目指していたかはわからない。木のほのかな香りと優しい手の感触よく覚えている。

 

 最近、私が夢中で積み上げたツミキが何かの拍子に崩れた。誰かに引っかけられたのか、バランスが悪かったのか、それはわからない。崩れたツミキの残骸を眺めながら、肩を落とし、何かに怒り、戸惑い、底知れぬ不安に襲われた。忙しい感情の波に揉まれながら私はツミキの残骸を眺めた。


 様々な形のツミキがある。一番大きく土台として使ったツミキを手に取ってみる。少しほんのりとあたたかく照れくさい感じがした。


「一番はじめの家族」


そう呟くと私はそっと目の前に置いた。少し私は安心する。



 次はさっきより少し小さいが大きめのツミキを手に取る。笑い合った記憶が蘇る。懐かしい、皆どうしてるだろうか?今度連絡とってみようか?


「友人」


「仲間」


そう呟くと私はさっき置いた大きな積み木の上に、それを置いた。私は少し楽しい気持ちになる。


 今度は形は小さいが掴みどころのない小さいツミキを手に取ってみる。甘い香り、少し苦いか?でも一緒にいると癒される。


「恋人」


そう呟くと私は散々迷った挙句、痛みの記憶とともにそれを積み上げられたツミキの横に置いた。期待だけは捨てなければならない。信じることしか私にはできない。

 くっついてる「結婚」とも「家族」とも見える文字が書かれた紙を独身の私はそっと胸のポケットにしまった。



 そしてまた私は違う形の大きなツミキを手に取った。おや?これは「後悔」か。あの時ああしていたら何か変わっていただろうか?心が重い感じがするからすぐにわかったよ。私はそのツミキを半分に割ると片方をそっと後学のために積み上げられたツミキに積んだ。もう片方は遥か彼方へ捨てた。誰かに当たった気がした。私は少し申訳がない気がしたが、なんだか気持ちが晴れてきた。


 さらに私は崩れたツミキの残骸を眺め、一つ一つのツミキを自分の手で触ってみた。

「不安」「恐怖」「絶望」ああ思い出してきた。少し気が重い。もう進めない。

いやまだあるはずだ。また触る。

「勇気」「期待」「希望」そうそうこんな感じ。進めそうな気もする。


 私は触れた中で必要な分だけツミキを手に取った。そうしてさっきまで積まれていたツミキの上に倒れないように、それらを積んでゆく。見栄えは関係ない。倒れないようにそっと、そっとだ。手が震えた。


 あとは少し退屈した時のために「記憶」も積もう。楽しい記憶を。役に立つかもしれない。



 最後に一つ何か忘れてるな・・・・・・





「自分」だ。その大きさはわからない。 

 

 だが「私」にはわかるのだ。

そのツミキを手に取ると、私は今まで積んできたツミキの一番高いところにそれを優しく積んだ。


 そして立ち上がると、私は夢中になって再び新しいツミキを探し創めた。



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