入植
誤字の指摘、有難うございます
修正いたしました
カレーを食べた翌日
周囲の柵も仮設住居も作られているため本工事に入る予定である
「それでウディッツ。上下水は設置するか決まったのか?あとからの設置は難しいと思ってくれよ」
ウディッツに念押ししておく
後から付けてくれと言われても面倒である
「予算が降りないんだよ。想像が出来てないんだろうね・・・従来の作りでいくしかないかねぇ」
ため息交じりに答える
「そうか、なら俺の出番はないな。拠点作りの方をさせて貰おう」
我は、ようやく拠点作成に入るのである
拠点へ移動する
材木のストックが残り1本ではないか
追加で30本ほど積んでおく
外壁の一部を壊して川に水車を作って水を引き込むので水路を整備
ほむ
少し高くして、ため池にしてみるであるか
水車は・・・ガンツに頼むか
設計書を渡せばよかろう
水路を通って溜池へ流してから建物の上に揚げて自然落下で給水であるな
溜池からあふれた水は水路を通して川へ戻す
次にトイレであるが、まず設置場所から溝を掘る。
20cmくらいの幅で中はツルツルにしておくのも忘れない
勾配は1/50で良かったであるかな?50m先で1m下がる程度の角度である
厨房と風呂の場所にも同じ溝を掘っていく
三本の溝を一つの大きな溝になる様に掘り・・・このままでは地下に潜ってしまう
むう。
スライム方式を考えるであるか
大き目の沈殿槽に下水を貯めて、汚物をスライムに処分させる
上澄みを浄化石の入った槽に入れて底から水を流す
浄化槽から出た水を汲み上げて川に戻す?
最初から大分、簡略化されてしまったであるな
スライム次第というのも気になるであるが・・・・
そういえば試しに作っていた便器はどうなったであろう
焼きを入れてから放置していたである
我は工房用の建物に行きドーム型の土壁を壊す
中から出てきたのは白く艶のある便器とタンク
日本での形と変わらないように見える
良い出来で自画自賛。我、凄い
作ってあった金具類と組み合わせて水を入れてみる
漏水はない。ばっちぐーって奴である
レバーを動かして水が流れることも確認
善き善き
後で量産しておこう
立てる建物の部屋割りをチェックしつつ地面を固めていく。べた基礎というやつである
排水溝は蓋をしておいて接続箇所には筒状の硬化した土を伸ばして置く
拠点にする建物は地上3階建て塔を付ける予定
屋上に上水用のタンクを設置するのは必須である
大まかに土魔法で形を作っていく
壁や廊下は石作りで問題ないけど部屋内は木の床が良いので、これもガルドに丸投げ
厨房などの水回りは勾配を取って排水も準備しておく
天井までの高さは4m取っておこう
1階の間取りを作り終わったら2階、3階へと続け、屋上に貯水箇所をつくる
厨房から延びる煙突に臭気用の筒を添わせておく
こんなもんであろ
苦労したが、もちろん各階を作っている際に水が通る穴も作ってあるぞ?
塩パイプが、どれだけ便利かよくわかるというものである
貯水箇所はゴミなどが入らないように屋根を付けて、点検用の通路を作っておく
回転部品はメッツ達3人に丸投げで
本館とつながる塔は、高さ10mとする
最上階に露天風呂を作るのである
ここの給水は魔法で行うつもり
その下に物見やぐらを作れば良かろうなのだ
外観が大分出来たので、細かい装飾を入れていく
ヨーロッパの建物をイメージして彫刻してみたり、変な像を置いてみたり
少し楽しくなってきた
便器とタンクは10セットほど魔法で作って焼成中である
拠点には6セット付ける予定なので5セット残るが予備で良かろう
「近くで見ると圧巻だねぇ・・・・・」
アルカが後ろに立っていた
「アルカか、なんか用か?」
「ああ、後続がそろそろ到着するから呼びに来たんだけど・・・・ねぇ、中見てもいい?」
許可すると、もろ手を挙げて拠点へと入っていった
窓も扉も何もつけていないから、ガルド案件であるな
暫くするとアルカが戻ってきたのであるが、何やら考え事をしているようである
「エクス君、凄い建物だけど・・・・トイレが無いよ、この建物。これじゃ欠陥建物になっちゃうよ?」
最初、何を行っているのかわからなかったであるが
この世界のトイレは汲取り、いわゆるポットン便所である
穴の開いた板に座り用を足すのである
今の状態では床から筒が生えているだけであるからトイレには見えないのであるな
納得である
我は工房にアルカを呼び、サンプルで作った便器のセットを見せる
「あ、コレ。前に作っていた奴?コレに座るの?木のクッション?・・・で用を足したらコレを動かす?」
魔法でタンクに水を入れて、アルカに試させる
レバーを動かしたとたんに水が流れ出ていくのを見て、目と口を開けて驚愕していた
「エクス君!これって・・・」
「試しに拠点に設置してからだな」
後ろ髪惹かれるようなアルカを連れて地下道を通り村へ移動する
丁度、後続部隊が到着したようであるが・・・・少なくない?
