結婚式と偶然の出会い
結婚式当日、晴れ。
湿地帯の多いノンノ領だが、この日はカラリと晴れ渡るよい天気であった。
私、アデル・ノンノはナーシサス領内にある子爵家や男爵家の代理人、領内の騎士、そして母に見守られて無事に結婚式を終えた。
この人の為に仕立てたドレスにローランは感動して、誰にも見せたくないなんて言い出すし、母は泣きっぱなしだし、いろいろとアレだったけれど、ともかく無事に結婚式を終えることができたのだ。
何故出席者に代理人が多いかといえば、領内各地は結婚式ラッシュのため当主が各地へ赴くのが難しいためであり、代理と言っても無関係なものではなく、その家の血筋の者が同席していた。
「おめでとうございますアデル様」
「わざわざありがとうクラレット様」
そして披露宴であいさつをする中で、懐かしい人の顔を見ることになった。
クラレット・フォーセス子爵令嬢、ナーシサス家の西の端にありフォーセス子爵家の三女である。
彼女とは学園を同じくしており、1つ年下のため、今年卒業したのだが、3女ということもありこのタイミングでの結婚はしなかったらしく、フォーセス家の代理として私の結婚式に来てくれたのだ。
「マルグリット様からお手紙で聞きまして私、アデル様へ自分を売り込みに来たのです」
「売込み?そういえばクラレット様は、錬金術をたしなまれておりませんでした?」
「はい、ですから私の力がお役に立つと思うのです」
「それはどういう?」
「マルグリット様よりアデル様が黄銅の素材で困っていると聞いております。私であれば錬金術を使っての調合で素材生産のお手伝いをできると思うのです」
詳しく話を聞いてみると、クラレット様は在学中に同じ錬金術を志す他領の男爵家の四男となかよくなり、王都で店を開こうと考えていたそうだ。
が、当然王都で店を開くことは至難。資金の面もあるし許可証の類から何から金はいくらでもかかる。
夢破れたところにマルグリット様から私を助けてあげてほしいと手紙が来たそうだ。
彼女とその男爵令息は平民になることが決まっていたので、それならば私にかけてみようとフォーセス家経由で私の結婚式参列の代理人として赴いたという事らしい。
「かなり助かる申し出ね……でもノンノ家からの資金提供には限度があるわよ?ちゃんと製品を納入してくれるなら当然その対価は払うけれど」
「もちろんです。もともとは王都でお店を開こうとしていたので、それなりの資金はあります。王都で店を開くには全然足りませんが、黄銅生産の設備に特化する分には問題ない程度の蓄えはありますので」
「そういうことなら後日契約いたしましょう」
「はい、ありがとうございます」
少なくとも私とローランは一週間蜜月期間を過ごすので、その後の契約となるだろうが、素材に関して少しは安定した生産ができるようになるかもしれない。
この世界における錬金術の知識は残念ながら私にはないので助言程度しかできないだろうけれど、素材を自前で調達できればそれだけ安定生産ができる。
うまく軌道に乗るのはそれこそ1年はかかるだろうけれど、本来量産の立ち上げなんてしっかり準備に時間をかけるものだったのだ。
私が焦りすぎたんだから、結婚もしたここらで一つ腰を据えようと思う。




