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赤、黒、黄色  作者: 侑
2/5

親切なダニエルさん

「Willkommen!」




ドアベルが鳴ったから、くるりと振り返った

入口を塞ぐかのように立っているのは、ここ一カ月で見慣れた人

二コリと笑って近づいたら、いつものように頭をぐしゃぐしゃにされた




『ミオ、今日も小さいね』

『そんなに急に大きくなりません!』

『はいはい。いつもの席、いい?』

『・・・どうぞ』




一通り私の髪をぐしゃぐしゃにして満足したのか、ダニエルさんがお決まりになった席に足を進めた

そんなに大きくないこの店内で、入口から死角になるその席

一人でその席、さみしくないの?て前に聞いたら、ミオみたいにこどもじゃないよ、て笑われたんだっけ




『ミオ、学校はどう?』

『友達できましたよー』

『よかったな。お祝いに今度デートしようか』

『IKEAに行きたいです!』

『それ、デートって言うの?』




いいとこいっぱいあるのに、て言ってるけど、それよりも私には新生活の荷物を揃えることのが大事なんです!

初めての一人暮らしだから、自分好みのインテリアにしたいんだもん

まさか車がなきゃ行けないところにあるなんて、不覚でした




『まぁいいか。いつにする?』

『え?いいんですか?』

『いいよ。俺の休みに合わせてもらうけど』

『それはもちろん!』




海を越えたイングランドからやってきているというダニエルさんは、立派な社会人

なにをしてるかは知らないけど、たまたま飛行機で隣だった私にこうも親切にしてくれるなんて、尊敬すら覚える

このバイト先だってダニエルさんの紹介があって決まったしなぁ

まぁ、「こどもみたいなミオは見張っておかないと」て笑われて言われたんだけどね




『今度の月曜は?』

『学校終わってからなら大丈夫です』

『じゃあその日ね』




デートだからかわいくね!てウインクしてくるとこは、さすが海外の方ですね

あ、こっちの人からしたら私も海外の人なのか




「Guten Abend,Daniel」

「Guten Abend」




オーナーが料理片手にやってきたから、私は他の作業へ


私との会話はわかりやすい英語で、オーナーと話すときはきれいなドイツ語

当たり前だけど学校もバイトもドイツ語しかない生活に、英語が聞こえるとちょっとほっとする

でもそこに頼らないようにしないといつまで経っても上達しないよなぁ

明日からまた、学校での勉強がんばらねば!


よし、と意気込んで、テーブルを拭く力を込めた

だから、背後でのオーナーとダニエルさんの会話なんて、聞いてなかった










“いつミオに言うんだ?”

“もうちょっと先かな。まだまだ楽しみたいし”

“お前な、逃げられても知らないからな”

“大丈夫。優しいダニエルさん演じてるから”

“あーあ、ミオもめんどくさいのに見つかったもんだ”


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