アデル・ノンノの目指す未来 その1
男爵家に戻ると母ルイーズは執務室にいた。
そろそろ秋の収穫期に入るので、農地を貸している各農家からの報告をまとめているようだ。
「お母様、今戻りました」
「おかえりなさいアデル。あなた宛てに手紙が届いたわよ」
そういって差し出された手紙の風浪にはナーシサス侯爵家の家紋が押されていた。
「マルグリット様からの手紙だわ。お母様ペーパーナイフを貸して」
母からペーパーナイフを受け取り封を切る。
中からは二枚の紙が出てきた。
一枚目はナーシサス家の一人娘、マルグリット・ナーシサス様直筆の美しい文字がつづられている手紙だった。
そして、私がお願いしていたことの許可が出たことが書かれていた。
二枚目には侯爵印が押されたとある許可証が入っていた。
「お母様、お話ししたいことがございますがお時間取れますか?」
「夕食後ならいいでしょう。その手紙に関係があるのでしょう?」
「はい、私がわざわざ貴族学校で”魔道具学科”を先行した理由と今後についてお伝えいたします」
そういって私は執務室を後にした。
*****
私、アデル・ノンノは男爵令嬢にしては魔力量が多く魔法の実力が飛びぬけて高かった。
前世知識にある魔力の増やし方をものごころがつき前世の知識を理解できるようになってからいろいろ試したからだ。
そしてこの世界の魔法の理について本を読み両親から聞きいろいろな考察の末、なんとなく理解したことが実力を飛びぬけてあげた理由だ。
この世界の魔法はすべて数式で表せる。
なんだか素粒子物理学の世界みたいだなと思ったところだが、どんな魔法も数学と物理学で計算可能なのだ。
さすがに超弦理論だとか一般相対性理論を教科書もなく思い出すことはできなかったが、それでもニュートン物理学や熱力学、電磁気学を主とする物理計算がそのまま魔法に置き換えることができた。
理解した数式による魔法の強化や指向性の制御、威力の調整についてすべて数式に当てはめる数字で制御ができることを知った私は、一時庭で様々な魔法を試していた。
そして、子供の交流の為と年に一度開かれるナーシサス侯爵家でのパーティーで魔法を披露したことで、ナーシサス家から才能ありとして王立貴族学校への奨学金的なものまでもらった。
何せナーシサス家のお披露目で使った魔法は、普通の魔導士では使えない雷魔法を自在に操ることで音楽を奏でるほどの実力があったからだ。
やったことはプラズマスピーカーのそれだ。
テスラコイルといえばわかりやすいだろうか、両手からバリバリと小さい雷を発しながらナーシサス地域に伝わる民謡を演奏した。
おかげで髪の毛はぼっさぼさになったが、侯爵含め大人たちの度肝を抜いたことは間違いない。
そして13歳から学校に入り2年目から魔道具学科に在籍したのだ。
魔法学科もあったのだが、入学した13歳時点で教わることは無いだろうと、私だけでなくナーシサス家からも言われていた。
実際学ぶことは無いなと教科書を見て思ったし、マルグリット様が学園におられた間は、派閥の一人として魔法関係の取りまとめをしていたのが私だ。
私は目標をもって魔道具学科で学んだ。
この国において魔道具の多くはモンスターを討伐するための兵器が主で、生活を便利にするものはすくなく高価なものが多い。
私の魔法知識を魔道具に落とし込み、生活に役に立てたいと思っている。
前世の生活レベルまで行かなくとも、それに近いところまで持っていく、それが私の目標なのだ。




