マルグリット・ナーシサスという女性
ナーシサス侯爵家のロータリーに馬車が到着した。
護衛騎士たちが侯爵家の騎士たちに挨拶をしている声が聞こえ、ようやく馬車の扉が開いた。
「まってたわよアデル!」
「マルグリット様がわざわざお出迎えですか」
開けた視界にはメイド数名とともに私を出迎えてくれた、マルグリット・ナーシサス侯爵令嬢がいた。
侯爵令嬢自らたかが男爵令嬢を迎えてくれるとは……それだけ期待されているのだろう。
「私がアデルを出迎えないなんて、それこそありえないわ学校での恩は忘れてないわよ」
「ははは、ありがとうございます」
たしかに学校での魔法の成績を支えたのは私かもしれないが、それがなくってもマルグリット様は学年上位だったと思う。
ただ、主席で卒業されたのは確かに私がいなければ無理だったかもしれない。
マルグリット様は高位貴族ゆえに魔力の保有量も多かったが、魔法が苦手だったのだ。
そもマルグリット様に魔法を教えたのが私なわけである。
数学的知識も吸収が早く、コツをつかみ魔法に関する物理法則の数式さえ頭に入ってしまえばその魔力量と合わせ宮廷魔導士とタメをはれるようになってしまった。
「あなたのおかげでサミュエル王子と婚約できたんだもの、こうして出迎えるぐらいなんでもないことだわ!」
そういって手をつかまれそのまま部屋まで案内されてしまう。
マルグリット様、それはメイドのやる仕事かと、侯爵令嬢の割にフットワークが軽すぎるのが問題だ。
そして、マルグリット様の婚約者が第二王子のサミュエル王子である。
マルセル王太子がすでにご結婚され第一子が生まれたこともあり、第二王子殿下は王室をでることになったのだが、その白羽の矢が立ったのがマルグリット様だったのだ。
ほかにも辺境伯や別の侯爵家への婿入りも検討されたのだけれど、最終的に学校の成績がとてもよく、年齢も一つ年下であるマルグリット様が選ばれた。
実際、学校での絡みも生徒会であったそうだし、昔から顔を合わせることも多かったそうなので、お二人の仲は良好。
むしろ、マルグリット様の婚約者が学校入学時に決まっていなかった方が珍しいと思うけれど。
「ここが滞在中のアデルの部屋よ! 今夜は語り明かしたいの!」
「マルグリット様、その前に侯爵様にご挨拶をさせてください。それに、わたくし侯爵家に設置する魔道具の話もしたいのですよ?」
「あぁ、そうだったわね。 でも絶対どこかで語明かすわよ! 学校を卒業してからみんなとあまりお話しする機会がなくって悶々としてたのよ!」
ほんと、侯爵令嬢としては元気すぎる方なのだ。
学校でも派閥の子たちでも信頼のおける相手しかいないときには今みたいに割と好きにされていた。
当然夜会だとか茶会、式典の際は侯爵令嬢として非の打ち所がない所作をお持ちなのだけれど、オンオフが大変はっきりしているのよね。




