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外はよく晴れているのだと思う。
廊下に流れる空気は澄んでいるというか、気持ちよく感じている。窓から見えた青空には、雲一つ確認できなかった。
まさに快晴ね。
……ん? ……いや、たぶん気のせいだよね。
リビングでは母がすでにご飯の準備を済ませていた。
「目は覚めた?」
アタシに気がついて母さんが声をかけてきた。
「うん。おはようぉと」
足元で2号が元気に跳ね回る。これこれ……
「はい捕まえた~。……なんかさぁ、変な夢見た気がするんだよねぇ……」
席に着き、甘えん坊を膝に乗せる。もう手伝える事はなさそうだし、2号が危ないから拘束しておくのです。
「夢?」
どうぞと母さんがご飯を入った食器をテーブルに乗せてくれる。
あっ、このスープ好き。
「夢の内容はよく覚えてないんだけどね?なんか昔の記憶を誰かと見てたような……」
お腹を空かせソワソワしていた2号がアタシの拘束から逃れて膝から降りる。
「誰かと?」
母さんは2号の前にこの子用のご飯を置いて、アタシの向かいの席に座った。
全くもって、いつもと変わらない朝。
けれど気持ちはなぜかいつもより上がってない。
「いただきますっと……そうなんだよ。母さんがアタシを拾ってくれた頃のなんだけどね? なんかアタシ以外にも誰か一緒にいたような……」
「ふーん?」
「だからこの後は『花』見に行ってこようかなぁって……なんか嫌な予感がするんだよねぇ……」
「……イオンの予感はやけに当たるものねぇ」
『花』とは、森の中にはある母さんがかつての仲間達と作ったという花畑で、そこは一年を通して常に花が咲き誇っている不思議な場所である。
アタシは何かあった時はいつもそこへ行っている。落ち着いて考え事とかできるから。
「それにほら。最近は物騒じゃない? 見回りしておこうかなって」
物騒。と言っても殺人がどうとかではない。
アタシ達が住むこのフォクスリー辺境領では今『絶滅したはずの魔物や生物が確認されるようになった』という、異変と言えばいいのか……珍事が起きている。
他の領地でもごく少数だが確認されているらしいが、辺境は特に報告が多いらしい。
領主様主導の元、騎士と冒険者ギルドの一部上位冒険者が協力して調査しているらしく、母さんも建前的には『外部協力者』としてこの調査隊に参加している。
便宜上の部隊名が確か…………そう、それ。古代種事件調査隊。
『古代種ってほど古くはないけどね』なんて、前に母さんが珍しくぼやいていたっけ。
アタシは運がいいのか悪いのか、いまだに例のには出会ってはない。だからと言って、それほどこだわってもいない。
多少の好奇心はあるけど、危険を犯してまでの興味はないしね。
「……わかった。お弁当はいる?」
「う~ん……いらないかな。行ってすぐ帰ってこようかなって思ってるし」
「わかっ……」
不意に母さんが言葉を止めた。
気になって見れば、アタシの顔を凝視して困惑? しているようだった。輪が何とも言い難い回り方をしている。
「うん? ……どうしたの? アタシ寝癖ついてた?」
「…………」
「えっ、なになに?」
「……いやごめんね。ちょっと気になったことがあったから…………イオン、お昼には帰って来てね」
急に真剣な顔するじゃん。
「え? うん……」
変な不思議な雰囲気で朝食は終わった。
そして諸々の準備を終えてから、アタシはいつもの花畑へ向かって歩み始めた。
「行ってきま~す」




