量産型魔道具へ向けて その1
ノンノ領に帰ってきて初めにやったのは、いい加減魔道具の量産化の道筋を立てることだ。
工作機械のバージョンアップは順調に進み、機械を生み出す機械というのが徐々に形になりつつある。
そして、素材については錆びることがないというのもありしばらくは黄銅を中心に使っていくことになりそうだ。
ステンレスやメッキ鋼板なんてものはこの時代に無いし、それをするための素材も精錬施設もないので無理なものは無理だ。
まだ魔物素材を加工したほうがいいだろう。
実際魔道具の中にはいくつか魔物由来の素材が使われている。
一つは魔石、これを電源として私は使っている。
大きさは倒したモンスターの種類と年齢に比例するといわれ、高齢なモンスターであるほど大きいとされる。
そのほかに、ニクロム線の代わりに使っているものも魔物素材だし、電気素材の中で抵抗として使えそうなものがいくつかあり回路に組み込んでいたりする。
そして、残念ながらしばらくローランはナーシサス家でお仕事だ。
彼の本業は騎士であり、正式に結婚すればのちのノンノ家騎士団長になるだろうが、まだ婚約の段階では彼はあくまでもナーシサス家騎士であり、別の業務が入ればそちらへ着任する。
今回は3か月ほどの任期で領地西の砦勤務だそうだ。
とはいえ、ナーシサス家にいた間はほぼずっと顔を合わせ、無理やり設定された休憩時間にお茶をしたり、領都でお出かけデートをしてアクセサリーを買ってもらったり、代わりに私が夜なべしてハンカチに刺しゅうしたりと婚約者らしいことは一通りした。というかさせられた。
仲は深まったんじゃないだろうか?
ちなみに私たちの結婚はマルグリット様の結婚のあとになる。
マルグリット様とサミュエル様は今年中に結婚するそうなので私は来年以降ということになる。
同じ派閥の年の近い子たちもマルグリット様の結婚後というところがほとんどだ。
で、大体出産の時期を合わせようと各家は頑張るわけだ。
私はその頑張る前になんとかして量産の道筋を立てないといけないと思っている。
「領民の力を借りたいというのよね?」
「はい、今すぐではありませんが、農閑期以外にも決まった時間、例えば午前中だけとか午後だけとかそういった時間を区切りながら、魔道具の組み立てをしてもらいたいわけです」
今日は家で母から領地経営の引継ぎをしてもらいながら、量産に向けた領民雇用について相談している。
「今すぐじゃないというけれどいつ頃になりそうなの?」
「半年後には形にして見せますよ。そのために工房を立てたわけですから。最初のうちは月産5個程度の給湯器をつくるつもりでいます」
作ろうとしているのは我が家のタイプの給湯器をよりバージョンアップして簡略化したものだ。
湯の温度はせいぜい50度程度にし、ポンプも一体型の物を考えている。
井戸から水をくみ上げる必要があるが、ポンプから井戸までの水路は設置側に用意してもらうことになる。
とはいえあまり投げっぱなしもかわいそうなので、ある程度の銅管は用意しようと考えているが。
「売れる見込みはあるのよね?」
「サミュエル殿下からおほめいただいておりますので、量産の暁にはすぐにでも客がつきますよ」
実際我が家には数件だが給湯器に関する問い合わせが来ている。
あとは量産体制の確立が必要なのだ。




