異世界の詩
掲載日:2026/09/02
異世界へ跳ばされたはずが、まさかの「伊勢海老」? 思わぬ食の誘惑から始まるショートストーリーです。
これが異世界か?なんとも滑稽な
これが異世界なのか?
夢も希望もないのに
これはイセカイだ
金色の翼を畳んで飛ぶのも忘れては来た意味もない
こんなイセカイで
伊勢海なら伊勢海老でも食べれるだろうに
異世界で
ファンタジーの意味も知らないから
ただ茫然と立ち尽くしていたら、
背後の草むらがガサリと揺れた。
現れたのは、邪悪なる魔王――
ではなく、ねじり鉢巻を締めた気むずかしそうな老店主。
「お兄さん、さっきから『伊勢海老』連呼してるけどさ」
差し出されたのは、湯気が立つどんぶり。
「うちはイセカイ食堂。本日の日替わり、伊勢海老の天丼一丁ね」
金色の翼なんて、もうどうでもよくなった。
異世界を救う前に、まずはこのタレの染みた海老を喰らうとしよう
「伊勢海老」の駄洒落一つでシリアスな翼の生えた主人公が天丼に屈する、最高のギャップとテンポを楽しんでいただけたら嬉しいです。
重々しいファンタジーの開幕かと思いきや、お腹が空いては異世界も救えません。湯気立つタレの匂いと、ねじり鉢巻の頑固店主が織りなす少しシュールで温かい日常の始まり。
翼を畳んででも味わいたい一杯から始まる物語、ぜひ最後までお付き合いください!




