村作
「あんたがエクスか?俺はガンド、土木を生業としている」
「ああ、エクスだ。ようこそ開拓村へ」
小柄でがっしりした体形で髭が腹のあたりまで伸びている
まさにドワーフ
ブラックサンタ以外に初めて見たである
「早速なんだがな、あの堀と建物は、お前さんが作った物と聞いたんだが相違ないか?」
「ああそうだ。あと、あそこの地下道もそうだな」
それを聞いて破顔するガンド
「そうかそうか、良い腕をしている。手伝いを頼むかもしれんがよろしく頼む」
「必要な時は声を掛けてくれ」
握手をしてガンドとわかれる
開拓民第一陣の土木作業隊が着いたのである
ウディッツ達3人は既に数人引きつれて指示をしているみたいであるな
先ほどのガンツは数人引きつれて、荷馬車へ向かっている
斧や鋸を取り出して・・・って今から樹を斬るのであるか?
森へ向かっていくガンツを呼び止める
「ガンツ!今から樹を斬るのか?」
「おうよ!何事も材木が無けりゃ、何も出来ねぇからな!おめぇら先行ってろ!」
オウと答えて全員、気合十分である
早速とばかりに森に入っていく
「あー気合が入っているとこ悪いんだが、この場所を作ったときの樹があるんだよ。どれくらい必要なんだ?」
ガンドはこっちをじっと見ているが、しばらくしてため息をついた
「ウディッツが『底なし沼みたいな奴』っていていたが『空間収納』のスキルをもってやがるのか」
それだけで判断したのか?
我はその問いには答えんぞ?
「わかった、とりあえずアレくらいの樹を10本ばかり出しといてくれ」
指された樹をみて同じくらいの物を空いている場所に10本並べて置いていく
「自分で言っといてなんだが、こんだけのモンが入ってたのかよ・・・・サジェス以上の使い手かよ・・・・」
天を仰ぐガンツ
「サジェス?誰だ、それは」
「王国お抱えの大魔導士様だよ。若くして頂点に上ったもんだから鼻っ柱が強い娘っ子さ」
いつの間にか近寄ってきていた女が答える
「ウディッツか。その頭でっかちのバカ女がどうかしたのか?」
「さっきも言ったろ。鼻っ柱が強いから自分より優秀な奴にちょっかいを掛けたがるんだよ」
「そういうこった。ここにも来るかもしれんな」
面倒な奴であるな
「面倒だと思わないでおくれよ。私たちも隠蔽してるけど、人の口に戸は立てられないだろ?」
「そうか・・・王国自体を消す方が早くないか?空から星を落とせば一発だぞ?」
ギョッとするガンツ
「止めとくれ。あんた等ならできそうだけど、絶対にやるんじゃないよ!」
ウディッツが必死に止めてくる
「大丈夫だ、一瞬で蒸発するから恐怖など感じている暇もないからな」
「おいガンツ!絶対に言うんじゃないよ!こいつは、やりかねないからね!」
「・・・・・・みてぇだな。なら木材を出してもらうにも人目が付かない場所があれば・・」
「なら、俺の拠点に置いておくから荷車で運び出すか?」
「そんな場所が・・・あの地下道の先か?・・・・一回確認しよう」
我はガンツを連れて地下道をとおり拠点へ着く
なぜかウディッツもついてきているが
「この辺りに積んでおけばいいか?」
出入口の近くの場所を指す
「これだけの広さに、土の壁が全面に・・・・」
「言ったろ、こいつらの能力は底なしだよ。想像の範疇に収まらないよ」
「何日掛けて、作ったんだ・・・・こいつら、だと?ウディッツ!エクスみたいなのが他にも居るのか!?」
「確認できたので2人。一人で街を殲滅できるだけの力を持っている様だね。それと、ココを作ったのはエクス一人で一刻ほどだよ」
しばし固まるガンツ
「おいおい、いくら何でも馬鹿にしすぎだろう。この規模の整地を一刻?」
「・・・・・少し目を離したら、森が消えて土壁がそそり立つんだ・・・・・・・・・見ていても信じられんよ」
「そ、そうか・・・・・」
二人で遠い目をしている
我はその間に20本ほど転がしておくのであるが
「ガンツ!これでいいか?」
