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説得

キヨネを送り出してからペールデンテに向かうのであるが追跡されているのである

街を出たのが日暮れだったので、すでに薄暗い

森に入り移動しているのであるが、ぴったりと後を着いてきている

「ウディッツ、ついてこられると迷惑なんだが?」


「おや、やっぱり気づいてたかい?私も年かねぇ」

「それは俺の感覚が鋭いってとこじゃないの?」

ニヤニヤして樹の陰からでてくる


「エクス・・・あんた、何者だい?」

「それはこっちが聞きたいね。ウディッツ、あんたこそ何もんだ?国の諜報、『騎士の誉れ亭』の仲間ってとこか?」

ウディッツの顔から表情が消える


「ギルドは国家不介入が原則だから、隠れ蓑にはちょうど良かったんだろう?」

「何のことだい?国の諜報ってのが、私となんの関係があるのかねぇ」


「大体さ、ありえないんだよ。国の領主同士の戦争で国の仲裁がないってのはさ。諜報が情報を集めて調査しているんだろ?」

「・・・・・・・・・・はぁ、勘のいい奴は嫌われるよ。いつ気づいた?」

「今回の件は、ほぼ難癖だからな。こんなことで戦争が起きたら拙いから、あんたが動いた」

黙ってうなずく


「ケンプファーで戦争準備がされてないのを確認したアンタはイグノランテを落ち着かせるために来たんだろう」

「・・・・・あの娘は、そそっかしいからね。やらなくていいことをして自滅しかねなかった」

「想定外だったのは、俺たちが単独で街を消滅できるとグランツが進言したことだろう?」

「そんな人間はいるわけない。・・・が、ハーピーを殺ったあんたなら・・・・やりかねないと思ったさ」


「それで?俺を追ってどうする?」

「私をイオラに合わせな!ペールデンテの何が気に入らないのか教えてもらいたいね!」

我は肩をすくめてみせる

「さあな。気に入らないのはイオラじゃなくてテスタロッサかもな。いや、フィーダの執念かもな・・・・・」

他にも取り込んだ奴らの恨みもあるかもな


「フィーダ?」

「追っても無駄だよ?イオラにはいつか会えるかもな」

我は光魔法で強烈な光りを放ち、ウディッツが目をつむった瞬間に次元潜宙に潜る

髪の先端だけ出して周りを視ながら、じっと潜伏する


辺りが暗闇と静寂に包まれている

「・・・ちっ、完全に撒かれたみたいだね。まったく・・・底が見えない小僧だよ」

ウディッツが立ち去り気配が消えるまで、このまま待つ



我は獣モードになって次元潜宙から抜け出す

雷鹿の角と背中から長剣を生やした虎の姿であるのだが、長剣はブラックサンタとの戦いで融解してしまったので無い。

長剣は流石に体液からは作れないのである


周囲の匂いを嗅ぎながら追手が居ないことを確認して森を駆け抜ける

やがて土壁が並ぶ場所が見えてきた

この辺りでいいかな?



我はナパーム樽を全て取り出し山積みにする

ああ、エクスの形になっているであるよ

ある程度の距離を取って火魔法を放つのであるが、トゥレライトがしていた複合魔法というのを検証してみるのである


まず、普通の火魔法。バレーボール位の球体

ボール系は大体同じ感じであるな

面白いのが光球では攻撃力がなく、闇球では当たった樹が枯れてしまった

地魔法は只の土の塊であるし、雷魔法はプラズマ球である


そういえば以前にトゥレライトが使っていたゴーレムは地魔法の派生魔法みたいである

試しにしてみたら出来たので間違いないであろ


複合で成功したのが二つだけであった

火+風+風 火災旋風

水+闇+風 吹雪

まだ組み合わせが出来るのであろうが、失敗するのだ


色々と試したいのではあるが今は置いといて

火災旋風をナパーム樽に向かって放つ


引火した油が巻き上げられ火災旋風が更に巨大になる

辺りの空気も吸い込まれていく

いまや、こちらの制御も効かず勝手に流れていく

ペールデンテへ向かっているのは偶然である


先回りをして土壁の上に乗る

内側のペールデンテ中央では、いまだに人が溢れており騒いでいるようである

我は光球を周囲に浮かべ火災旋風に吹雪の魔法を放つ


そもそも火災旋風って火が空気中の酸素を消費し周りから更なる空気を取り込むことで起きる上昇気流で、燃焼している中心部分から熱された空気が上へ吐き出されて旋風になる・・・だったか?

