一歩手前
『よし、こんなもんだろ』
『ありがとうございます!』
私ならきっと倍以上の時間がかかってたはず
買って来たテーブルをあっさり組み立ててしまったダニエルさんは律儀に空き箱まで片付けてくれてる
買い物に着いて来てくれて、組み立てまでしてくれて
もう今日はご飯をご馳走くらいしないと頭が上がらないよ
…明日からちょっと節約すればなんとかなるかな
『じゃあ行こうか』
『ダニエルさん何食べたいですか?』
日も暮れかけてるし、念のため上着を持ってアパートのエントランスをくぐる
ダニエルさんとの外ごはんって、こっちに来てから初めてかもしれない
和食に興味があるって言うからうちで作ったことは何回かあるけど、外食はいままでなかったような
『うーん。イタリアンはどう?』
『大好きです!』
『じゃそれね』
それではどうぞ、なんて車のドアを開けてくれる
ちょっぴりいい気分で乗り込めば、ラジオからタイミング良く流れたお気に入りの曲
『なに笑ってるの?』
『この曲、好きなんです』
『へぇ。こうゆうの聞くんだ?』
『学校の友達のオススメですよー』
教えてもらって聞いてみて、すぐに好きになったんだよなぁ
和訳してみたら歌詞も素敵すぎて、いつか誰かにこんな風に思ってもらいたいなぁって
そうゆう人、いつ現れるかわからないけど
『ミオらしいね』
『む。なんで笑ってるんですか』
『かわいいなって思ってるだけだよ』
『はいはい。そんなこと言わなくてもごちそうしますよ』
むくれて言えば、さらに笑われた
そんで聞き取れないくらいの早口と小声でなにか呟いてる
『ダニエルさん?』
『あぁ、ごめんごめん。それじゃ、行こうか』
知り合いの店だけどいいよね?て車が動き出した
パスタかピザか
どっちにしようかなー、なんて考えてた私はのんきとゆうかなんと言うか
私の世界が変わる、なんて思ってもなかったから仕方ないんだけど