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夜を越し、昼前には『歪み』があるかもしれないという森を目指して私たちは進んでいた。
何でも近くの村の人たち曰く『突如として獣や魔物達が一瞬にして消えてしまう』のだという。今までも何回か冒険者達に調査をしてもらったらしいがめぼしい成果はなく、もしかしたらと言うことで私たちも向かっていたのだ。
歪みであるならば、まさに救世主達の出番だし、そうでなかったとしても、報酬はいい額らしいからマイナスはない!…………と、思う。
まぁ、その道中は正直暇なわけで……
「……ねぇ、この近くって確かフォクスリー領よねぇ?」
「そうじゃな。というか隣がそうではなかったか?」
私の何気ない質問におじいちゃんが、そう答えてくれた。
「そうよね! それで思い出したんだけどさ? ……あそこのご令嬢……何でもすごい美人だとか!」
みんなで何回かフォクスリー領は行った事あるし、ご令嬢とは大の仲良しである。
「いや、お前会ったことあるだろうが」
すかさず青年が訂正してきた。けど無視する。
「おじいさん……一目、見たくありません?」
「ふむ…………じゃが、ご令嬢じゃろう? ワシのような者が気軽に会うことなぞできますまいて」
おじいちゃんは私が何をしたいか察してくれた。さすが。
「天使ちゃんと×××君も! 会いたくありませんか?!」
気を良くした私は、すかさずカップル二人も巻き込んだ。
「…………お前分かっててやってるだろ」
青年は若干イラつき始めてる。けど無視する。
「セビアさんはその方とお友達ではなかったのですか?」
「それは言わないお約束ってやつだろうね」
若干小声ではあるが、バッチリ聞こえている。カップル二人組は乗ってきてはくれなかった。
「もう! 二人ともノリが悪いんじゃない!?」
「いやノリがダルすぎるだろ……」
すかさずのツッコミが入る。けど無視する。
「もう! おじいちゃんだけ特別ね! なんと———」
———突如『何か』を感じた。
「ッ! みんな警戒!」
普段であれば気にしない程度の小さな変化。
けれど確実によくないと私の直感が告げた。
「数と位置は?」
青年が自身の剣を構える。
私の発した声に疑問を持たずに、他のみんなの各々の得物を構えた。魔法的なことに関しての信頼を置いてくれている事に嬉しく思うが、その礼を言うほどの余裕が今の私にはなかった。
「正面! でも数はわからない! 何これ…………広い? いや、違ッ……えぇ?」
「はっきり頼む!」
「わからないの! なんていうか……漂ってる感じ!」
「はぁ……?」
『どこから』はすぐに分かった。けれど、『何』がかはまるで分からなかった。なんらかの魔術? だと思われるけど、それがどのようなものかは分からない。けれど、確実に危険なもの。それは分かった。
目に見えてソレは起こった。
「……あれか?」
最初に声を上げたのは青年だった。剣を構える彼の正面少し先に小さな『穴』が開いていた。
あれはまずい。
救世主と天使ちゃんがすぐに反応しなかったあたり、これは『歪み』とは違う現象なのだろう。けど、だからこそ、危険であると理解してしまった。
「なんか風景? どこだろ…………まさか転移系の魔術!?」
どこかも分からない場所に飛ばされてしまうとしたら……? 最悪、時間軸も違うとしたら……?
考えられた可能性に息を呑んだ。
『穴』はまるで意志を持っているかのように、突如として自らの幅を広げて私たちの方へ向かって近づいてきた。
逃げきれない。
一瞬にしてそう判断した私は、救世主と天使ちゃんを自らの魔法で『穴』から遠ざけるために魔力で吹き飛ばした。私の純粋な魔力は少し特別性だけれど、二人なら大丈夫だと言う確信があった。
せめてこの二人は守らなければ。
言い方は悪いが、私たち三人は換えが効く。
けど救世主達に換えはない。切り捨てるなら当然———
———ごめんなさい王子、おじいちゃん。
口にせず優先順位から外した二人に謝る。
でもだからと言って、そのまま『はいさよなら』なんてする気は微塵もない!
「うおっ!?」
青年が驚いたような声を上げた。すかさず振り向いた時———
———私は地面に仰向けで倒れていた。