アルカに聞くと、一度に入植すると大変なので何回かに分けて移るのが常識らしい
今回のが、第一次入植者だそうだ
その集団の中に見た顔があったので声を掛ける
「メッツ、テスタルド、アイネ。よく来てくれた」
「「「エクスさん!」」」
その声に他の者もこちらを見る
「「「エクス君!」」」
『輝く夜明け』『希望の朝』とレナトゥスである
「みんなも無事到着お疲れ様。先に報告を済ませた方がよさそうだな。ウディッツがこっちを見ている」
軽い敬礼をした後、駆け足でウディッツの元へ向かっていった
先遣隊が手分けして入植者を案内して仕事を振っていく
『輝く夜明け』、『希望の朝』、レナトゥスは揃って狩人ギルドに編入となった
メッツ達三人は我の直轄となっている
「ガンツ!手が空いたら拠点の内装や建具を頼む」
おう!と返事を貰ったので気長に待つとしよう
「エクス!紹介するよ、うちの魔術師達だよ」
「名前くらい言ってくださいよ・・・・エラといいます。水魔法と風魔法が使えます」
20代前半でローブを着た女である
「メイソンです。火魔法と土魔法を使います」
成人したてのような青年である
瘦せていて魔術師のイメージそのものであるな
「エクスだ。ようこそ開拓村へ。歓迎するよ」
「この二人に仮設風呂の入れ方を教えておいてくれ。頼んだよ」
さっさと戻っていくウディッツ
「すいません・・・・」「ご迷惑を掛けます・・・・」
「別に二人が誤ることじゃないさ。それじゃぁ風呂場へ行こうか」
二人を連れて仮設風呂場へ移動
「「ひろ・・・・何ですかここは?」」
「風呂だね。そこに水を貯めて火魔法で湯にする。終わったら魔法操作で水を出して、掃除をし終わったら風魔法と火魔法で乾燥する」
「え”・・・・この量を・・・ですか?」「どんだけの魔力がいるんだ・・・・」
「回数なんかはウディッツと打ち合わせしてくれ」
「すいません。試しに一度やって貰えないでしょうか?」
「ん?ほい」
風呂内に入っている水を魔法操作で壁の上から排水
近くにあったブラシで浴槽を掃除して水で流して排水
風魔法と火魔法をつかって水けを取る
「これで掃除と乾燥は終わり。次に」
水魔法で浴槽に水を貯め火魔法で湯に変える
「温度が下がったら、もう一回火球を入れればいいかな」
エラとメイソンは呆然としている
解らなくなったら声を掛けてくれればいいよ、とは言ったのであるが聞こえているかは不明である
広場に戻るとメッツ達3人が所在なさげに立っていた
「待たせてすまない。君たちの仮部屋に案内するよ」
そういって地下道に向かう
「え?あっちの集団部屋じゃないんですか?」
おどろく三人を連れて拠点側へ移動
さっき建てた拠点を見てあんぐりしている
「あっちはまだ内装が終わってなくてね。こっちの仮説を使ってくれ」
そう言って蒲鉾型テントを指さす
「内装が終われば向こうに移ってもらうからね。それと必要な工房はどんな感じがいいかな?」
「・・・・・・・・・工房・・・ですか?」
「うん、工房。アイネは鍛冶もするだろうしテスタルドも特殊な加工がいるんじゃないか?必要なものが解らなかったから、まだ揃えていないんだよね。だから、必要なものを教えてくれるとありがたいかな」
3人とも恐れ多いと遠慮していたが、ひいては全て自分の為だと言って了承させた
「なーんとかしてよー、えくすくーん」
地下道から聞きなれた声が聞こえてきた
泣きついてきたアルカとメッツ達3人を連れて村に戻る
すると先遣隊と入植組が対立している?
