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だれかの箱庭 ~クレオメの夢~  作者: なぁさん
Chapter.——
26/26

青春の喜び

望んでいたのは『未来』。

『ねぇ』

『なんだい?』

『魔法と魔術って何が違うの?』

『本は読んでないのかい?』

『私には難解だったわ』

『…………』

『難解だったのよ』

『……読んでないでしょ』

『ええ』

『笑顔で言い切るんだね』

『これが好きな人もいるのよ』

『怖い人だね。君は』

『その怖い人を好き好んで追いかけ回していたのは、どこの誰だったかしらね?』

『僕には複数いたように見えていたけど?』

『……あなたは幾らかマシだったわ』

『それはありがたいね』

『ええ。光栄に思って?』

『……君ほど猫な人はそういないだろうね』

『そうでもないでしょう? 淑女たる者、猫を飼い慣らすなんて朝飯前よ』

『全くもって怖い話だね』

『そうかしら? こんな所だもの。私程度じゃ手も足も出ない方々はたくさんいらっしゃるわ』

『さすが貴族の御子息(ごしそく)御息女(ごそくじょ)様方だね』

『あなたもその一人でしょうに』

『いやはや、肩身が狭いよ』

『自分で蒔いた種よ。受け入れなさい』



『もちろん! 唯一無二の綺麗な花が約束された種だからね。大切に育てるさ』



『……………………最後まで愛なさい』


『もちろんそのつもりだよ』

『はっきり応えるのね』



『じゃなかったらここにはいられないだろう?』



『……………………魔法と魔術って何が違うの?』


『あぁ……ハハッ、ごめんごめん』


『……………………』


『ごめんて。ざっくり言うと「過程」が違うんだよ』

『過程?』

『そう、過程』

『なら「結果」は同じなの?』

『うーん、わからないかな?』

『わからないの?』

『こればっかりは各々の感じ方次第なのさ。同じだと言う人もいれば、違うと言う人もいる』


『あなたは?』

『違うと思う』

『それはなんで?』

『魔法は「想い」で、魔術は「叡智」だからさ』


『どういうこと?』

『過程の話さ。魔法は頭で想像するという過程を使って結果を出すんだ。一方、魔術は先人達が魔法を使う為に生み出した叡智で結果を出す。例えばさ。コップに一杯分水を満たしたい時に頭でその光景を思い浮かべるか、言葉や図を使って水を満たすか……魔法も魔術も、使う魔力は同じでもやることは違うんだ』

『でもどっちでも水は満たせたわ』

『その水を満たせない人の為に魔術はあるのさ。魔法はセンスの世界だからね。やれと言われて出来ていたら、魔術という技術はここまで発展しなかっただろうね』

『魔法ってすごいのね。きっかけになっちゃうんだもの』

『そうだね。でも魔法には限界はある。完全にセンスの世界だから個人差がありすぎるんだ。かの英雄……魔女セビア含めて、過去の魔法使い達には「劣化を遅らせる魔法」は作れなかったようにね。魔術は先人達の知恵を言葉や図にして使い補うことで魔法を超える事ができるんだ』

『うーん…………よくわからないけどつまり、あなたはセンスがなかったから魔術師になったのね?』

『はっきり言ってくれるね……』

『……言い過ぎたわ。ごめんなさい』

『いや、実際そうだしね。謝んなくてもいいよ。それにね? 魔術は僕にとっては「願い」でもあるんだ』


『願い?』



『そう。願い。君との未来を叶えるための願いさ』



『っ……………………』


『……なんか言ってよ。僕なりにカッコつけたんだけど。…………あっ。もしかして惚れ直してくれた?』


『……………………』


『いたた。つねらないでくれよ』


『……………………うるさい』


『君が原因なんだけどね』

『……もう行くわ』

『そうかい…………離さないのかい?』

『………………』

『冗談だよ…………レディ、御手をどうぞ』

『……様になっているじゃない』

『君のおかげだよ』


『……………………光栄だわ』

過去に、あなたとの『今』という未来。

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