ノンノ男爵家 その2
ユリに手伝ってもらって貴族らしい恰好のドレスに着替えた。
といっても街歩き用なので、それほど派手ではない。
淡い水色のワンピースドレスのスカートには刺繍されていてノンノ家の家紋が書かれている。
誰がどう見ても貴族のお嬢様って格好だ。
私の髪色が父に似てブルネットなため、濃い色かパステルカラーが似合うのだ。
日よけに大きな傘の帽子をかぶるため、髪もちょっと結い上げて帽子に入れられるようにする。
護衛に一人兵士を付けてもらって屋敷を出る。
屋敷からまっすぐ北に歩くとすぐに街道にでて、ハンターギルドはその街道沿いにある。
さらにハンターギルドから北に向かうと湿地帯の入り口があって、その先はモンスターたちが多く生息している。
村の中心自体は屋敷の周辺で、屋敷の南側には農地が広がっており、そちらは静かな農村という感じだが、街道沿いは人の往来が多い。
ナーシサス侯爵領の隣にはブルーリンボ辺境伯領があり、ポール隊長は街道沿いの警備のために詰め所にいることが多い。
私は護衛についてくれた兵士に聞いてとりあえず詰め所に向かった。
街道までは静かだったが、街道に近づくに連れて人の往来が増えてくる。
ハンターギルドの周辺にはお店が並び、宿屋なんかもある。
建設許可を出したのは過去のナーシサス侯爵であり、治安維持も含めてほとんどの管理はナーシサス家が行っている。
特産がないノンノ領において、唯一現金を生むのがこのハンターギルドであり、王都と通いの馬車があるのも、ハンターギルドで買い取られたモンスター素材を輸送したりハンターたちの移動の為だったりする。
ノンノ家はこのハンターギルドが無くなると立ち行かなくなってしまうのだ。
ハンターギルドの向かい側にナーシサス騎士団の詰め所がある。
詰め所には騎士数名のほかに兵士が数名いて、入ってきた私に気が付いてポールがわざわざ入口まで来てくれた。
「ノンノ男爵令嬢、ようこそおいでくださいました」
「お久しぶりですポール様。昨日は夜お帰りになれなかったようで……大丈夫でしたか?」
「えぇちょっとしたトラブルがハンターギルドであったもんで駆り出されたんですよ。いつもならギルドで解決できるんでしょうが……ハンターパーティーが珍しく大物をつかめたそうでパーティー内でもめごとが起こったのです」
「ポール様が出張るという事は、貴族が関係していたと?」
「はい、伯爵家の三男坊がリーダーで、魔術師に子爵家の四男がおりまして、ギルド職員は皆平民ですからね、困り果てて私が呼ばれたわけです」
ポールは騎士と名乗れるだけあって一代限りだが騎士爵をもっている。
跡継ぎでない貴族令息に比べて騎士のほうが位としては高いため、その場を収めるために呼び出されてしまいその後始末で夜までかかってしまったそうだ。
あまり夜遅くに帰るのもということで、屋敷の護衛に兵士を手配して彼は詰め所で泊まることになったのだそうだ。
「しかし、1年たつとお嬢様もずいぶん大人びましたなぁ。背が伸びてすらりとして……」
「凹凸がないと言いたいのかしら? そればっかりはしょうがないじゃない。お母さまに似たのよ」
「ははは、まぁお美しいのには変わりないですよ」
ポールは金髪碧眼でガタイがよく、ザ・騎士って感じの男で街の若い娘にも人気があった。
なにせ一代限りとはいえ爵位を持つからね。
今年で三十五歳だという割に若く見えるし、奥さんのユリとの仲も良好。
ユリが住み込みで働いてくれているので、同じ屋敷にポール様も帰ってくる。
このあたりの治安維持をしてくれているのがポール隊長率いるナーシサス騎士団の兵士たちなのだ。
どうしてもハンターギルドがある関係で荒くれ者が多いノンノ領になくてはならない存在なのだ。