『輝く夜明け』『希望の朝』とレナトゥスは宥めようとしているみたいだけど・・・なんだコレ?
「何の騒ぎだ?なんか対立している様だが」
「エクスかい・・・・まぁいろいろあってね・・・・・」
ウディッツが疲れた声で答える
「穏やかじゃないね。何がどうなってるのか、落ち着いて話せる奴はいるか?」
「「すいません。私たちが原因なんです」」
たしか、エラとメイスンの魔法使い組であるな
話を聞くと魔法で出せる水の量、火魔法の調節などで魔法で風呂を沸かすことが難しいと分かったらしい
ウディッツに相談したところ、出来ないなら回数を減らしていくしかないという結論になった
それに反対したのが先遣隊の連中
風呂と食事が仕事のあとの楽しみだったため、今まで通りの風呂を要求
入植者も噂を聞いていたらしく士気が低下してヤル気がなくなっていると
「はぁ・・・・くだらない。くだらないくだらないくだらない!」
「え・・えくす・・くん?」
後ろにしがみついているアルカが気味の悪い物を見る目で離れていく
「まず、エラとメイスン!お前たち二人が悪いわけじゃない!不慣れな中、がんばってくれてありがとう。これから、ゆっくりと慣れていけばいい」
「「エクスさん」」半泣きだった二人が、とうとう泣いてしまった
「先遣隊に入植組。仕事の疲れを取る為に風呂に入りたい。その気持ちもわかるし気持ちの持ちようも違うのもわかる」
周囲にいるものも頷いている
「確認するぞ、ウディッツ。魔法師を頼むときに仕事内容と魔力量の話はしたんだろう?」
黙っているウディッツ
「テミス。村人が声をあげて問題提起しているぞ?なぜ動かない?」
こちらも黙っている
「国に仕えているかもしれんが、仕事はしてもらいたいね。”諜報員”ではなく”覗き屋”には無理だったか?」
「吠えてくれるじゃないか。この私を覗き屋呼ばわりとはね」
「ほう。では、対処方法を指示していただけますかな?狩人ギルド長様?もしくは村長様が支持するのかな?」
「エクス・・・・すまん。俺たちは・・・」
「テミス、謝る相手が違うだろう?村長なら、村を守れ、村民を守れ。皆の声を聴き着地点を探れ。強引な手を使うのならば説得しろ」
「・・・・・・・確かに、俺たちの落ち度はあっただろう。皆、すまん!俺に、俺たちに少し時間をくれ。不便を掛けるが頼む!!」
テミスは村人たちの前で頭を下げて頼み込んだ
「そりゃ、開拓しに来た村で風呂なんて夢の話だからよ」
「普通なら泥と垢で汚れるのは当たり前だからな・・・」
どうやら納得してくれるものもいるようである
「わかったよ・・・対策を考える。時間をおくれ・・・・」
「なぁ、ウディッツさんよ・・・・悪いと思うなら、頭を下げるんじゃないのか?それとも何人も指導してきたお偉いさんは頭を下げないのか?(国の機関も碌なもんじゃないな、消すか・・・・・・)」
最後にぼそっと本音が出てしまった
「っく!・・・・みんなの意見、がわかった。村の責任者を集めて、再度協議するので、今しばらく猶予をお願いしたい」
ウディッツも頭を下げたことで村人たちも落ち着いてきた
「だな。儂からも頼む。暫く我慢してくれい」
「わ・・私も!お願いします!!」
ガルド、アルカも頭を下げる
ロレッタ、プロセ、ゲリヒトも頭を下げている
「みな、すまん。よろしく頼む!」
我も頭を下げておく。責任者じゃないんだけどねー
一応納得したのか集団は解散していく
残ったのは責任者と我、エラとメイスン、レナトゥスである
「アルカ!エクスを巻き込んだのは良い判断だッたよ。エクスも機転を利かせてくれて助かったよ」
我は黙ってうなずく
