魔道具の説明
結論から言うと、魔道具の説明前に長旅の疲れを取ることを目的としてサミュエル殿下は湯浴みを行ったらしく、いざ説明となったときにすでに魔道具について絶賛状態だった。
「これは素晴らしい発明だ!蛇口というものをひねり少し待てばお湯が出る!下男たちに湯を運ばせる必要もない!」
それはそうだろう。
普通は別場所で湯を沸かして部屋に運び込むか、侯爵家のような大浴場であれば薪を大量に使って古代からのやり方で湯を張るしかない。
それが、蛇口をひねればお湯が出るというのだから。
むしろこれができるまで私は前世の知識がありながら再現する方法がなくずっともやもやしていたのだ。
ちなみに魔法で水を無理やり温めたことがあるが、電子レンジと同じで適温のお湯を作るのがなかなか難しい。
火による熱し方だと本来は熱による対流が起こるのに、電子レンジ的な温め方だと中心部分から温まるせいで対流ができずお湯の中で温度差ができてしまう。
全然暖かくならず水に手を突っ込んだ時に危うくやけどするところだった。
「では、そのお湯を出す給湯器と呼ばれる魔道具について説明いたしますね。こちらの図をご覧ください」
私は彼の従者を通じて手渡した紙を用いて給湯器について説明を行う。
どこがどんな機能を持っていて、それぞれどんな働きをしているのか簡単に説明するだけだが、サミュエル殿下はなかなか興味を持っていただいたようだ。
「本来であれば攻撃魔法の補助や魔力制御ができないものがつかう魔道具が生活に役立つようになったということに驚きを隠せない。しかも魔法ではあるが、魔法ではないようにも感じるな」
「はい、魔力は使っておりますが何か魔法を使っているか?と言われますとそうではありません。そういう意味では魔力だけあるものの補助を行う魔道具に近いかと思います」
「なるほど、言われてみればそうだ」
殿下も納得いただけたようでよかった。
そして、殿下は欲しいとは一言も言わない。
ご自身の立場をご理解されていることがよくわかる。一言でもほしいというような言葉が出れば、それは王城へ納品しろということになる。
それが無理なことはこの魔道具を見て分かっているからそういう発言をしないのだろう。
城の中に無数の水道管を這いまわし、空き部屋に給水塔とボイラーを置くというのは現実的ではないことぐらい殿下もわかっておられるようだ。
「こうなると早く婿入りしたいものだな。ノンノ男爵令嬢素晴らしい魔道具でありわかりやすい説明だった」
「ありがたきお言葉にございます」
これでひとまず魔道具の説明は終了。
私の役割は終わったといえるだろう。
ようやく実家に帰ることができそうだ。




