6.おっさんいじめ冒険者にざまぁ!
ざまぁ職人ことリットーゲイルは、怒りを速やかに鎮めると、いつも通りの穏やかな顔に戻った。
そして、何事もなかったかのようにゴソゴソと野草を食べはじめたのである。
実はこの行動は、計算され尽くしたものだった。
ターゲットである追放加害者チームの視界にギリギリ入りつつ、かつわざとらしく感じない【ざまぁゴールデンライン】という場所にいるのである。
これは本来なら、一朝一夕ではなし得ない技術である。ざまぁ職人になるには、一流のざまぁ職人に弟子入りして、おおよそ5年はこのゴールデンラインの習得に時間を費やす。
しかしリットーゲイルは、生まれながらのざまぁ職人である。天賦の才能によって本能的に【ざまぁゴールデンライン】を見極めているのだ。
そして、その緻密かつ天才的な計算や見極めに気付くことなく、ターゲットである追放加害者たちはリットーゲイルの存在に気が付いた。
「おい見ろ……あそこにいるウマ、一角獣じゃねーか?」
どうやらターゲットたちは、リットーゲイルがユニコーンであることに気が付いたようだ。
ユニコーンホーンは大変貴重な逸品であり、たとえ買い叩かれたとしても、3代あとまで遊んで暮らせるほどの金が手に入る。
しかし、それ以上に魅力的なのはユニコーンそのものを手に入れることだ。
もし、ユニコーンに認められ従えることができれば、一流の冒険者として冒険者街で名声を得られるだけでなく、大きな病気を抱えた時にも助かる可能性が高い。
ターゲットたちはどうやら、勝負を挑んで認めさせる方を選んだようだ。
最初に見つけた戦士は、堂々と剣を掲げてざまぁ職人に宣言した。
「俺様の名トマム! 冒険者街に名を馳せる男だ、尋常に勝負!!」
このあと、ざまぁ職人と戦士は戦うのだか、こういう表現で十分だろう。
カンカンカン、ボコッ
「ごは……うぐぐぐぐ……」
あえて説明文を入れるのなら、全く話にならなかった。ということである。
最初の男がやられると、次の戦士が名乗りをあげた。
「コイツ……左利きか!」
「やるじゃねーか一角獣。だが俺様はそのゴミより50倍は強いぞ?」
カンカン、ゴンッ
「はが……ほご……ふぐ……」
あえて説明文をいれるのなら、最初の男より弱かったということである。
戦士が立て続けにやられたため、ターゲットたちの顔からは笑みが消えた。
「こ、このウマ風情が!」
「調子に乗んなよ!」
「袋叩きにしてやる」
カンボコ、カンカンドコッ、カンドドド……ボカ!
「うぎゃあーーー!」
あえて説明文を入れるなら、3人で束になったところで、ざまぁ職人の敵ではないのである。
「ば、バカな……俺たちは……Bランク冒険者チームだぞ……がは……」
さて、いい塩梅でBランク冒険者たち(一般的にはベテランチーム)を咬ませキャラのように粉砕したざまぁ職人だが、じっと男たちのことを見た。
『このにおい……さては君たちは密猟も日常的に行っているね』
「だったら……何だってんだ……ウマ!」
悪態をつく冒険者たちを見たリットーゲイルは、ゲスコーンの表情になった。
『い~けぇ~~なぁ~~~いぃ~~~~ねぇ~~~~~?』
間もなくダンジョンの中では、「やめてー!」という声や「ひぃぃぃぃっ!」という悲鳴が次々と響き渡った。
それから1時間後。
おっさん荷物持ちは、自宅で子供たちと一家だんらんの時を迎えていた。彼らは会話を楽しんでいたが表からドサッという音が聞こえてくると、オッサンは不思議そうな顔をしながら立ち上がった。
「ちょっと、様子を見て来るよ」
表に出てみると、そこには先ほどのBランク冒険者たちが身につけていた鎧や武器、更に路銀や衣服に至るまでの全てが固めて置いてあった。
オッサンは、なんだこれはと言いたそうに突然現れた衣服類を眺めていたが、その中に書置きがあることに気が付いたようだ。
【生ゴミのなかに、もやしてはいけないモノがまじってたからかえすよ】
オッサンは誰の仕業か、すぐに理解したようだ。
「なるほど……ところで、中身はどうなったんだろう?」
ちょうどそのころ、中身たちはパンツ1丁で冒険者街を徘徊していたという。
リットーゲイルの救済者 4人(?)目:パンツ1丁になった密猟冒険者たち
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