ナーシサス家の魔道具 その1
マザーマシーンのための部品製作を進め、各部の部品を一段階精密に加工した部品に置き換えることができ、各部品の勘合時のブレが少ないものを選定できた。
これで、最初期よりも繰り返し同じものを作れる条件が整った。
季節は冬の真っただ中。
朝の寒さは身に染みるが、まだ雪が降らないだけましかもしれない。
ナーシサス領内の山は白く雪化粧していて、ここからでも白い山肌が良く見える。
「今日は一段と寒いわね」
「そうですねお嬢様。今日も作業をされるのですか?」
「今日からはナーシサス侯爵家から依頼されている大型の給湯器の設計を始めるわ」
「そういえばそんなことをおっしゃられていましたね」
ユリと会話をしながら今日の服を用意してもらう。
ここ最近は工作機で作業をしてたため、汚れてもよい騎士服のようなものを着ていた。
装飾品などはすべて外したものだが、生地は厚く、切子などがついても安心できるものだ。
今日は室内作業の為、デイドレスを用意してもらう。
母とともに朝食を食べ、今後の予定としては夜の領主引継ぎのための勉強しかないとのことで、私は自室にこもる。
最初に作らなければならないのは大型のポンプだ。
現在ノンノ家に設置しているポンプ一体型の給湯器の中にはごく小さいギアポンプが組み込まれている。
「これを削り出すのもすごく骨が折れたのよね」
真鍮製の棒を地道にヤスリで削っていったのだ。
幾何学的加工ができないため、現物勘合しながら様子を確認した。
今回は旋盤がある。
ポンプケースの中ぐり加工も、ギアの加工も旋盤にて行える。
「最後の合わせは必要でしょうけど、圧倒的なスピードで大きなポンプを作成できるわ」
目標としては前世の水道程度の水量が欲しい。
そのためにはポンプで一度水を屋上に上げて、給水タンクを設置し重力に任せた制御をしたほうがいい。
ノンノ家と違い、各部屋に風呂があったり、従業員の移住区の共同水場だってかなりの規模がある。
そうした施設の場合、給水タンクを設置する方式のほうがいいだろう。
「あとはボイラーね……」
こちらも大変だ。
電熱線モドキによって水を温めなくてはならないので、1系統ではなく、数系統の水パイプを使って、細かく水の温度を上げるしかない。
少ない水の量であればそれだけ温まるのが早いように、大量の水を温めるには細い銅管を何本も使って水を温め合流させたほうがいい。
温度は体積が小さいほど伝わりやすく、体積が大きいほど逃げにくいからだ。
「問題は、こんな複雑な配管をロウ付けしてメンテナンスできるかってことね」
そう、何か故障した時に直せないとこういう商品は困るのだ。
ましてやナーシサス家までは馬を乗りつぶす勢いでで飛ばしても1日掛かる。
簡単に壊れては困るし、壊れたときは現場にいる使用人が直せないと困るのだ。




