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アタシにはないモノ
私へ向けられたあの人の熱を、はっきりと覚えている。
けれど、その熱を再び感じることはもうないだろう。
その熱を受けてあげる事はもうできない。
私はあの人へ上手く返せていただろうか。
いや、できていなかっただろう。
いくら気持ちがあろうとも、言葉にしなければ伝わらないと知らなかった。
理解できていなかった。
今さら気がついても、もう私の口は動かない。
あなたへ言葉を……愛を伝えることができない。
私はあなたに何を残せただろうか。
結局、最後まであなたの前で素直になれなかった。
せめて、あなたのこれからを祈らせてほしい。
私はわがままだ。
あぁ、神様。
もしも私の願いを聞き届けてくださるのなら、今一度、私に機会をお与えください。
愚かな私に時間をください。
あの人に私の言葉を伝える時間をください。