男爵家の魔道具 その1
母に話してから1週間後、無事に着工式を行う事が出来た。
村にある教会の神父に来てもらって祈祷してもらい、基礎作りが始まった。
来週にはドゥアイ子爵家から買い付けた木材が届く予定。
内の屋敷は1階部分が石造りで二階が木造だけれど、今回の工房は平屋の木造を予定している。
収穫期が終わると村人たちのほとんどは仕事がなくなるので、男たちは体を鍛えたりしつつ出稼ぎに出たりする。
体を鍛える理由は単純に領地を守るためだ。
今ハルディン王国内は平和だが、過去には王国内の領地間で戦が起こることはざらだった。
何かあれば村人だって兵士として戦う事になるので、農閑期は体を鍛えることが一般的なのだ。
ちなみに、男爵である我が家も何かあれば戦う事になる。
母だって魔法は使えるし剣の腕もあるていどあるのだ。
ちなみに私は剣はからっきし。
体の弱かった父に似たのか、いまだに線が細い。
食べてもあまり肉が付かないのは若いからだと思うけれど、前世でいうモデル体型という奴だろう。
私の場合は剣は使わずに魔法だけで何とかしてしまうから、剣や槍などが使えないことはあまり気にしていないけれど。
そして私は男爵家に設置した魔道具のメンテナンスを行っている。
今設置されている生活魔道具は、学校で魔道具について学び始めたときに作ったものなので粗もありそうなのでそのあたりの改良も行いたいと思っている。
「さて、まずは給湯器から見ていきますか」
給湯器魔道具は家の外に置いてある。
前世の一般的住宅にあるようなものを想像してもらえればいいかもしれない。
井戸に直結したパイプから水を吸い上げて給湯器を通って水回りへお湯を配給するように作ってある。
水を吸い上げるポンプとお湯を沸かすための熱交換器が内蔵された設計だ。
キャッチクリップの留め具を外して扉を開ける。
まだ、ネジが量産できないから箱形状を作るのが大変だったのだ。
もし量産するなら、まずはネジなど共通部品の量産からだろうね。
魔力を供給している魔石を外して内部の状況を確認する。
ポンプ側はごみなどの蓄積もなく問題はなさそう。
魔石の力で回転するポンプは電動モーターに近い。魔力をコイルに流して鉄心を磁化させ、磁石を回転させる直流モーターで、ポンプ側には圧力制御弁が付いている。
ばねを作ってもらうのが非常に大変で、魔物素材を使う事になった。
ただ、魔物素材でばねの代用と出来るものがあったおかげで簡単な構造でこのシステムを構築できたのだ。
現状ノンノ家は蛇口をひねれば水やお湯が出るという便利設計だ。
「ポンプ側は異常なし。ギアポンプにも錆もないし大丈夫そうね。次は熱交換器ね」
銅の配管に大量の銅板を付けた熱交換器の確認をする。
銅は変形しやすいのもあるし、配管とはロウ付けしているのでちゃんと接合されているかも確認する。
そもそも作成した銅の配管がものすごく高価なのだ。
これを加工してもらうのにものすごい金額がかかった。
この銅配管の作成方法もコスト削減のためには重要になる。
ないわけではないが細い銅管がなかったため、銅板を丸めて銀ロウで配管にしたのだ。
ロウ付けで銀を使ったことで、この熱交換器はバカ高い。
しかし、錫ではお湯を沸かす際の熱で心配だったことからやむなく銀ロウとした。
たぶん、水の沸騰温度を考えれば錫でも行けた気はするけれど、そこは今後の課題だ。
仮に錫で作ると空焚きされた瞬間に壊れる。
「損傷もないし、水漏れの痕跡もなし。お金かけただけはあるわね」
魔道回路も確認し、内部に入れてあるヒーターについても問題はなかった。
電池の代わりである魔石も定期的に魔力を込めてもらっていたのか問題なさそうだ。
最初の頃は魔力を注入し忘れてお湯も水も出てこないトラブルが起こったらしいが、今はメイドのユリが必ず毎朝魔力を込めているので、問題なさそうだ。
「魔石の魔力量も問題なさそうね。化学電池みたいに充放電劣化もない。ほんと便利」
確認を終えて給湯器の蓋を閉めてロックをかける。
さて、次は台所のコンロを確認しますか。




