3年生―5日目
三題噺もどき―はっぴゃくごじゅうご。
窓の外は、びゅうびゅうゴロゴロと、あからさまにご機嫌が悪かった。
登校する時間はありがたいことに、少々風が強い程度だったので、自転車で通常通り登校した。スカートが捲れて面倒だったが、いつもの事でもある。
「……」
空の端の方は、灰色の雲が覆っている。
今日は一日中こんな天気なんだろうか……そのうち大雨が降りそうな気配もしている。
あまりひどいと頭が痛くなるのでやめていただきたい。
せめて帰る時間には落ち着いてくれているといい。
「……」
そう思っていた矢先に、ぽたぽたと窓が濡れ始めた。
学校の塀沿いに立っている葉桜が、重さに耐えかねてしなり始めた。
アスファルトに模様がつき始める。
「……」
「降ってきたねぇ」
「うん」
隣には机を挟んで座っている、あの子がいる。
言うのを忘れていたが、今は昼休み。
教室には普段の半分ほどの人数が座っている。
「……」
3年生になり、教室が校舎の一番上の階になった。
昨年より少し近くなった空から、今日はこうして雨が降り出している。
昨年より遠くなったアスファルトを、雨に降られながら走る学生がいた。
「……」
制服では学年が分からないけれど、なんとなく1年生に見えた。
どこか幼いと言うか、制服に慣れていないと言うか、なんというか……見間違いだろうけど。この学校で学年を見分けるには、制服につけているバッチを見ないといけない。
「……」
今年は、1年生は黄色、2年生は緑、3年生は青だ。
来年になれば、1年生が青になる。そういう仕組み。
ジャージのラインの色や、体育館シューズの色もそれに揃えられている。
「……」
「1年生かな」
「どうだろうね」
同じように、下を見ていたあの子と、そんな話をする。
3年生になって、クラス替えが行われて、もう1週間経とうとしている。
今までと変わらず、私は休み時間の度にこうして自分の教室を出て、あの子の教室に来る。
「……」
結局、高校3年間、同じクラスになることはなかった。
まぁ、成績でそれなりに分けられるのだ。頭のいい子と、私ごときが同じクラスになれるわけがない。運命でも捻じ曲げない限り。
「……」
目の前では、すでに飽きたのかスマホをいじりだしている。
昼食も食べ終え、昼休みが終わるまでこうして時間をつぶすだけ。
回りには見慣れたメンバーがいる。彼女たちは、ほとんど一緒に持ち上がったらしい。
何人かは私も同じクラスになったので、今年はあのクラスでのグループ分けに困ることはなさそうだ。分からないけど。
「……、」
ころ―と、口の中でキャンディを転がす。
ひとつ、あの子にも上げたので、口がモゴモゴと動いている。
……可愛い。
「この飴美味しいね」
「そ?初めて買ったけど……」
「好きかも」
とまぁ、そう言われると、それしか買わなくなってしまうのが私である。
グミもあの子が好きだと言った味の好きなグミ。私も食べるから何も問題はない。
たまに買ってくるお菓子も、ああ好きって言ってたなぁと思って買ってしまう。
「……」
毒薬が巡るみたいに、あの子の好きなものが好きになって。
飽きたと言ったら飽きてしまうし、買うこともなくなる。
まぁ、おかしな癖ができてしまったものだ。
「見てみて、新しいお菓子だって」
「……へぇ」
そう言って見せられたのは、何とも甘そうな新作お菓子。
どこに売っているのかと見れば、大抵はコンビニ。
「これとかおいしそう」
「ん、好きそうw」
「なにそれw」
今日の帰りにでもコンビニに寄って探してみようかな。
お題:キャンディ・毒薬・運命




