量産型給湯器の製造開始
加工機の製造を始めて早3カ月、ようやく加工機の試運転と加工物の精度が出るようになってきたころ、ローランが任期開けでノンノ領に来てくれた。
前回と違い、今回は完全な引っ越しになるため、持ってきた荷物も多い。
とはいえ、家具だとか日常生活に必要なものは基本的に領内で購入するので、騎士の活動に必要な衣服と鎧など武器類が持ち込まれた感じだ。
「お疲れ様です、ローラン。無事のご帰還ほっとしておりますわ」
「アデルもお元気そうで何よりです。それに前より輝いておりますね。何か良いことがあったのですか?」
「ようやく量産用の加工機が出来上がりそうなんですよ」
「なるほど、そういうことですか」
ローランにはうれしそうなのが伝わった上に、その理由も納得されてしまった。
なんだかわかられているようでむず痒い。
「領境の砦はどうしても男所帯ですから、お美しいアデルに会えて本当にほっとしていますよ」
「まぁお上手です事。客間はすでにローランの部屋とするために整えてありますから、好きに使ってくださいな。なにか足らない物があれば、私か母に声をかけてください」
「わかりました」
というわけで、またしばらくローランが一緒に住むことになった。
ローランはこの後ポールさんの後釜としてノンノ領騎士団を見てもらう事になるので、あまりこっちの仕事を任せることはできないが、たまには手伝ってくれるというので、その時はこき使おう。
そして、そろそろ1ロット目の部品がそろいつつあるので、母にお願いして領民の雇用許可をもらわないといけないわね。
「これが、現状の魔道具工房の状況です。 部品関係の精度は十分、一台私が試しに組み立てたときにかかった時間は大体1時間ほど、部品点数はノンノ家にある給湯器の3分の2まで減らせました。1月以内にナーシサス領内の貴族家へ給湯器を配備できるだけの生産能力を確保しました」
ノンノ家の執務室、私は今までの資料をまとめて母に説明する。
これは領地運営の勉強の延長戦でもあるので、親子とはいえ上司と部下の会話だ。
「今後も売れる見込みはあるのよね?」
「まだナーシサス領内ですが、豪商からも数件問い合わせが来ています。3年以内には領民たちの家にも配備できるようにしたいところです」
「それは大きな夢ね。それだけ稼げることを願うし、各家に給湯器を設置するとなると大規模な工事が必要ね」
「井戸を水源とした上下水道の敷設を進める必要があると思いますわ」
ナーシサス領都ほどでなくとも、上下水道はあったほうがいいだろう。
領都は古代帝国時代に整備された上下水道が中心部にあり、市民はそちらを使っている。
ナーシサス家が井戸に頼っているのは毒の混入などリスクを考えてのことだそうだ。
「とりあえず、上下水道なんかはナーシサス家の力も借りましょう。まずはアデルが望んでいる領民については許可するわ。やってみなさい」
「ありがとうございます」
母の許可も取れたので早速求人を開始する。
年齢性別は問わない。
絵を見て理解できること。
用意したかごいっぱいのジャガイモを持ち上げられること。
まず要求するのはこれくらいだ。
文字が読めるなんてのはごく一部なので組み立て方については図で書いて、私が実際にやって見せることになる。
まずほしいのは5名ほどだが、すぐに集まった。
村にいる私より若い娘たちが集まってくれ、組みあがった給湯器と同じ重さのカゴに入ったジャガイモを持ち上げてもらって採用した。
やはり、男たちは畑仕事がメインであり女性たちのほうがこういう仕事には集まりやすいわね。
村でパンを焼くのも女性たちだからわかっていたことだが、その中でも若い子ばかりが集まった感じだ。
さて、量産を開始しますか。




