男爵家の魔道具 その2
台所へ向かうと、ユリが夕食の準備を始めていた。
「お嬢様、給湯器の確認は終わられたのですか?」
「えぇ、終わったわ。今夜もお風呂に入れるわよ」
私の答えを聞いてユリがにっこりする。
給湯器を置く前の男爵家は井戸から水を汲んで湯を沸かし桶に移しと重労働だったのだから。
お母さまや私だって週に一回しかお風呂に入れなかった。
子供の頃からそれが耐えられなかったので一番最初に作ったのが給湯器の魔道具だったわけだが。
「火を使う前にコンロを確認したいのだけれど、いいかしら?」
「はい、お嬢様大丈夫でございます」
ユリの答えに私はさっそくコンロの蓋を開ける。
毎日使い終わった後に掃除しているのか、大変きれいにされているのがわかる。
もうすこし油汚れだとかが付いているかと思ったが、そういう事もなかった。
中に入っているのは断熱効果が高い魔物素材。
ニッケルクロム合金なんてないので、電熱線は作れなかったが、似たような性質を持つ魔物の毛があったのだ。
その毛を編み込み紐状としたものに魔力を流すと発熱する。
まんま電熱線だ。
コンロと便宜上呼んでいるけれど、やってることは電気コンロである。
つまみを回すことで流す魔力量を変更することで発熱量が変わり火加減を変更できる。
この電熱線モドキのおかげでサラマンダーまで作れそうだが、それはまだ作っていない。
電熱線モドキの毛が高いのだ。
少々レア度の高いモンスター、ファイアフォックスと呼ばれる狐の毛なのだ。
類似する火属性のモンスター素材が使えればいいが、残念なことに毛のある火属性のモンスターは今のところファイアフォックスぐらいしか見つかっていない。
これも何とかしないとコストダウンはできないでしょうね。
「よし、確認終わり。特に問題なさそうね」
「はい、日々のお食事を作る際も薪を焚かなくてよくなりましたからずいぶん楽になりましたよ」
「パン窯はそうはいかないけれどね。そのうちパン窯も魔道化するわ」
「そうなれば薪が要らなくなりますね!」
「冬の暖房には使うから使用量が減るだけよ」
これで男爵家に設置してある魔道具の確認は終わったし、前から思っていたコスト的ネックも再確認できた。
給湯器は1年半、コンロは1年無事に動いているようだから現行のままでも販売はできるだろう。
伯爵家以上の家に売り込む分にはいいかもしれないが、それでも購入してくれるかというと派閥内で一部導入ぐらいだろう。
最終的にはわが村でも購入ができるレベルのものとしたい。
そうなれば工場の意味があるし、輸出もできるだろう。
私の各魔道回路を理解できる人間がいない限り複製はできないだろうから、しばらくは独占状態だろう。
あとはどうコストを下げて、大量に作れるようにするかだ。
そうなると、まずはアレを作る必要があるでしょうね。




