新しい魔道具の開発
モレスモ商会と契約し、半年がたった。
給湯器に関しての量産は順調に進んでいる。
無理をせず1日1個生産できるようになってきており、ナーシサス領内にある男爵家までの貴族家に設置が終わった。
ほかにも領内にある各砦に複数個の給湯器が設置され、風呂ではなくシャワー室が作られたりしており、販売数は順調に増えている。
さすがにまだ一般的な農民の家庭には設置されていないが、モレスモ商会の各支店には給湯器が設置されている。
また、ノンノ領においても公共浴場というより、シャワールームという形で体を洗う設備が出来上がった。
湯量を大量に使うための水源の確保が難しく、かといって汗を流したいという需要はあるため考え抜いた末にシャワールームを完成させた。
おかげで髪を洗うのが楽になった。
「で、アデルは何をしてるんだい?」
「次の魔道具の設計よ」
私の執務室にローランがやってきて質問される。
ローランとの逢瀬も順調に重ね、信頼関係もしっかりと構築できている。
だけど、冷媒なんてそんな簡単には作れない。
有名なフロンガスだって化学知識があったとしても、それを量産して放出しない設備なんて簡単に作れるわけではないのだ。
今では彼も工作機械を扱えるようになり、いつしか現場監督のようになってしまった。
本来の仕事は騎士なのに。
「冷蔵庫がほしいの。肉や野菜を低温で保存するための設備よ」
「氷魔法ってやつか……魔道具での再現は難易度が高いと聞くが」
「そうね、でも方法がないわけではないの」
実は学生時代の頃からずーっと研究はしている。
前世の知識と同じ方法で冷却するなら簡単に液化して気化する冷媒と呼ばれるガスが必要になる。
有名なのはフロンガスだろう。
だが、アレを生成できたとして、しっかり密閉して使えるかと言われると今の技術では難しい。
それであれば自然冷媒と呼ばれる中でもCO2を扱ったほうが楽だ。
あとは密閉と、水ではなく空気を圧縮するコンプレッサーの開発が必要になる。
水より空気のほうが漏れやすい、それを何とかするための素材がなかなか見つからなかったが、ようやくモンスター素材でよさげなものが見つかった。
ある昆虫型モンスターがだす繭の元となる粘液だ。
空気に触れると固まる性質がある。
粘液袋を取り出したものを使う事でシーリング材の用に使えそうなのだ。
だからこうして冷蔵庫の開発を進めている。
うまくいけばクーラーも開発できるだろうが、今の時代ではそこまで必要になるとは思えない。
まずは冷蔵庫と考えている。
「魔物素材でも、捨てられてたやつを使うのか」
「そういうこと。捨てられていたから目にもつかなかったの。やっと実現できるめどが立つし、今我が家にある給湯器や水道管のシーリングにも使えるから水漏れの心配も減るわよ」
「たしかに、あの芋虫型の魔物の糸は火で直接燃やすしか逃れる方法はないからな」
それだけ水には強い素材だと言える。
特に糸状に固まるとその力は強く、火で直接焼かない限りは切れないとされる。
糸ほど細く出さなければ少しの間空気に触れても固まらないという作業性も確保されており、使えると思っている。
これでなんとか冷蔵庫が形になればいいのだけれど。




