ナーシサス家の結婚式 にかこつけた交渉
量産が完全に止まってしまった中で、ナーシサス家に行かなくてはならない。
今回、お母さまは欠席して私と婚約者のローランがノンノ家代表として参列することになった。
私はこれでも次期ノンノ男爵家当主なので代理出席者として問題はない。
そして、このタイミングでナーシサス家にいけることを利用して、モレスモ商会に今後についての話し合いを行うこととした。
魔道具量産のための素材の安定供給のためだ。
素材供給業はさすがにモレスモ商会も行っておらず、今から1部門立ち上げても既存の商流に入り込むことは難しいとのことで、仲間内の別の商会を通じてなんとか安定供給を整えようというのが今回の打ち合わせの目的だ。
当然そこには「適正価格で」という前置が付く。
ないものを無理に求めると値段が跳ね上がるのは世の常であり、それは原価を圧迫し、減るのはノンノ家の利益でありモレスモ商会の利益でもある。
確かに今の給湯器需要を考えれば多少強気な金額でも売れるだろうが、それは買える人間が限られ結果的に利益の低下につながる。
それならいつでも同じ価格で安定して供給できた方がよいと考える。
ナーシサス領都に到着し、モレスモ商会に訪れるとかなり立派な建物で少し気後れしてしまった。
さすがは領内きっての大商会だが、私はこんなところと契約して取引していたわけだ。
「ようこそおいでくださいましたノンノ様。給湯器の供給が滞るとのことで、今は新規の受注は控えておりますが、遠い合わせは多く……何とかなりませんか」
「それを今日相談に来たのです。お手紙でお伝えした通り、原材料の黄銅の安定供給が必要なのです」
ベルナールには事前に手紙を書いておりある程度通じていると思っていたが、この言葉を聞く限りあまり通じていなかったのかもしれない。
なので私は詳しく説明した。
「つまり、黄銅の確保が急務なわけですか」
「そういうわけです。それにビストロン産のカラミン鉱が必要なのも影響しています」
「それはまた難しい……銅は我が国で産出されますが、カラミン鉱はすべて輸入、ましてや産地指定ですか……」
「素材の強度や加工性能から、どうしてもビストロン産である必要があるのです」
最大のネックはどうしたってビストロン産カラミン鉱だろう。
何とかこれを安定的に入手できなければ、必要な品質の黄銅ができないのだから。
「モレスモ商会では残念ながら他国の鉱石を扱う土壌がありません。なんとか商会ネットワークをつかって安定入手を考えましょう」
「ありがとうございます」
「それとは別に、その黄銅をなんとかビストロンに頼らなくても作れる方法を探るのはいかがです?」
「言うことは分かりますが、わたくしにその知識はありませんよ」
ベルナールのいう事もわからないではない。
だが、純度の高い亜鉛を今の段階で生み出すのはほぼ不可能に近いと考えている。
そこまでの知識は私にない。
私の前世の知識の限界というやつね。