「うぉ!?お、おう!ここで枝打ちして加工してから持っていく」
「なら樹が少なくなったら補充していくから、余分になりそうなら教えてくれ」
「わかった」
村に戻ると、木こり連中が既に2本切り倒して加工を始めていた
そのうちの一人がこちらに気付いた
「親方!こっちの樹はなんです?儂らが戻ったときに置いてあったんですが」
10本ほどおいておいた樹を指しながら聞いてくる
「ここを作るときに切った樹らしい。先にこっちを加工するから、森の奴らにキリが良い所で戻る様に言ってくれや!」
「わかりやした!おい!」
別の人間に声を掛け、森へ伝えに走らせる
「あの地下道の先に保管されているから、此処のが終わったら移動するぞ。全員に周知しとけ」
「うす!」
まぁ、土木は彼らに任せておけばよかろ
「あ、エクスくーん。ちょーと手伝ってほしいんだけどー」
アルカがやってきた
「全員の食事を作らなきゃならないんだけど竈が足りないんだよね。何とかならない?」
ああ、そういえば村側に厨房を作ってなかったであるな
「どこに作ればいいんだ?仮設で良いんだろう?」
連れていかれたのは村の中央。広場となる予定の場所だ
近くには竈を作るのに手ごろな石も無いので作りようもないのであろう
周辺には大型テントや幌付き馬車が集められているが、わざわざ竈用の石を運んでくることは無い
「竈といったが、どのくらいの物をどれくらいほしいんだ?実際に使う者たちに聞いてみてくれ」
「それもそだね。ロレッタさーん!・・・きたきた。ロレッタさん、こちらエクス君。エクス君こちらはロレッタさん。パームの母親で開拓団の食事係を取りまとめてくれている人だよ」
「エクスだ。よろしく頼む」
「ロレッタだよ、よろしく。パームが凄い料理の上手い狩人が居るって聞いてたけど、えらい男前なんで吃驚しちゃったよ」
「まあ、世辞として聞いとく。それで何が必要なんだ?」
「そうだね、最低でも竈は4基欲しいかな。あと下ごしらえする台なんかもあればいいね。水はあの川からとればいいのかい?」
「水か・・・そうか、井戸もあれば良かったんだな。少し待ってくれ・・・・・」
地下水を探せるようなスキルは・・・もっておらぬな
川までは1Kmといった所か
我は土魔法で10m位の竪穴を掘り、川まで溝をつないだ。まあ用水路であるな
このままでは水がよどむので下流側も溝をつなぐ
川に行き溝の入り口に多数の棘をしたから生やしてゴミ取り用の柵にしてから用水路の上を土魔法で塞いでいった
排水側も塞いでいき竪穴周辺を盛り上げる
中を覗くと、うん、水が溜まっているようである
「大工に言って鶴瓶を作って貰えば何とかなるだろう。次は竈だな」
土魔法大活躍である
適当な高さに土を盛り上げて火が通る穴を作るだけであるので簡単に終わる
これを半円を描くように配置し、扇形の天井を作る
少し離れたところにテーブルを作り、表面はつるつるになるよう圧力をかけておく
これで衛生面も問題なかろう
「こんなもんか?井戸は仮設だから、あとで潰すからウディッツにそう言っといてくれ」
呆然と見ていたアルカとロレッタはコクコクと頭を振っていたので伝えてもらえるであろう
「エクス!」
今度はテミスであるか
「すまん。あのテントなんだが増産できないだろうか。せめて女性たちの分だけでもあれば助かるのだが」
蒲鉾型テントであるか?
「不届きものが居ないと言い切れんのでな。やはり簡易テントでは心もとないんだ」
まあ、夜中まで見張っておれんしな
「一人一室などは無理だぞ?場所がない」
「ああ、助かる。場所は取水設備の予定地を仮設住宅地としているんだそっちで頼む」
我はテミスについて取水予定地に行き蒲鉾型テントを・・・・面倒であるな
一部屋12畳くらいの部屋を10部屋、続きで作る
長屋のようであるな
これを上流側に2列、下流側に2列作る
寝るだけなら一部屋10人として400人寝れるのである。よかろ?
