第1話
風がそよそよと吹き、桜ではなく、季節はずれの雪が舞い散っている。
人間の生活は、ほとんど変わらないまま未来へと進みつづけている。
人は、働き、生活のために、金を稼いでいる。
人は、欲望のまま動き、一部の人は、自分を中心として考え、一部の人は、強さを頼りに、一部の人は、金を頼りに、又、一部の人はそのどれにも属さず、ただ必死に生きている。
人間は、平凡に慣れ、今のままが一番良いことに気づき始めている。
俺は、倉田太一
俺は、今日から、旅に出る。
身支度を整え、アパートを出て、大家に、鍵を返す。
大家は、不思議そうに言う。
「どうしたのですか」
「旅に出ます。今までお世話になりました。さようなら」ときっぱりと別れを告げると、
「まさか、心中じゃないだろうね」と言うので、
「ちがいますよ、ちょっと大掛かりな気分転換です。」
「だったらいいけど。くれぐれも体に気をつけて。」
「はい。」
そうして俺は、宛ての無い旅へ出た。
まずは北へ行くか。
こうして俺は北にある芝維町に向かった。
歩くこと五分芝維町についた。
あたりを見渡すと、怪しい三人組を見つけた。
俺は、好奇心をくすぐられ、その三人組を尾行した。
暗い路地裏に彼らは向かう。
それに俺は、迷わずついていく。
突然、彼らは立ち止まり、ふりむく。
俺は、びくっとして近くにあったゴミ箱に隠れる。
彼らは、安心した様子で手を動かし何かをしている様子を見ると、俺は、ふぅ〜と胸をなでおろす。
これはかなりのスリルを味わえそうだ。
しかし、運命とは残酷なものだ。
「ぶわっくしょん」
言うまでも無く俺は見つかってしまった。
その後のことは、全く覚えていない。黒い布をかぶせられたからだ。
ただ、このことだけは言いきれる。
俺は、部屋に閉じ込められ、急に息苦しくなった。
そして、俺は死んだ。