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星環の継承者  作者: 世の中金
12/15

第10話 課外演習① ― 潜行開始

アストラ魔法学園一年Sクラス、午後の掲示。

 〈課外演習:東京ダンジョン・入門区画(1―20階)〉


 担当は実技教官の九条真砂。

 「ルールは三つ。無理をしない、十層ごとの転移陣で必ず帰還報告、単独行動は禁止。

 ダンジョンは全世界共通の構造・強度、全五百階、十階層ごとに転移陣。——教科書どおりだな」


 星宮星牙は、腕時計に擬態した従魔ヴァルの表示を軽く撫でた。

 【同期完了。支援プロトコル待機】

 「回復と結界の補助、最小限でいい」

 【了解】


 班分けは四人一組。

 星牙/レン・フレイムハート/クレア・リンドウ/支援系の真田(地・結界)。

 役割は、レン=先鋒、クレア=制圧&視界管理、真田=遮蔽と足場、星牙=遊撃。


 九条が結界ゲートを開く。

 「それじゃあ——潜るぞ」


 *


 1階層。

 石畳の回廊、低い天井、青白い壁灯。どこのダンジョンでも見慣れた“同じ風景”。

 レンが囁く。「前、二。左に二体、足音軽い」

 「風で押し戻す。——真田、床を荒らさないで」クレアが手短に告げる。

 土色の符が床に滑り、薄い防震の板が敷かれた。足音が消える。


 影から跳び出したのは《ホブゴブリン》。

 レンの風刃が一歩目で膝を刈り、クレアの冷却風が刃の縁に乗る。

 氷片が散り、二体同時に崩れた。

 「ナイス、二人とも」真田が親指を立てる。

 星牙は一歩も動かず、天井の**魔力脈レーン**を見上げた。

 (流れは素直。学院の地脈とは違って、逆流はなし)


 5階層。

 群行廊の先で、音が吸われる。

 レンが肩を竦める。「無音域だね。やな感じ」

 星牙は指先で空間をなぞり、微弱な反発結界を置く。

 「これで声は届く。——前方、交差路で右が安全。左は湧きが濃い」

 クレアが小首をかしげる。「視えた?」

 「**星屑スターダスト**の偏り。光が散る角度でわかる」


 右へ。湧きは薄く、時間を節約。

 九条から魔導端末に通達が入る。〈各班、現在地を送れ〉

 ——S一年第3班:深度6、異常なし。

 星牙は短く入力し、進む。


 9階層。

 小広場。転移陣まであと少し。

 天井の石がぱきりと割れ、三体同時湧き。この層では珍しいが想定内。

 「レン、正面。クレア、右を鈍らせて。真田、左を壁で止める」

 「任せて!」

 「了解」

 「行く!」


 風が先に走り、右の個体の関節に冷風の楔が刺さる。

 左は土壁がせり上がって足止め。

 正面は——星牙の一歩。

 杖が刀へ変わり、星撃・微小重圧が刃に集まる。

 「——落ちろ」

 金属もどきの皮膚が紙のように裂け、静かに倒れた。


 レンが振り向く。「やるじゃん、遊撃」

 星牙は肩をすくめる。「先鋒が強すぎて暇だった」

 クレアが淡く笑う。「なら、退屈させないように頑張る」


 10階層・転移陣。

 九条の声が通信に入る。〈一時帰還報告、忘れるな〉

 陣に立ち、学園の臨時拠点(安全室)へ。

 回復、装備の点検。ヴァルが小さな治癒符を光らせ、擦過傷を消す。

 【次階層から、罠密度が上昇。推奨ルート:中央回廊→西翼】

 九条が頷いた。「中央は混む。西へ回る。——焦るな、まだ序盤だ」


 星牙は静かに呼吸を整えた。

 淡く灯る転移陣を見つめながら、心の奥で思う。

 (平穏なのは、今のうちだけか)


 訓練の一日目は順調に終わった。

 だが、その深層で蠢く“何か”の気配は、まだ誰も知らない。

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