「ドアは着ている者達で作れるだろう?振り分けは任せるぞ?」
呆然としているテミスを置いて移動する
中央へ戻るとロレッタが指揮をとり数名の女性たちが食事を作っていた
そこに近寄ろうとする男達が邪魔で作業が進んでいないようでもある
我は竈と台を囲うように1mほどの壁を作る
「うお!」「なんだ?」
巻き込まれた男たちは、足を取られて地面に転がった
食事の準備をしていた女たちはほっとした顔をしている
「おうおう!これをやったのは、てめぇか!」
「俺たちが何者か知ってんだろうな!あぁん!」
我は、ため息をついて答えてやる
「はぁ、質問に答えてやろう。その壁を作ったのは俺だ。それと、お前たちのようなゴミを知ってるわけなかろう」
くすくすと笑い声が女たちから聞こえる
男たちは真っ赤な顔をして怒鳴り始めた
「てめぇ、良い気になってんじゃねーぞ!俺たちゃアフェットゥオーソでその人在りと言われた『流星団』だぞ!』
『その『流星団』に逆らったんだ!覚悟はできてんだろうなぁ!」
「らしいぞ、ウディッツ。次はアフェットゥオーソが壊滅することになるが?」
「冗談はよしとくれ。『流星団』なんぞ聞いたこともないよ。どっかの逸れ者か、ならず者だろうねぇ』
男たちの後ろに立っていたウディッツに聞いても知らんなら、あの街の者では無いであろうな
さび付いたブリキのような動きで後ろを向く男達に容赦ない拳が突き刺さる
一人はきりもみしながら吹き飛ばされ、残る一人は地面に突っ伏している
「アルカ!裏を探りな。徹底的に潰すよ」
「はいはーい。では、いってきまーす」
「それとエクス!」
「わかっている、焼却炉だな。高温に耐える奴がいいか」
「違うよ!牢屋だよ!なにを燃やす気なんだい!」
ゴミは燃やしてしまう方が良いのだよ?
我は少し離れた地面に直径4m深さ2mほどの穴をあけ、男達を入れると天井を格子状に組んだドームで覆う
出入口が無いので脱出は出来ないであろう
「ああエクス、助かったよ。あいつら女の尻を触ろうと近寄ってきて邪魔ったらなかったよ」
ロレッタを皮切りに、つぎつぎと礼を言われる
「あの手の馬鹿は何処にでもいるんだから、街をどうこうするんじゃないよ!」
「厨房の厄介虫みたいなもんだな。一匹見たら三十匹って言うだろう?やはり巣ごと焼いた方が・・・・」
「するんじゃないよ!!」
無理やり了承させられた
日も暮れてきて土方していた連中も戻ってきた
厨房の周りの腰壁が、ちょうどいい置台となって料理の乗ったプレートをそこで渡していく
受け取った者は思い思いの場所に座り、歓談しながら食べている
我も食事プレートを受け取って地べたに座り食べ始める
塩の効いた肉と野菜のスープに黒パンである
「よお、エクス。大活躍だったらしいな」
ガンツが話しかけてきた
「妙な奴らを捕まえたって聞いたぞ?」
「奴等なら、そこの穴にいるぞ?見たことあるか?」
食事を終えた男達が興味深げに穴の底で伸びている男達をみていた
「さっき見たんだが、先遣隊の中では見ない顔だったな。てめぇら!そこの穴にいる奴を知ってるか!」
周りにいた奴等に声を掛ける
その中の一人がこっちに来た
「俺はエリヤと言います。開拓団で経理を担当しています」
我はエクスと名乗り握手する
「彼らなのですが、ペールデンテの商業ギルドで取り立てをしていた者たちに似ています」
「ペールデンテの商業ギルドねぇ・・・・」ガルドが唸る
「そうか、参考になった。ありがとう」
「すこしでもエクスさんの役に立てたならよかったですよ」
エリヤは微笑むと元の場所へ戻っていった
「さて、どうするエクス」
「どうもせんよ。ゴミは焼却するだけだ」
「その前にゴミ箱に入れないと駄目だけどね-」
後ろから声を掛けてくる
「帰ったのか。ウディッツへの報告は?」
「これからー、エクス君にも参加してほしいってさ。ガンツもね」
