ハベル夫婦の新婚生活
家族四人で街を観光して、夕食とお風呂屋の後にカイリとマリナをそれぞれの現住居へ送ると、リクとアナはどちらともなく手を繋いで宿へ。
観光中、カイリとマリナはいつものお喋りを炸裂させて、するする親達の本音を聞き出して、そうだってお母さん! だってよ、親父と親にボールを投げまくった。
なので、リクもアナもお互いの気持ちをしっかり把握したし、子供達にとても祝福されていると実感している。
部屋の鍵を閉めると、どちらともなく寄り添って、リクがアナを強く抱きしめて、あとはよくある新婚夫婦の甘い夜——……。
そのはずが、途中でアナが恥ずかしさの限界を超えてしまって、彼女がカタカタ震えながら体を丸めたものだから、リクは青ざめた。
「す、好き過ぎて、は、はず、恥ずかし過ぎます……」
「……」
背筋が冷えて、大事なところもしおれたリクは、妻のこの様子が嫌悪や恐怖でないと理解したので、顔色を良くして強行することにした。
「ちよっ! ちょっとリクさん! 息が止まって死んでしまいます!」
寝台から飛び出したアナは夫から逃げて、どこか隠れる場所はないかと一瞬考え、狭いこの部屋にそんなところはないと観念。
「まあ、まあ。大丈夫、大丈夫」
見られるのが恥ずかしいから布団の中でと頼まれたのに、妻は現在布団の外で絶景なので、理性はとっくに消えているリクは、妻を壁へ、壁へと追い詰めていく。
壁に背をつけて、色気を感じる夫の視線から顔を逸らしたアナの目の前にムカデがこんばんは。
「……いやぁあああああ! ムカデぇえええええ!」
とても不幸なことに、ムカデはアナの絶叫で彼女の肩の上に落ち、彼女は恐怖でそれを払った。
ヒュッと飛んだムカデは、不運なことにリクの大事なところへ乗り、驚いたムカデはそこに噛みついた。
こうして、二人の甘い夜はおあずけとなり、それはリクの痛みが完全にひいた一週間後へ。
自分のせいでごめんなさいと何度も何度も謝り続けた妻に、リクは何度も「君のせいではないから」と告げていたけれど、甘美な夜には「逃げたらまた痛いことが起きるかもしれないから少し我慢」みたいに、ムカデ事件を利用して妻の逃亡を阻止。
こうして、周り道をしながらも本物の夫婦になったリクとアナの本当の新婚生活が始まった。