この世界の魔法
旋盤は無事に動いたので、完成に向けて目盛りを付けたりしながら、次に加工するものを考える。
まずはシャフトの精度向上、次に台座の中ぐり加工、できればギア加工も実施したい。
そうすれば、ノンノ家のシステムを再構築して、バージョンアップするだけでなく、量産に向くものに出来る。
マルグリット様からは早めに給湯器をナーシサス家に納入しろとも言われているので、バージョンアップしながらもう一個作る方向で行こう。
私がこうした工作機械にこだわるのは、量産の為というのが第一にあるけれど、この世界における魔法が万能ではないというところにある。
多くの魔法は物理学と数学によってあらわすことができるが、それゆえにファンタジーな魔法がないといえる。
例えば、よくファンタジー世界では火の玉を飛ばす魔法があるが、アレはどの様な原理だとお考えだろうか?
人の目に見える炎とは、基本的に可燃性物体が発火温度を超える熱が加わったとき酸素と結合することで起こる。
たとえば、ガスが燃えるのはガスの中の炭素が酸素と結びつくことで燃焼が起こるわけである。
炭素と酸素の結びつくときに発生する熱量によって、まだ酸化されていない炭素が酸素と結びつく事でも燃え続けるのだ。
つまり火の玉を飛ばすには何か燃えるものが必要になる。
この世界における火魔法は、相手を直接発火させるものだ。
原理を簡単に述べれば電子レンジの応用だ。
乾燥し、火が付きやすい対象物に電磁波を当て電子を振動させることで発熱させ、自己発火温度を超えれば燃える。
もちろん応用として直接モンスターを電子レンジに叩き込むようなこともできる。
相手は爆発四散する。
素材を手に入れたいハンターからすると一番やってはいけない魔術になる。
同じように、水を無から生み出すこともできない。
無理やり再現しようとするならば、空気中にある水分をコップを冷やすことで結露させて取り出すというものだ。
魔法によって行うのは熱交換などの熱力学の応用、コップの内側の熱を奪い放出することで、結露を作ればかろうじて水を得られる。
むしろ、近場にある水分の表面張力を自在に操りモンスターを窒息させるのがこの世界の水魔法だ。
そんなだから物理学の知識と数学的知識があれば、どこの数値をいじればどのような効果があるのか一発で分かる。
その数値に該当する項目を魔力を使って制御するわけだ。
魔石が電池としての動きをするのは、蓄えられた魔力によって電子の流れを制御しているから。
総じて、この世界における魔法とは、電子を自在に操る手法ということになる。
この世界の魔道具に攻撃魔道具が多いのは、魔道具師が自ら使える魔法の数式を何らかの方法で再現し、使用者が簡単に同じ魔法を使えるようにする目的が強い。
それゆえ生活魔法と呼ばれるような、ちょっとマッチで火をつけるだとか、水魔法でウォシュレットだとか、風魔法で空を飛ぶなんてことはできない。
この世界の魔法は少し融通が利かない。
※アデルは量子力学についての知識がそこまで深くありません。
電子が操れるなら、重力を操り、核融合をおこない、空間をゆがませることもできるはずですが、いまいち思い出せないため、そこに至っていません。
ただ、核融合などの原理については知識があるので、やろうと思うとアデルは原爆魔法や核融合魔法が使えてしまいます。




