ナーシサス家に魔道具を設置する
夜会に行った時と同じ道中をたどり、ナーシサス領まで無事に来た。
野党に襲われるだとかモンスターに襲われるだとかを期待した方には申し訳ないが、そういったことは起こらなかった。
なによりナーシサス領の治安はかなり高いというのもあるし、こういった街道には定期的にナーシサス騎士団が警邏しており、モンスターの討伐も行っているので、不測の事態は起こりにくい。
かといって無警戒で大丈夫なほどではないのも事実だ。
残念ながらこの世界にも野盗の類はいるし、商人の振りをした悪いやつらというのもいる。
特に後者は護衛がいない貴族の馬車なんて格好の獲物だろう。
隠した牙をむき金目の物を要求する。
女性だからと言ってむやみに攫ったり襲ったりしない程度には理性的な奴らだけれど、まともな奴らじゃないことは分かるだろう。
「とはいえ、こうして無事にナーシサスについてほっとしているわ」
「アデルは何を期待していたのか知らないが、騎士団が護衛についていれば何も起こらないだろうな」
そして、ナーシサス家の家令に案内され私は客室へ案内され、ローランとは一度分かれた。
彼は騎士団のほうに顔を出すとのこと。
侯爵邸に泊まるなんてとそちらの方へ行ってしまった。
まぁ平民の出である彼からすればいくら騎士爵をもらったといっても仕える貴族の家に客室をもらうというのも気分が悪いだろう。
「グレゴリー様からいつでもお時間を取るとの御言付けをいただいております。何か御用があるときはそちらの呼び鈴をお使いください」
「わかりました。ありがとう」
家令さんと別れて、部屋についてくれたメイドに着替えを手伝ってもらう。
まずはグレゴリー侯爵に挨拶と、工期の話をしないといけない。
何かあった場合のメンテナンスのための人員も用意してもらっているはずなので、実際に組み立てを行う時には彼らにも手伝ってもらう。
一応ロウ付けだとか配管作製ができる人間を用意してもらっており、そのあたりの基礎知識を持つ人間がそろっているはずだ。
着替え終わってすぐに侯爵へ挨拶に行くと、なぜか部屋にはマルグリット様までいた。
「この度はわざわざお時間を取っていただきありがとうございます」
「何気にしなくていい。ノンノ嬢のために時間を取るぐらい造作もないよ。さて、状況について教えてもらえるかな? こちらも明日職人たちに登城するように言ってある」
「こちらが指定した人員をご用意いただけたということですよね?」
「あぁ、金物加工をしている人間を何人か呼んだ。彼らなら先日届いた銅の配管に驚いてはいたが、なるほどという顔をしていたから問題ないだろう」
どうやら、そのあたりは伝達した通りの人員が用意されているらしい。
「あと、配管についてはすでに城の上層階、大浴場の真上に来る部屋を空けさせた。給水塔についても先にもらっていた設計図をもとに設置してある。中はまだ空っぽだがね」
「本日持ってきたポンプを井戸に取り付けることで水を上まで上げられる予定です。まずは給湯器側の作業を急ぎます。井戸の作業を始めると1日井戸が使えなくなりますし、設備間の水の流れの確認も必要ですからね」
「わかった、そのあたりはノンノ嬢に任せよう。明日からよろしく頼む。 それと、マルグリットが話を聞きたいと手ぐすね引いているから付き合ってやってくれ」
「お父様!そのような言い方をしなくてもよいではありませんか!」
突然話を振られたマルグリット様が顔を真っ赤にしてプリプリ怒っている。
たぶん事実なんだろう。
手紙でのやり取りはあっても、やっぱり直接会って会話するほうが感情が伝わり楽しいものね。




