ナーシサス侯爵家へ
ナーシサス侯爵家より正式に夜会の出席と共に宿泊許可まで届いたため、私と母で荷造り中である。
久々にノンノ家の馬車の出番でもあり、御者を雇う必要もある。
「お母様、御者はハンターギルドで見繕いましょう」
「そうね、依頼文はあなたに任せるわ」
「わかりました」
少しは領主教育もされたので、家の為の書類仕事も徐々に私が手を出し始めている。
荷造りは母とユリに任せて、私は依頼文をしたためる。
正式な依頼として馬車の護衛も頼めばパーティーで雇えるので、王都に帰ろうと考えているハンターパーティーが仕事を受託してくれるはずだ。
当然我が家の護衛兵もつくが、護衛に関しては人数が多いほうが良い。
「さて、この依頼をハンターギルドへもっていって」
「わかりましたお嬢様」
通いメイドのセシルに依頼書をわたす。
あとは自分のドレスの手直しか……新規に1着作るのは金もかかるし、そんな予算ノンノ家にない。
個人資産から出してもよいけれど、わざわざこちらに人を呼ぶのも面倒だし、単純に間に合わないから既存のドレスの手直しをすることで乗り切る。
下位貴族はそういった形で手直ししたドレスを着まわすことがままあるのだ。
王宮に呼ばれるとなればまた別で、かなりの期間をもらえるのでドレスは新調するのだけれど。
*****
準備に1週間かけて手直しした濃紺のドレスをトランクにしまう。
ここから2日かけてナーシサス侯爵邸を目指すことになる。
「ハンターの方々よろしくお願いします」
「ノンノ男爵令嬢、この度はご契約いただきありがとうございます」
今回護衛してくれるのは男性3人と女性一人のハンターパーティーだった。
女性は魔道師でもあるらしく、私のことを知っていた。
「かの有名なノンノ様とお話しできるなんて夢のようです」
「まぁ私のことをご存じなの」
「はい!魔術の天才と呼ばれるお方ですから!!」
という具合に平民でも私のことを知っているらしい。
道中彼女と魔法談義をすれば2日ぐらいあっという間だろう。
ハンターたち以外にポール様が人選した女性兵が2名同行してくれる。
彼女たちは帰りも護衛してくれる予定で、この度ナーシサス騎士団に一時帰るようなかたちだそうだ。
2頭立ての馬車はゆっくり街道を進む。
馬で全力なら1日でつくナーシサス侯爵家だが、馬車は同じ速度は出せない。
それに道もそれほど良くはないので、スピードを出すと乗り心地は最悪になる。
街道といっても前世のように舗装されているわけではなく、土の上を行くのでガタガタとゆれるのだ。
「一般的な呪文において、火魔法は相手に火をつけて燃やすイメージだと思いますが、実際はちがうのですよ。
考え方としては目に見えない魔力によって相手の燃えやすい装備をターゲットを発熱させることでより効率的に火をつけられるのです」
「火魔法はそのように考えるのですね」
「火魔法の最大魔法が爆発魔法なのは、爆発の魔法なのではなく、結果対象が爆発しているだけなのです。卵に火魔法を使うとわかりやすいですよ」
馬車と並んで歩くハンターの女性と魔法談義をする。
ちなみに私は魔法の原理を理解し始めたときに試しに実験して見事に卵を爆発させたことがある。
だからこそ、火魔法は「電子レンジ」であり「電磁波を魔力で操っている」ということを感覚的につかんだの。
いきなり数学の話や物理学の話を始めても何言ってるんだコイツってなるから、こうしてわかりやすいたとえとか考え方で話をするのだけれど、なかなかに難しい。
ナーシサス侯爵家への道中はとても穏やかに過ぎていくのだった。