エラとメイスン、レナトゥスは驚いてこちらを見ている
「村長をはじめとする管理組と村人の対立を、流れ者が解決するわけにはいかんからな。ああいえば管理者側も頭を下げやすいし村人側も妥協しやすい。これから開拓するのに対立は避けないとな。ただ、二人に言ったことは本心だぞ?」
「「ありがとうございます。救われた思いです・・・・」」
二人はまた泣き出した
「はぁ、私もヤキがまわったねぇ。普通の魔術師が出来る範囲を見誤っちまったよ。エラ、メイスンすまなかったね」
「しかし予想以上に皆、風呂にはまっておりましたな。早急に対策を立てねば同じことの繰り返しになります」
テミスも危機感を持っているようで何よりである
「ガルド。ギルド館の施工はどれくらい掛かるんだい」
「それは通常通りの設計でいいのか?新しい物を試すとか言っとらんかったか?」
「場合によるよ」
ガルドは少し考えて
「今まで通りの作り、と言っても風呂があるわけだが。早くて一月だな」
「やれやれ、そんなもんだろうねぇ・・・さて、どうやって説得するか・・・・」
頭を悩ますウディッツ
「あの・・・ウディッツ?この際エクス君に指名依頼をだしてはどうでしょうか。拠点の建物が出来てたんですけど・・・・」
アルカが申し訳なさそうに言う
午前中に拠点の中を見学させてもらったら、しっかりと作られていて問題ないように思えるとのことを説明する
しかし、それはガルドたちの仕事に横やりを入れることとなる
「確かに『内装と建具』を頼むと言っておったのう。建物自体は出来ているのじゃな?』
ガンツが確認するとアルカが頷いている
「ウディッツ、ここで悩んどってもしょうがなかろう。一回エクスの拠点を確認にいかんか?エクスも良かろう?」
まあそうなるであろうな
我は頷いておく
連れだって拠点へ移動するが、既に辺りは暗くなっているため光魔法で明かりを出しておく
「なんじゃこりゃぁ!いつの間にこんなもん作っとったんじゃ!」
「今朝だな。確認するなら明かりをつけるぞ?」
我は室内に明かりを飛ばしていく
うん。これで大分明るくなったであるな
それそれが拠点内を見て回る
ガンツの質問責めには少し参ったが、理解は出来たようである
「ウディッツ、もうこれで良いんじゃねぇか?ギルド館だけでも作っちまおうや」
「しかしだね、ガンツ。ここは開拓村なんだよ。エクスだけに仕事をさせるわけにはいかないよ」
「頭かてぇな!こういったのは適材適所ってもんだ!てめぇの、やっすいプライドで村人に負担を掛けるわけにはいかねぇ!」
「・・・・・・・エクス!ギルド館の建物にいくらかかる?予算を言いな」
ウディッツが額に手を当てている
「それは上排水込みか?どこまでするかにも拠るが」
「そうだね・・・・お前のいう『上排水』と『下水処理』、『風呂』は当然だけど『トイレ』も欲しいね。最大でいくら必要だい?」
「特別特価で大金貨3枚でどうだ?あとは『浄化石』を5樽ほどと下水用のスライムを拠点用に融通してもらいたい」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?それだけ?」
「内装や建具はガンツたちに頼るしかないからな。そっちに予算は回してやるんだな」
「ふん!気を使いおって。拠点の内装と建具はサービスでやってやるよ」
ガンツの言質もとれたので良しとしよう
「明日は馬鹿二人の処刑日だから忘れるなよ?」
「そういえばそうだったな。朝から移動せねばならんか・・・・」
「まあ形になるまで仮設風呂の湯は入れてやるよ」
今夜はこれで終わりにするである