なので空気を冷やしてみたのであるが・・・・


・・・善き善き

段々と力が弱くなり火災旋風は消えてしまった

街中から聞こえる歓声


我は土壁の外側に降り、今いた場所に雷魔法で雷球を打ち込む

着弾と同時に爆音と凄まじい光が辺りを包み、衝撃で土壁が砕け散る

続けて雷球と火球を連続して打ち込み土壁が削れていく


10発ずつ打ち込んだであろうか

もうよかろ

我は光球を消して暫く休憩である


月が真上にきたころにペールデンテを囲う土壁を消し去る

いや、轟音を立てて崩れていく


もうもうと立ち込めた土ぼこりが収まると、土壁は消え土砂が一面に広がっていた

もちろん街道の上にもである

あとは、どう出るかな?

我はケンプファーへ戻るのである





ケンプファーへ着いたのは夜明け前である

門を通らずそのまま街へ入りギルドへ向かう


ギルド併設の酒場に入るとウディッツがカウンターにいた

「どうやら、何とかなったみたいだね」

「先延ばししただけだろ?」

我は果実水を注文する


「イグノランテからの連絡で聞いたよ。炎の竜巻が襲って来たのを一人の魔導士が止めてくれたんだと。そのあとも雷や爆発の音が響いて恐ろしい思いをしていたら、こんどは囲っていた土壁が崩れ去ったってね」

「まだ封鎖を解いただけだということを忘れるなよ?土壁がないということは次は当たるぞ?」


「・・・引いてないのかい?次もあると」

「支払の補償もされてないのでな。言っただろう、先延ばししただけだと」

「はぁ・・・・まいったね。踏み倒したら、もう庇い様がないよ」

そういってウディッツは酒場を出ていった




我はちびちびと果実水を飲みながら夜明けを待った

本来であればペールデンテを消す日であるのだが


ウディッツとグランツがさえない顔をして酒場にやってきた

「資金集めに失敗したようだな。勝手に解除したのだから支払う義務はないとか言ってるのではないか?」

「・・・・そのとおりだよ。むしろ恐喝をされたのだから慰謝料を請求するだとさ」

「ペールデンテの商業ギルドが、あそこまで馬鹿だとは思わなかったぞ・・・」


「想定内だな。それがペールデンテの回答なんだろう?」

「おま・・わかってたのか・・・」

「次は俺に防衛しろとか言ってくるんじゃないか?ま、お断りだがね」


「お前の言う通りだよ。商業ギルドはエクスに指m

「エクスに伝えられたらいいな。どこにいるかもわからない狩人に指名しても直ぐに動けないだろう?」

グランツには皆迄言わせない


「俺は何も聞いていないし、北の森でラングシュワートティーガーを狩る予定なんだ。ペールデンテの防衛は自分たちで何とかするんだな」

「国からも出資はむずかしいしねぇ・・・せめて領主が生きていれば何とかなったんだけどねぇ」


「昨夜は暴れたらしいから今日の夕暮れまでは二人とも寝てるだろうよ。イグノランテによろしくな」

ラディッツなら推測できるであろ

「わかったよ、グランツ!緊急連絡だよ!」

北の森へ行こうかね





昼過ぎまで狩をして長剣虎を5体と雷鹿を8体仕留めた

急ぎ必要なのは長剣部分であるので必要な部分のみ解体しておく

5対の長剣が手に入ったのである


我は空を飛びながら下を見る

ペールデンテからケンプファーへ続く街道を集団が歩いている

その集団は荷駄も馬車もなく徒歩の集団である

どうやらウディッツは理解できていてイグノランテに伝えたであるな


我は街道の少し先に降りて、近くの石に腰かけて待つ

「急げ!出来るだけ離れるんだ!子供や年寄りは手を貸してやれ!」

集団に激をとばしながら歩く女がいる


「みんな、がんばれ!何とかケンプファーまで・・・っひ!え、エクス!」

先頭で激を飛ばしていた女が怯えたため、集団も動きが止まった

全部でも100人程度であるか


「ま、まってくれエクス!後ろの者たちは関係ないんだ!指名依頼料も集められなかった私が悪いんだ!!」

頬はやつれ深い隈がある目を腫らし、髪はボサボサで艶もなくフラフラとした足取りで近づいたと思ったら目の前で土下座した

「頼む!!私の首で後ろの者を見逃してくれ!!」

額を地面に付けて懇願する女


「まったく・・グランツもだが、お前さんの首にそれだけの価値があると思ってんのか?」

びくっとなるイグノランテ

「それでも!それでもお願いする!!」


我が呆れて黙っていると、後ろから若い女が出てきた

確か、ギルドの受付嬢をしていた奴か?