ガンツと二人、アルカに付いていく
「揃ったね。それじゃ報告を聞こうか」
いつの間に作ったのか簡易ではあるが、しっかりしたつくりの小屋にウディッツは居た
あとはテミス、ロレッタ。見知らぬ男性が二人ほど
「はいはーい。まず馬鹿どもですがアフェットゥオーソとは一切関係がありませんでした」
その報告でウディッツがほっとした顔をしたようであるが、すぐに真面目な顔になっている
「あの馬鹿どもはヴォウとカプションといいまして、ペールデンテで借金取りをしていたみたいですね」
「商業ギルドとのつながりは?」
「おお、さすがエクス君!そこまで知ってたか。ペールデンテ商用ギルド長、アビデの子飼をしていたようで問題が起きたら揉み消してたみたいですね」
「その子飼がなんで、この村に?」見知らぬ男性Aが聞く
「ああ、エクス君への報復らしいですよ。アビデの逆恨みっすよ逆恨み。自分の立場がなくなったのは指名依頼を受けなかったエクス君の所為だって喚いてたらしいですよ。ほんと馬鹿っすよねー、指名依頼は断る権利もあるってのに」
テミス、ガンツ、ロレッタ、見知らぬ男性二人がこちらを見る
「指名依頼何て聞いていないな。俺は北の森で長剣虎を狩っていたんでな。そういえば帰りにイグノランテと会ったんだったか」
ガンツ、ロレッタと男性二人が”そういえば”みたいな顔をする
「会った時間と距離を考えても防衛には間に合わなかったすね。もっとも金貨5枚で街を守れって依頼は誰も受けないっすよ。商業ギルドは相場も知らないんすかねぇ」
「それでアルカ。商業ギルドはどうしたんだい?」
ウディッツがアルカに聞く
「そこはもちろん、本部に連絡済みですよ、証拠もつけて。私が開拓村の商業ギルドを仕切るんすから、喧嘩を売る相手を間違えたっすね」
「なら、今後は無さそうだね」
「本部に賠償金も請求してるっすからね。支払い能力が無ければ本部から取り立てるっすよ」
クスクスと笑うアルカ
周りはドン引きしている
「そういうことだから街への攻撃はするんじゃないよ!あとの二人にも伝えときな!」
「おいおい、ウディッツさんよ。人を狂犬みたいに言わないでくれないか?降りかかる火の粉を払っているだけだろう?」
「あんたは極大風魔法で火の粉を払うのかい?やるなら程ほどの力でやっとくれ!」
これには了承しておくのであるが
「では、あの二人はどうしましょうか」
「テミス!村長のあんたが決めな!」
「アルカ!商業ギルドへの引き渡しは?」
「必要ないっす。本部からカンプファン領の判決に従うそうっすよ。ちなみに罪状はこれっす」
アルカがメモをテミスに渡す
一読して男性二人に渡す
「プロセ、ゲリヒト。判決を!」
「「死罪が妥当かと」」
「まったく手間を掛けさせる・・・・ヴォウ及びカプション二名は法に乗っ取り処刑とします」
「それなら、領境でしないか?フォーゲソンにも伝えてな。ペールデンテの生き残りがそっちにも居るんだろう?奴らに酷い目に会ったものもいるかもしれんしな」
「民衆のガス抜きかい?えげつないね」
「アルカ!アビデって奴も同類何だろう?似顔絵と罪状を書いて処刑台に貼り付けておこう」
「にひっ!それ、いーっすねぇ。庇い建てした奴らも同罪に見られますしねぇ。一晩あれば余裕で出来るっすよ」
満面の笑みで回答してきやがる
「お前は、人の心を持っているのかい?やり過ぎじゃないか?」
「何を言っているんだ?罪を犯した者がどうなるかの戒めじゃないか。一罰百戒。皆の犯罪への抑止力となればいいのさ」
「「「・・・・・・・・・・」」」
なぜ黙る。男3人
「ウディッツ。エクスの意見も一理あります。ただ処刑するだけより被害者の救いになるかもしれません」
「・・・・・・・・・わかったよ。テミス、お前のやりたいようにやりな」
最終的にはウディッツが折れる形になった