「待って下さい!ギルマスの所為では無いんです!!ギルマスは街の為に一生懸命動いていたんです!!私たちが至らないばかりに・・・だからギルマスを斬る前に私を斬ってっください!!」

「そうじゃ!この老いぼれの首も持っていきなされ!」

「私もだ!」「儂も!」「俺も!」

口々に自分から斬れと言ってくる


我は豆粒くらいの火球を爆発させる

ポンと小気味よい音が出て、騒いでいた集団が黙る


「だからな?イグノランテだけでなくお前らの首を切っても何の得にもならんのよ。わかる?」

「え?」「どういうこと?」


「別に俺はお前たちを斬る気はないってこと。イグノランテの早とちりだよ」

「そ・・それでは、通っていいのか?」

がばっと上体を上げるイグノランテ

「街道を行くものを制限することはできんよ」

「あ、ありがとう・・・・・ありが・・・」

そのまま倒れてしまった

気が抜けたのであろうな


我は荷車と食料、水を魔法鞄から出し集団に持たせる

「・・・良いんですか?ペールデンテの者に渡して・・・」

受付嬢が聞いてくる

「お前さんらがイグノランテを庇ったからな」

「もし庇ってなかったら・・・・・」

「斬る価値、というより生きる価値なし・・・・だな」

自分の首を手刀で軽くたたく


「他にも脱出したものはいるか?」

「目端の効くものは朝のうちに・・・後はギルマスが街の中央で街を捨てて逃げるよう伝えましたが、商業ギルドが指名依頼をしたから防衛出来ると豪語してい・・・ま・した・・・・・」

此方をみて、目を丸くしていく受付嬢


「ほー、指名依頼ねぇ。受けてもらえるといいねぇ」

「エ、エクスさん?指名依頼を受けていないんですか?」

「俺は北の森で狩をして帰る途中なんだよ?指名依頼なんか聞いていないね!」

「そ、それでは、街の防衛は・・・」

「頑張ってとしか言えないよね?さあ、早くいかないと二人が目を覚ますぞ?」

集団は気絶したイグノランテを荷台にのせてケンプファーへ向かっていった





歪んだドアを開けてギルドの中へ入る我を皆が注目する

ドピンクのフリフリ魔女っ娘であれば見るであろう。なにしろ目立ちすぎる

我は受付にいるアメリーに声を掛ける

「来てあげたわよ。何か言いたいことがあるそうね」


少々お待ち下さいと言いながら酒場へ駆けていくアメリー

50代の恰幅が良い女を連れてくる


「あんたがイオラだね!ペールデンテへの攻撃をやめてくれないかい?」

「・・・・」我は答えない


「ん?違うのかい?アメリー、彼女何だろう?」

「イエス、マム!彼女こそがイオラちゃんです!」

「なんとか、言ったらどうだい!あんたがイオラなんだろう!」

焦っているのか、対応が雑である


「あんたが何者か知らないけど、礼儀作法からやり直してきな!」

それだけ言ってギルドを出ようとしたが回り込まれた


「礼儀がなってなかったのは謝罪する。私は狩人ギルド本部所属のウディッツという。貴女がイオラ嬢でしたら話をさせて貰えないだろうか?」

腰を90度まげて頭を下げている


「それで?ギルド本部のお偉いさんが何の話を?私はギルド員ではないから命令など意味ないわよ?」

「命令する気は毛頭ない。何故そこまでペールデンテを消そうとしているのかを教えてほしいのだ」

真剣にこちらの話を聞こうとしている様だ


「気に入らないから。自分勝手で人任せ、人の失敗に文句を言い自分の失敗は言い訳三昧・・・・相手したくないでしょ?」

「それは・・・それは人間なら誰しも大なり小なりあるんじゃないか?」


「だからこそ恐怖を植え付けるのよ。その為の贄でもあるわね」

くすくすと笑いながら答えてやる

「そんな、そんなことの為にペールデンテを、イグノランテを殺すのか!」


「あなたが救いたいのはペールデンテじゃなくイグノランテでしょ?あなたも自分勝手なのね」

「・・・・・・・・・・・・そうだ、アレは不器用で要領が悪くて失敗ばかりするが、私の教え子なんだよ!」

涙目で訴えている

「師弟揃ってそそっかしいのね。アレは見逃したわ。エクスは甘いから」

「イグノランテは、生きてる・・・・」

「勝手に殺さないでほしいわね。私たちは、まだ誰も殺していないわ」

「あ、あぁ」

「それじゃぁ、もういいわね」

我は今度こそギルドを出る


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